光の声聞こえざりき
なんでだろうなぁ。なんで、いつも私ってこう、誰かを悲しませるんだろう。
嫌だなぁ、もう誰か泣き声なんて聞きたくないよ……お義母さん、泣かないで…大丈夫だから。生きてるから…呼吸してるでしょ?心臓も動いてるでしょ?ねぇ、お義父さん…お義母さんに大丈夫だって言ってあげてよ……ねぇ……なんでそんなに悲しそうなの……ああ……そんな顔しないでよ……やめて、泣かないで。
もう、悲しい顔は見たくないの。誰かが堕ちていくのを見たくないよ。そんなの見るぐらいなら、死んだほうがマシ。
死んだほうがマシ……?
みんなが悲しそうな顔をするとき、いつも中心にいるのは誰……?
「私……」
みんなが堕ちていくとき、そこにいるのはだれ……?
「わたし……」
みんなを泣かせる原因はダレ……?
「ワタシ……」
私はみんなが悲しむのは見たくない。でも、原因を作っているのは私。そこまでわかると、あるひとつの式が出来上がる。そう……
私がいる=みんなが悲しむ
のならば
私がいない=皆が幸せ
なの。存在していることで不幸にするなら、存在しなければいい。
どこからか、そうだ……お前がすべての原因なのだ……悲しき哀れな天使よ…と、囁く声が聞こえてきた。
いつだってそうだった。私は常に悲しみの中心にいた。どれだけもがいたって溺れていくばっかりで、外になんて出れなかった。それはもう、感情さえ麻痺してしまうぐらい。でも、思い出したくなくて、ずっと記憶を無理やり忘れていた。新しい人格を作って、別人みたいにして。おかげで、いろんな人格ができてしまって、どれがもとの私かなんて、わからなくなった。この人格だって、そのうちの一人でしかない、ホントの私はもしかしたらもういないのかもしれないね。
これは、俗に言う多重人格。でも、どんなに人格を作っても根本的な問題はなんにも変わらなかった。誰かを悲しませて、人格を作っての繰り返し。
このまま、目を覚まさなければ、いいのかな。
「ダメだ……っ起きろ、起きるんだ……っ!!」
だれ…?私のうちの一人?誰かもわからない。
「起きろ、皆待ってるんだぞ……っ」
……うるさい。
「目を覚ますんだ……っ」
うるさい、うるさいうるさいうるさいっ!!
黙ってよ!!
「っ……」
……もう、いいんだよ。このまま、目を覚まさなくったって。誰も悲しみなんかしない―――――