第7話「新しい従業員 その1」
レンヤの影が薄くなってきたのは気のせいか?
第7話「新しい従業員 その1」
あれから2ヶ月ほど経ち、道具屋リュミエールはクヨウの目論見通りある程度名前が売れてきたので、ポーションを特許商品にし、本来一番やりたかった事に専念することにした。
「ん~、これでひと段落だねぇ」
「やっと終わったか、流石に長かったな」
「うん、これでやっとオリジナルの魔法具を作れるよ」
最近ポーションばかり作っていたが、クヨウの能力は魔法具生成能力である。店も有名になったところで、オリジナル魔法具を売れ筋にもっていくのがクヨウの目標であった。
そして、最近雑用しかやってなかったレンヤも本格的にハンターとして活動しようとしていた。
「あとね、そろそろ店員でも雇おうかと思っているんだ。流石にすべてを1人でやっていくのは難しいでしょ?」
「頃合か~?若干遅いとも思うがいい案だと思うよ」
「2人程雇おうと思ってるんだけど、レンヤはいい人知らない?」
「流石に一般の人ではわからないぞ、知り合いは9割がたハンターだしな。ギルドで募集かけたらどうだ?商人ギルドとか人材の斡旋とかやってないのか?」
「あ」
クヨウは商人ギルドが人材の斡旋等もやっていることをすっかり忘れていた。
「明日にでも行ってみよう。ギルド経由の紹介なら信用できそうだしね」
「面接とかするのか?雇用条件とかも考えておけよ」
「ん~、そう考えるとめんどくさくなってきたな・・・」
若干やる気を削がれつつも、条件等を考えていった。
次の日、クヨウは朝一で商人ギルドへ向かった。
商人ギルドの建物は町の大通りにあり、見た目は大きいが仰々しくも無い建物である。中に入ると朝早い時間だというのに、広いフロアにかなりの人数の人が行き来していた。クヨウはたまに見かける知り合いと挨拶をしながらが中に入り受付の順番をまっていた。
「よう~、リュミエールのクヨウじゃないか。相変わらず儲かってるか?」
かなりいい体格をした中年の男性が隣に座っていた。「ガハハハ」と豪快に笑うこの中年は「ガルム・リジア」というクヨウと同じ道具屋をやっている人だった。
「特許商品はだいぶ儲かってるみたいじゃねぇか、商売の虫になってないで彼女の1人でも作ったらどうだ?ガハハハ!」
「ん~、商売は趣味の一環みたいなものですよ。それにしても、相変わらずガルムさんは声が大きすぎですよ。耳が痛い」
クヨウは後半はスルーした。十中八九面倒なことになると予想したからだった。
「ん?こいつは素だからな、今更どうにもならねぇよ!ガハハハハ!」
「まぁ、今更治るとも思ってませんけどね。そんなことより、ガルムさんは今日どんな用事ですか?あまり商人ギルドとかにはこなさそうなイメージなんですけど」
「ああ、今日はちょっとした野暮用だよ。しかし、それを言ったらクヨウもだろ?店は大丈夫なのか?」
「こんな朝早くから店は開けてませんよ、帰ったら開けますけど」
ちなみに現在朝の7時過ぎ、いつもクヨウが店を開けるのは8時半~9時の間である。
「僕は要件はいたって簡単、店員の募集ですよ。もう人を雇えるくらいのお金はありますからね」
「稼いでいるやつぁ言うことが違うねぇ、うちなんて少ない稼ぎで遣り繰りしてるってのになぁ?」
「ガルムさんも冗談はほどほどにね、ガルムさんところだって、ここ数週間はかなり売り上げ伸ばしてるんでしょう?」
「なんだ、知ってたのかガハハハ。クヨウのおかげでしっかりと儲けさせてもらったからな」
ここ数週間、つまりクヨウがポーションの作成・販売に追われていた時であった。ガルムの店は売り物は基本平凡。やや、珍しいものも扱ってます。という感じではあったが、商売の仕方が上手かった。行商がいくらポーション目当てでこの町に来るといっても、当然のごとくリュミエール以外の店もまわる。ガルムはそれを商売のチャンスとし、行商に取り入るのではなく、行商すらも利用し上手く売り上げを伸ばしていった。クヨウはその辺の事を最近知って、ガルムに対し若干ではあったが尊敬の念を抱いていた。
「あ、呼ばれたので僕はこれで」
「おう、またな!」
ガルムはクヨウの背中をバンバン叩きながら見送った。
「しっかし、若いのにあの発想力はすごいな。いや、若いからできるのか?」
俺も老けたもんだと1人笑いながらガルムは受付の順番を待っていた。
クヨウが受付に入ると受付の女性が迎えてくれた。クヨウは従業員の募集と必用条件を書いた紙を提出した。
「今日は従業員の募集ということで、お願いにきました」
「はい、わかりました。こちらの紙はもう記入済みのようですので確認させていただきますね」
女性は紙に記入漏れが無いかチェックいき、納得する。
「最近話題のリュミエールさんでしたか、キサラギさんでよろしいですか?」
「はい、そうです。ところで最近話題のって何か変な噂でもあるんですか?」
「いえいえ、変な噂ではないですよ。新進気鋭の道具屋があると、そういうことです」
それを聞いて若干照れるクヨウだった。受付の女性はそれを微笑ましくみていた。
「期限は7日後までで、7日後に面接をしたいと思っています。雇用条件は紙に書いた通りで」
「わかりました、ではそのように案内を出しますね。他にご用件はありますか?」
「いえ、大丈夫です。よろしくお願いします」
若干の不安と期待をしつつクヨウは店に戻っていった。店に戻る途中、面接で何を聞こうか悩んで2,3回転びそうになるのはご愛嬌。
サブタイトルを面接といいつつ面接のネタがあまり浮かばなかったので、サブタイトルを変更しました。
意外と長くなりそうです。