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14 少年と少女の、身近なあの人。


暫く起きずに唸っていたドワーフ君は、二・三回寝返りを打った後、ボンヤリと目を開けた。…良かった、取り敢えず意識が戻って。意識飛ばす気はなかったんだけど、思いの外良い感じに顎に入っちゃったんだよなぁ。


「ふむ…どうやら覚醒はしていないが、目が覚めたようだな。…私が診た限りだと、意識がないだけでいたって健康体の様だし…ま、時間の問題だろう。夢と(うつつ)の境目は、そう長く続かないからね。」


ドワーフ君の手に触れ、生徒会長の魔力が一瞬ドワーフ君を包んだと思ったら、生徒会長はすっと手を伸ばし、ドワーフ君の瞼を下ろした。目を開けたままだと、目が乾いてシパシパしちゃうからなぁ…寝てると、自力で目を閉じれないし。


「まぁ…最悪の場合は、生徒会長が回復魔法でも掛ければ大丈夫な程度だと思っていましたが…噂以上に素晴らしい診察ですね。並の術師ではこうはいかないでしょう。」


「おやおや、君も中々言うねぇ?」


「?、何の事ですか?」


感情の読みにくい泉だが、慣れてくると何となく分かってくるし、何より言葉は素直だ。今の言葉は本心から口にした言葉なのは明白で、ある意味今さっきが初対面である生徒会長を、さっきのやり取りで信頼して、だからと言ってゴマをする訳でも僻む訳でもなく、純粋な賛辞を送る。…誰にも出来るものではないだろう。特に…本当、さっきのゴタゴタの後だと難しいと思う。


…今のトキョンとした顔は、本当に何も分かっていない顔だ。…泉って意外と天然で人を引き付けやすい性格なんだよな。本人は否定するし、何よりもあくまで引き付けやすいってだけだから、仕方ないのかもしれない。


確かに、カリスマ性とはまた違った類いだとは思うけど…でもだからこそ、泉は泉なんだろう。


「いやなに、私を乗せるのが上手いと思っただけだよ。流石リディアの後輩だな。」


「リディア?……ああ、部長のお知り合いでしたか。…何とまぁ。」


普段『部長』としか呼ばないから、一瞬誰の事を言ったか分からなかったが…生徒会長、部長と知り合いだったのか。これは…何か意外かもしれない。


二人の事をそれなりに知っているが、性格や趣味嗜好が特別掛け離れているわけでもないが、だからって友達になれるかは分からないみたいな…そんな感じ。多分泉は違う方向でビックリしたんだろうが。…部長傷付くぞ。


「…言いたい事は何となく分かるが、アレで私なんかより素晴らしいヤツなんだぞ?」


「あの勢いが落ち着けば、今より尊敬出来るような…ああでも、勢いがない部長は部長ではないですね…悩ましい。」


「ふっ…ふふっ、本当に、言うねぇ?…あははっ!!確かに、あの勢いがなければリディアは今のリディアにならなかっただろうな。…ふふっ。」


どうやら、生徒会長だけに分かるネタがあるようだ。それが泉の言葉が引き金となってツボに入ったらしい…生徒会長の笑いが止まらない。


「…なぁ、時雨。私何か変な事言ったか?」


「ツッコミ所はなきにしもあらずだった気はするけど…生徒会長があそこまで爆笑するとは思わなかったな。」


普段は澄ましたような、一歩退いた所から物事を見ているような達観した風の生徒会長が、まるで一人の女の子の様な、幼さがほのかに滲む雰囲気で、お腹を抱えて爆笑している…これはこれで、普段とは違った魅力があるなぁ。…って、何関係ない事考えてるんだ俺は。


「ふふっ…はぁ、いや、リディアは私の友人一人目なんだ。入学当初から突き抜けた才能を持っていたが故に、クラスの皆は元より…先生方すら敬遠していた私に、リディアが…ふふっ。」


「あの…話すならちゃんと最後まで話しません?続きが気になってしまうじゃないですか。」


ああっ、気が付いたら泉、保健室の丸椅子を引っ張ってきて、座って話を聞く体勢になってる!?確かに、あんな風に話されたら気になるけど…いつの間に。


「ああ、すまないな…ふぅ。何、簡単な話だよ。私に向かって、『私はリディア。リディア・テイラーって言うんだ。君の名前は何て言うの?』って聞いてきたんだ。」


「?、入学してから、生徒はおろか教員ですら敬遠していたのに…誰も生徒会長の名前を知らなかったんですか?」


「逆に目立ちすぎて、生徒は誰も知らなかったらしい。教員も教員で、知っているとばかり思っていたみたいだったしな。」


…何か、とても耳が痛い。現に今、俺ら全く生徒会長の名前を呼んでないし。


「だから私は、『私の名前はミスト。ミスト・フォレストだ。』って言った。それが私達の始まりだよ。」


それを敏感に察したのか、はたまた単に会話を再現しただけなのか、生徒会長のフルネームを知ることが出来た。…ミスト・フォレストか。失礼かもしれないけど、ちょっと生徒会長のイメージではなかったかも。もう少し華やかな名前かと。


「部長、そんな事もやっていたんですね。」


「リディアは…と言うか、恐らくフェアリーという種族が、周りの空気に敏感だからね。敬遠されて少し寂しい気持ちになっていた当時の私を察して、手を差しのべてくれたのだと思うよ。」


「…あ〜、だからボランティア部を設立したのか。」


ポツリと泉が呟いた言葉に、ああ成る程…と、俺の中にもストンと落ちた。やたらと困っている人を見付けてくるのも、部長ならではのスキルなのだろう。


「部活動で出来る範囲内で、生徒のちょっとした手助けがしたいとか言っていたが…今は殆んどお悩み相談みたいになってるな。」


「一回放送部に、お昼のコーナーを持たないかって言われた事がありますね。…まぁ、プライバシーの問題で部長が即却下してましたけど。…そして、何故か俺が怒られました。デリカシーがないとか、人の気持ちを何だと思ってるのとか。」


俺、ただ友人に頼まれた事を伝言しただけだったんだがなぁ…そりゃ、俺だって反対したかったけど、もしかしたら部長や他部員は違う意見かもしれないって思って…はぁ、何かこの事思い出すと、グチグチしてしまう…。


「…部長を擁護するわけではないが、あの時の部長はいつもの二倍ぐらいカリカリしていたんだ。多目にみてやってくれ。」


「いやまぁ、過ぎたことだから…不完全燃焼と言うか消化不良は否めないけど、話のネタなら兎も角、流石に本格的に蒸し返す気はないよ。」


…にしても、何故にいつもの二倍ぐらいカリカリしていたんだ?その日の部長は、何かあったのか?…そして、何故泉はそれを知っていたんだ?




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