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6 面倒なことは先に済ませるに限る

更新遅れてほんっとにすみませんでした!!

なるべく開けないように努力します!

蛇口から出る冷たい水で顔を洗い、白の柔らかいタオルで拭く。

ついでに鏡を見ながら濡らした指で頭頂部のアホ毛を直せば、朝一番の身支度は終わる。

豪華なホテルのもののような全面鏡張りのあほらしい洗面所を出て、右に三十メートルほど直進すれば食堂なのだが、まだ身支度は終わっていない為とりあえずは部屋に戻るのだ。

自分の部屋のドアを開ければ、そこには執事がスタンバイ。

朝のメイクセットを片手に、「待っていましたよ」とニコリと笑う。

その態度には全く不自然さが無く、私は思わず面くらってしまった。


「いや、何でいるんだ紫貴。私の世話ならもういい、早く自分の仕事に行け」


状況を把握し、思わず渋い顔になった私と違い、執事はくるりくるりと細めのコームを弄びながら一礼をして言う。


「これはこれは。お嬢様、貴女はとても魅力的でいらっしゃいますが、サボりぐせが酷い。わたくしがお世話をさせて頂くのでしたらまずはその髪をどうにか致しましょう」

「失礼だな、髪の毛くらい毎日綺麗にして学校に行っている」

「寝癖を直して髪をとかし、ただ纏めただけではないですか。もう少し女子力というものをあげなくては」


あー聞こえない。聞こえないったら聞こえない。

というか、思いっきり嫌味だよなそれ。


「別に女子力なんてもの無くてもいいだろうじゃないか。清潔に身なりを整えておくだけでいいだろう」


うーん。正論を言っているはずが、何だか詭弁に聞こえるな。

本当はただ朝から色々するのが面倒なだけだ。

あ。これを女子力がないというのか。


「人間飾り立てるよりも、そのままの姿の方が美しいとは思わないのか?」

「お嬢様、いい顔で、いいこと言っているように見せかけてサボろうとするのはお止め下さい」

「ち、バレたか」

「なんというか……良くも悪くもお嬢様は正直でいらっしゃいますね」


柳眉を下げ、呆れたように嘆息する紫貴。

思わず性格の悪さを忘れるほどに、その姿は美しい。

こいつとは数年来の付き合いだが、こいつに出来ない事は殆ど無い。

料理洗濯掃除裁縫等、あらゆる家事をこなしスポーツも出来、分からない問題も聞けば直ぐに教えてくれる。同時に学問の人でもあり、様々な専門分野の知識を持ち、農業に経済、最近は哲学にも手を出したと聞いている。

見目もいい、何でも出来る、どこぞの漫画に出てくるような、殆ど超人の執事である。……あ、こいつ人間じゃないか。

思わずため息をつく。


「ああ〜、面倒くさい……」


私は整えたばかりの前髪をかきあげると、紫貴を押しのけ部屋の隅に置いているロココ調の鏡台の前に移動した。

白い革張りの椅子に座って、仏頂面で紫貴を手招きする。

紫貴は何だかんだで諦めが悪い。このまま抵抗し続けても、おそらく最後には綺麗に流される。

挙句に丸め込まれて、ツインテールにピンクの花をつけるなんていう暴挙にも出るかもしれない。

誤解を招くかもしれないが、ツインテールは髪型としては好きだし、そういうアニメのキャラも私は好きである。ピンク色も可愛いとは思う。

しかし私には似合わない。絶望的に似合わないのだ。

だから先を取るしかない。

残念なことに先の先は取られたが、ここからは私が注文する側に立ち、こいつが変な事をしないようにするしかないのだ!


「髪型だけだぞ、いじるのは。後、派手にするのは禁止だ」


ついでにツインテールも禁止だ、と付け加えれば、横を向いて舌打ちをしたのは聞かなかったことにしたい。


「……承知しておりますよ」


おい、何だ今の間は。

半眼で紫貴を見れば、有能な執事は苦笑して私の髪に触れる。


「……大分、長くなりましたね」


髪の話か。

鏡に映った左右反転した像は、どこか悲しげな色を帯びる。

答えないでいると、紫貴は櫛で髪をとかし始めた。

手早く、それでいて丁寧に。


「纏めますか、それとも編みますか?」

「任せる」


お、何だかお金持ちっぽいことを言った気がするな。

「任せる」とか、普通にはなかなか言えない台詞だと思うんだ私は。

馬鹿な事を考えている間に、紫貴は髪を分け、編みはじめる。

均等に、綺麗に分けられ編まれた髪は最後にゴムで止められる。


「おっと」


シュッという音がして、肌に落ちる冷たい感触とラベンダーの香りが私を包んだ。

どうやら香水の類のようだ。


「ハーブの香りを移したものです。天然素材なので、安心ですよ」

「いい香りだな」


素直にそう思う。

ちょっと冷たくてびっくりしたがな。

もしかしてこれは最近父がハマったという家庭菜園で作ったものだろうか?


「お嬢様、これは私が昨年作ったものです。旦那様のものではありませんよ」

「あ、そっか」


ラベンダーの花の季節は確か四月下旬から初夏にかけて。

今は四月のまだ始め。季節が早い。

……っていうか、思考を読むな。


「これは失礼」


憮然として睨みつけると、くすくすと笑いながら紫貴は制服を差し出してきた。

ああ、これから学校だ。

言い方はアレだが、私にとっては生命を守るための戦争にも等しい。

気を抜けないな。うん。

着替えるために立ち上がれば、三つ編みにされた髪が白いリボンと一緒に背中で揺れた。

……あれ、装飾って校則でOKだったっけ。不安だ。


「それでは、私はこれで」

「ああ」


紫貴は胸に手を当て、完璧な一礼。そのまま出ていこうとする。

私はしばらく考えて、その背中に声を掛ける。


「紫貴」

「はい?」


「ありがとう」


振り返った執事のラベンダー色の目を見てそう、声を掛ければ執事は花が咲いたような優しい笑みを浮かべた。


「ーーどういたしまして」


思わず見とれたのは、内緒だ。



隠れキャラとの掛け合い。いかがでしたか?

少し女の子らしさを出したく、このようにしました。

もう少ししたら、設定を出します。

どこまで出そうか(^^;

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