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2 入学式当日②

ちょっと後味悪いかも?

甘さは控えめ、ビターチョコレート。

悪魔と人間のハーフであり、今のところ私の最大の死亡フラグとなっている目の前の美貌の男子生徒、荒野剋夜あらのこくやは私に向かってその指先を伸ばす。

ーーそして、何故か、私の額に手を当てた。

「え」

驚きのあまり平旦な声が零れてしまった。

と同時に首を傾げてしまった。

何故に額に手を当てる?

体温が低いのか当てられた手はひんやりとして意外と気持ち良かったのだが、問題はそこじゃない。

「ーー熱は、無いようだな」

感情の動きの少ない綺麗な黒い瞳に見つめられ、囁くように美しい声で紡がれた言葉。

「唸っていたから、熱でもあるのかと思った」

微かに微笑む攻略対象、荒野剋夜あらのこくや。その表情はどきりとする程に美しい。

……お前確か設定じゃ人間嫌いなはずだろうが。ヒロインでもない奴にそんな笑顔向けてんじゃねえ。

おっと。……思わず取り乱してしまい失礼した。

しっかし、流石にイケメンだ。私は目の前の攻略対象を見つめた。乙女ゲームのファン達が血眼になって攻略しようとするのも分かる気がする。

妹も躍起になって集めていたことだし。でもな?

「……何故ですか」

低い声で私は言う。

額に当てられたその手を掴み、力いっぱい握りしめる。

すまない。私はヒロインとは違うんだ。悪役令嬢としてでも生きていく方が大事なんだ。

お前みたいな死亡フラグ感満載の奴に付き合ってはいられないんだ!

私は彼に向かって敵愾心丸出しの視線をぶつけ、その手を振り払う。

「何故、私に構うんです? 知り合いでもない他人に触れられるのは、嫌いです。だから、触らないで下さい」

勿論演技だ。これでも女の端くれ。美形が心配してくれて嬉しくないわけはない。

驚きに目を見開いた攻略対象に僅かな罪悪感を覚えつつ、私はそっぽを向く。

「心配してくれたのは分かった。でも、私に関わらないで」

よく言った私。

このまま関係を、関わるというフラグをへし折るんだ!

「そうか……済まなかった」

何となく寂しげな声が聞こえてきて、攻略対象、荒野剋夜あらのこくやは背を向けて去っていった。ちらりと横目で確認してみれば、やや肩を落としているように見えた。

私はほぅ、とため息をついた。

もしかしたらここはただ乙女ゲームに似ているだけの世界で、本当は悪魔や天使なんかは居ないのかもしれない。

そうであったなら、こんなことをやらかした私はただの冷酷な人間だろう。人の好意を冷たい言葉で拒絶するのは、人間としてやってはいけないと思う。

でも、貴方やヒロインやらを回避しないと私は死んでしまうかもしれないんだ。

誰だって自分の命が惜しいだろう?

地獄のような三年間を乗り切って、私は生きたいんだ。

背後で、ガタッ と、椅子を引く音がした。

席に座った攻略対象は、うつむいて頭を抱えていた。

近い場所に席が指定されていた事にも驚いたが、その様子は自分の所為とはいえ、なんだかモヤモヤするものだった。

教室に二人きりという気まずい沈黙。それは、遠く聞こえてきたクラスメイトになる人たちのざわめきによってかき消されていくのだった。


クールに見えてお人好し

っていうか、これはまんまツンデレではないかと思う作者

苦情はやめてお願いします

ガラスのハートなんです(笑)

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