第二話
なぜかアクセス数が数日の間にすごいことになっていました。
この作品を読んでくださりありがとうございます。
好評につき(?)「期限付き~」より先に次を投稿しました。
「おや、意外にお早いご起床で。」
自室から続き部屋になっている執務室で書類を処理していると、自分付きの補佐官のヴォイスが部屋に入ってきた。ノックを控えめに入ってきたため、俺がまだ寝ていると思ったのだろう。時間は朝早くと言えないほど日が昇っていて、ヴォイスが言うように起きるのに早すぎる時間はないはずだ。
「どういう意味だ。」
「いえ、ね。昨夜はほらあれでしたので、昼過ぎまでお楽し・・・いえ、起きてこないかと。」
わざとらしく咳払いをしたヴォイスを睨みつつ、そういえばと俺が予定よりも早く起きる原因を作った男に詰め寄った!
「それよりも!女!あれ違う奴じゃねぇか!」
「女?」
「・・・昨日、婚儀を挙げた女だ。」
「リーヤ様のことで?彼女は確かにエール村の教会から連れてきたリーヤ=ナイトベル様ですよ。貴方がどうしても彼女がいいと駄々を捏ねるものだから、半ば掻っ攫う・・・モトイ、少々司祭を脅して・・・ではなくて、お願いして連れて来たのですよ?」
感謝してください、とふてぶてしく笑う奴に分厚い辞書を投げつけてやった。よけられたが。
「違う!俺が言ったのは、可愛くて、小さくて、はかなげで、美しくて、髪はとろけるようになめらかな蜂蜜色に、バラのように赤い唇、長く繊細な睫、透けるような肌に、天使のような微笑、“りーや”という名の女だ!」
「だから連れてきたじゃありませんか。リーヤ様だって、お可愛らしくて、小柄で、華奢で、まぁ比較的綺麗な顏だちをしていて、髪は陽の光に当たれば金色に見えないこともない小麦色で、赤く小さな唇に、睫?あーそれは普通じゃないですかね。ま、あと天使に見えるかどうかは個人の判断にお任せしますが、良い笑顔の方だと思いますが?」
「俺が言っていた女と違う!」
力任せに机を殴れば、机に載っていたインク容器が倒れて書類にシミが広がった。それを見たヴォイスがわざとらしい大きなため息をつきながら片付ける。
「それで、朝から不機嫌なのですか?」
「だって!待ちに待った日が!このためだけにお前の無茶な仕事にもめげずに頑張ったのに!寝室で待っていたのは別人なんだぜ!?もー、最悪だったよ。」
机から身を乗り出して、昨夜自分がどれほどの絶望感と虚無感を味わったかを語る。薄暗闇の中ぼんやりと浮かび上がったのは、想像していた女とは違う、緊張した、知らない娘の顏だった。
「そんなに具合が悪かったのですか?まぁ、慣れていそうには見えませんでしたが。初物をいただくのも、それはそれで・・・」
「ん?何言ってんだ?俺は何もしてねぇぞ。」
「では、彼女はまだお隣で眠っておられるので?何もしてないにしては起きるのが遅いような。教会ではとっくに働いている時間でしょうに。」
「へ?いや、自分の部屋に戻ってんじゃねぇの?」
「彼女と同じ部屋にしろ言ったのは貴方ですが。彼女の部屋は貴方と同じ部屋しかございません。」
「じゃあ、昨日あいつどこに行ったんだよ。」
「って、昨夜から姿を見ていないのですか!?」
「あ、あぁ、なんか迷惑かけたって出て行ったぞ。」
先ほどまで身を乗り出していたのはこちらなのに、いつの間にか立場が逆転していて、奴のほうが机に手を突いてこちらに身を乗り出し矢継ぎ早に言葉を口にしている。俺は大人しく椅子に座り、ヴォイスの勢いに若干引き気味だ。
「手違いで違う方を連れてきて落ち度があるのはこちらなのに?散々ご確認をと言っても聞く耳もたずにいたのは貴方なのに?彼女専用の部屋などありもしないのに?夜はまだ寒いというのに?貴方は、初夜に花嫁を追い出したというのですか?何も悪くない、花嫁を?」
凍えるような眼差しを突きつける目の前の男に、ぐうの音も出ない。こちらが悪い気になってくる。
「わ、悪かったよ・・・?」
「何故疑問系なのです。それに私に言ってどうするのですか。」
「・・・女に言います。」
「妻に!でしょ。」
「・・・はい。」