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作者: 糸間 優

目が覚めると、心の奥のほうがなにやらポッカリと欠落してしまったような心持がした。

特に気にも留めずにいつも通り着替えをしていると視界の端にいつもとは違う確実な違和感を捉えた。

腹がない。

正確に言うならば、へそを中心に半径10センチ程の穴が開いている。

鏡に写るそれを確かめるように恐る恐る手を伸ばしてみたが、やはり無い。

ピュウピュウと風の通る音がする。無い。腹が無い。

おれの意識は一気に錯乱した。

わけも分からずリビングに飛び込み、家族に腹を見せ叫んだ。

するとどうだ、みんな狂ったものを見るような目でおれを見ているじゃないか。

何度説明しても分かっちゃくれない。

しまいには本当心配し始めた。

いつも寡黙な父ですら、新聞を放り出して取り乱している。

みんなには腹がしっかりと見えているらしかった。



仕方なく、寝呆けていただけだとは言ったものの、学校を終えた今、確実に穴は広がっていた。

学校に居る間も、ゆっくりと空気が抜けていくみたいに穴は広がり続けた。どんどんスピードは速くなり、

今は手足の先と鼻から上しか残っていなかった。

広がる穴におれは足を速めたが、もうすぐ家だというところですっと視界が消え、パチンと何かが弾ける音がした。


おれはおれを見失った。





夕食を両親と食べながら、私はテーブルの空席が気になった。

何か足りないような、忘れているような感覚が渦巻いて離れなかった。

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