起床と思考
「嘘つき」
ここはどこだ?
「絶対守るって言ってたのに、嘘つき」
何も見えない、底無しに暗い空間、そこは、水中にいるかのような、浮遊感に包まれている。
「三年間待ってたのに」
暗く、光という言葉自体存在しない世界なのではと錯覚してしまうほど闇が広がっているのに、たまにちらつく真矢の姿。
「ずっとほったらかしじゃない」
違う、ほったらかしてなんか・・・!
「嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき」
違う違う違う違う!
「ねぇ、もう私たち」
違う!
「無かったことにしましょ?」
「ちがっ・・・!」
目を覚ますとそこは知らない場所だった。
俺はベットの上でねている様だが、木製の天井、それに壁、俺から見て左側には窓があり、そこからみける景色は、森だった。どうやらあの事は夢では無いらしい。
・・・あの事?
そうだ、俺は殺されたんだ。
トカゲの化け物に・・・。
と、いうことはここは天国か?と、思ったが斬られた腹部を思い出したとたん痛みが蘇ってきた。あの世で痛みを感じられるとは思えない。 ・・・まずこの状況を整理しよう。そう考え思考を凝らそうとした瞬間、ドアの開く音した。
「あらまぁ、起きたのね!」
右奥にあるドアから入ってきた40代前半ほどの女性が驚きと喜びを混ぜたような声で言った。
「あ、あのぅ、ここは...?」
「ここは私の家よ。あなたがリザードマンに襲われていたから、手当てして家に運んだのよ。」
俺は腹部の包帯に気がつく。
「えっと、ありがとうございます。あの、リザードマンって何ですか?」
「えぇ!リザードマンを知らないの?ここら辺じゃあ知らない人はいないくらいのモンスターなのに。」
モ、モンスター?
俺は俺を殺そうとしたトカゲの化け物について思い出す。顔は間違いなくトカゲのそれであったが、錆びた鉄の鎧を着て、同じく錆びている剣を持っていた・・・様な気がする。
「あなたリザードマンも知らないなんて、一体何処から来たの?」
「あっ、に、日本です。日本から来ました...。」
ん?いや、ここ日本だろ。何自分の国名言ってんだ。あ、そうか、目の前の人が外国人だから外国って勘違いしたのか。
「ニホン?知らない町ね、かなりの田舎なのかしら?」
日本を知らない?という事はここは間違いなく日本では無い、それにモンスターのリザードマン...まさか、でもそんなわけ...でも、ここはもしかして
異世界!?
普段ゲームやらアニメやらあまり見ない俺だが、友人がそういうのを好き好んでやりまくりよく話を聞かされていたので、こういった異世界などの知識は僅ながらある。
でもまさか本当に異世界転移するなんて・・・。どう考えてもあの黒猫のせいだろ・・・。
真矢を探す為にも、一刻も早く元の世界へ帰りたい。でもその為にはまずこの世界の生活に馴れなくちゃいけない。だから俺は、助けてくれた女性の厚意を受け、暫く家に止めてもらうことになった。
キーワードに「魔法」を入れているのですが、もう暫く魔法は出てこないので、キーワード詐欺にならないか心配です。