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15 少女と、他人事だからこそ。


生徒会長の名前と、本人が自覚してるか微妙な部長の良さを知った所で、ドワーフ君の方に再び動きがあった。…生徒会長の言葉通りなら、今度こそ彼は目を覚ますのだろう。流石にこれ以上溜めすぎると、目覚めた時のドワーフ君の肩身が狭くなる気がする。良く分かんないけど。


「ん……はっ、ここはっ!?」


僅かに眉間にシワが寄り、薄目を開けたと思ったら、ドワーフ君はバチッと音がしそうなぐらい勢い良く目を見開き、振りをつける事なくガバッと上体を起こした。…腹筋の筋力凄いな。私、起きる時そんなガバッと起きれない…やっぱりドワーフって筋力あるんだな。


「どうやら、ちゃんと起きたみたいだね…ここは学校の保健室だよ。」


「どうやらとは酷い言い種だな、島津君。私の腕を信用していなかったのか?」


生徒会長が、そう言って時雨を色っぽく見詰める。時雨を遊んでいるのか、本当にちょっとさっきの言葉にカチンとしたのか分からないけど…女の私でも、その溢れる色気でちょっとドキリとしてしまった。


と言うか、服を着ているのに、生徒会長の一挙手一投足で、胸からたゆんって効果音が聞こえそうだ…って、私変態みたいだな。自重しよう。下着どうなってるんだろう?


「保健室…って、島津時雨に…せ、生徒会長!?」


「うむ、生徒会長だ。一応君の診た者だよ、リスター・フルール君。」


…おお、流石だな生徒会長。私達が微妙に分からず、今の今まで『ドワーフ君』と呼んでいた生徒の名前を、一発で言い当てるなんて。…普通に周りに聞けば良かったんだけど、そんな空気でもなかったからなぁ。


そのドワーフ君もといフルール君は、寝起きにしてはそれなりに早く状況を把握したみたいで…その顔が赤くなったり青くなったりしている。赤くなるのは生徒会長のせいだとして、青くなるのは時雨に負けたからか…忙しなく顔色を変えてるけど、器用だな。


「ど、うして俺の名前を。」


「ふふっ、簡単な話さ。ドワーフの社会は職人の街だからね。家業を継ぐためにそのまま修業したりで、新しく町に出てくる事が少ないんだ。だからその分、学校への入学者、編入者は珍しいんだよ。…申し訳ないが、それで君の名前と顔を覚えていたに過ぎないんだ。生徒会は顔写真入りの名簿を見る機会もあるしね。」


「だそうだよ、同じ生徒会の島津時雨君。」


「生徒会長が特別優秀なの!!…後、生徒会長。さっきの言葉は生徒会長の腕を疑った訳ではなく…単なる言葉の綾のつもりでした。気分を害されたら、すみません…。」


時雨の言葉に、すっかり忘れていたあの生徒会長の言葉を思い出す。ドワーフ君の名前が分かった衝撃で、私はすっかりと忘れていたよ。凄いな時雨。と言うか何と言うか、ちょっと呆れるぐらいマメというか律儀というか…いつもは明るいムードメーカーなのに。


「律儀だねぇ、秋津君。そんな所も君の魅力だがな。安心したまえ、島津君がそんなつもりで言った事ではないぐらい、私が分からない訳ないだろう?なぁ、汐田君。」


…私に話をふられても、それはそれで困るんだが。時雨の事なら何となく分かるけど、生徒会長はほぼ初対面だし…生徒会長の言葉は分かるけど…難しく考えるような内容ではないだろうけど、どうも真面目に答えないといけない気がする。


「そうですね…締めるところは締めて、筋を通す所は良い事だと思います。」


「そうだな…それ故に島津君は私の好意も受け取らないのだが、下手に期待を持たせられるよりましだな。」


…生徒会長は言わなかったけど、多分この言葉には『だからこそ振り向かせ甲斐のある男だ』とか、『いずれ振り向かせてみせるがな』とかの言葉が見え隠れしている気がする。…邪推かもしれないが。


「まぁ、なんにせよ…自分優位だと思っていたら、流石の生徒会長でもいつの間にか噛みつかれてしまうかもしれませんよ?」


「おや、それはそれは…ちょっと見てみたい気もするが、リスキーだなぁ。…っと、フルール君は島津君に言いたい事があったんだったな。」


何か時雨の気苦労が増えそうな発言が聞こえたけど、それよりフルール君が時雨に対して言っていた事も気になるので、素直に聞くことにする。…何かとっても言いたい事がありそうな時雨の目線は、この際無視しよう。


「……俺、勝負に負けたんです…ね。」


今まで器用に顔を赤くしたり青くしたりして、最後の方はポカーンとしていたフルール君が、生徒会のその言葉にハッとなり、そして表情を暗くした。…それから暫くして、ポツリと呟き始めた。


「俺、好きな子が居たんです。でも…その子は島津…先輩が好きで、それで俺…振り向かせたくて。島津…先輩より強いって証明したくて。」


あ、時雨に敬称が付いた。…一応負けたから、礼儀は払っている…のか?


「なるほど…ドワーフは実力主義だからな。良くも悪くも分りやすい。」


「手を抜かれまいと全力で挑んだんですが…手も足も出ませんでした。」


…フルール君の好きな人って、時雨の強さじゃなくて性格的な部分を好きになっただろうから、時雨より腕っぷしが強くなっても仕方ないのでは…とは、流石に言える空気じゃないな。やめとこう。


「う、ううん…俺、今別に付き合ったりとかは。そりゃ好きな人居ないけど、だからってすぐその人を好きになるって話しでもないだろう?」


「…明日辺りに、当たって砕けても良いから告白しに行くって…それで俺、頭ではバカなことって分かっても…。」


理解は出来ても納得は出来ないってヤツか…難儀な話だけど、分からなくはないな。


「好きな人には、幸せになってもらいたいけど…俺の事好きになってくれたら、良いのにって考え出したら…。」


「…部外者だが、ちょっと良いかな。」


フルール君の自虐とも取れる言葉を聞いて、思わず口から言葉が出てしまった。


「君は、自分の考えを行動で表す事が出来る。それは確かに諸刃の剣だ。つまりマイナス面と同じぐらい、素晴らしい事だ。考え過ぎて動けなくなるより、感情に行動した方が良い。猪突猛進より、少し考えて行動した方が良い。…どちらを取って、どちらを諦めるか。そんな話だよ。」


フルール君が何か言う前に、私は言葉を重ねる。…私とフルール君は、恐らく結構近い位置にいるのだろう。だが私にはない行動力、それを自ら否定する姿は…他人事なのに苦しく感じた。…否、もしかしたら他人事だから苦しく感じたのかもしれない。




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