3 入学式当日③
連続更新……だと!? ( ゜д゜)
本命が進んでないのに!
「ーー素晴らしき才能を持つ、無限の可能性の塊である今の皆さんには、此処で自分の宝物になるような、そんな素敵な毎日を送って欲しいですね。以上」
日本人とは思えない、見事な金髪を後ろでまとめた二十代後半の美形が一礼して挨拶を締めくくった。
その美しくもキリリとした立ち姿に講堂の中は悩ましげなため息であふれてしまいそうだ。
優しげな美貌の持ち主の彼は、言わずもがな、乙女ゲーム『救いの天使〜マイスイートエンジェル〜』の攻略対象、九尾の狐でありこの聖ニコラウス学園の理事長を勤める最強クラスの妖、玉藻蓮である。
うん、普通なら長ったらしい挨拶の内容も、実に簡潔で短くて素晴らしい。妙なところで株が上がってしまった。
今は入学式の真っ最中。
私、伊藤千鶴がこなす初のイベントだ。
まあ、悪役令嬢である私が“こなす”という言い方をするのはおかしいかもしれないが、そこは割愛といこう。
私としては妹から聞いた情報しか、この乙女ゲームのような世界で生き続ける武器はない。
だから必死で思い出してきた。
私ーー悪役令嬢ーーが、生き残るルートを。
基本的に私(悪役令嬢)が、物語に関わらなければ私は死なないはず。
妙な嫉妬からヒロインと攻略対象の仲を引き裂き、人外達が学園の生徒皆殺しにするなんていうそんなエンドもなくなるはずなんだ。
今の私には家族が居る。優しい祖父と祖母と、父がいる。
前世で親より早く死ぬなんて親不孝をしてしまった私には、もうそんな酷いことを父や祖父母にしたくない。
今でもたまに、前世の父と母を思い出して悲しくなることがある。親不孝な娘が、一体どんな顔をさせてしまったのか、酷く悔しく、泣きたくなる。
病弱で、でも優しかったこの世界の母が亡くなったとき、そう、より強く思った。男泣きに泣く父の背中も見た。
だから、だから私は生き残る。
もうあんな思いはしたくない。
誰にもそんな思いをさせない。そのために。
どうあってでも、それこそ悪役と言われようが、私は攻略対象やヒロインには関わらない。
例えその選択が残酷なものであろうともーー。
……あ、いや。もちろん助けなければいけないようなシーンでは助けるからな?
命が惜しいから。
あくまでもクラスのなかの、関わりの薄い人として全力をあげて回避するってだけだから。
無視とかシカトとか、自分で死亡フラグとかいじめフラグ建てるのは御免こうむる。
これでも私は社長令嬢。今まで培ってきた令嬢のスキルで、礼儀正しく回避だ。
そう考えて私は少し眉を寄せた。
相手はよく考えれば人外だ。礼儀が通用しなかったらどうするのか、そう考えたからだ。
ーーふむ、もうそろそろアレの出番か。
などと考えながら、私は次に始まった長そうな校長の挨拶に耳を傾けるのだった。
お付き合い頂きありがとうございます
((。´・ω・)。´_ _))ペコリ
ブクマが50越えててびっくりしました
嬉しくて泣きそうです
これからもよろしくお願いします
(もう一つの作品も、良かったらのぞいて見て下さいね)