第5話「商人ギルド」
今回は説明ばっかりになってしまいました。そして短い・・・
第5話「商人ギルド」
道具屋「リュミエール」の店内で、クヨウと商人ギルドの男「カリイ・マルゼフ」が机をはさんで向かい合っていた。ちなみにレンヤは難しい話が苦手なので、夕飯の買出しに行っている。
「え~と、カレー・マゼルフさんでしたっけ?今日はどのようなご用件ですか?」
「いえ、カリイ・マルゼフです。ちょっと前に一度しかお会いしてませんので、間違える気持ちはわかりますが・・・・」
クヨウは「カレー混ぜる」のほうが覚えやすくていいのになぁと若干ズレた認識をしていた。
「ごほん!え~実は今回新商品の調査ということで各店を訪問させていただいてます。最近新商品があまりなくて、商人ギルドでも力をいれているんですよ。そういう訳でして、率直に言わせていただきますと、新商品はありませんか?もしくはアイデアでもかまいませんので」
「マゼルフさんも大変ですねぇ、新商品ですかぁ・・・まぁあるにはありますね」
「私のことはカリイで結構ですよ、それとマゼルフではなく、マルゼフです。新商品があるんですか!?それでは是非、特許商品の登録をしましょう!」
特許商品とは商人ギルドに認められ、オリジナルの新商品として登録された商品のことである。登録する場合、素材や作り方をすべて公表しなければならないが、登録から10年間その商品の売り上げの5%を貰う事ができる。希望する店に公開されるので、すべての商人ギルドの支部へ情報がまわされ、大陸中の店に行き渡る。店側にもハンターや冒険者などにも大変ありがたい話になっている。
ちなみに、アイデアだけだと売り上げの1%しかもらえない。それでも流行ればかなりのお金が入ってくることになる。
しかし、あまりクヨウは乗り気ではなかった。
「ん~、それは今すぐじゃないとダメですか?今すぐには登録したくはないんですよねぇ」
「それは何故ですか?」
「先日お店をひらいたばかり、というのはご存知ですよね?つまり知名度がないんですよ。もし登録されれば確かにお金が入ってくるかもしれませんが、お店の知名度は特にかわらないのです」
特許登録すると何処の店でも売ることができる、つまり店としてのオリジナルがなくなってしまうのだ。知名度のあるお店ならばそれでも構わないのだが、知名度がない、特にできて間もない店にとってはデメリットのほうが大きいのだ。
そしてクヨウは新商品としてポーションを登録するつもりではいたが、それはまだまだ後の予定だった。
「ということなので、今回の一件はなかったことにしてください」
「それでは仕方がないですね。しかし、ある程度知名度があがればいいのなら行商に紹介をしましょう。それならば構いませんよね?」
「ん~、それならばこちらからお願いしたいところなんですけど、そんなことしてもギルドとして大丈夫なんですか?贔屓みたいなことをするのは良くない気もしますが」
「いえいえ、別に贔屓をするわけではありませんから大丈夫ですよ。」
行商とは各町を巡り、珍しい物や必要とされている物を売買している商人である。商人ギルドとしては、各々の町にある名物や商品の情報を行商に渡すことで物流を活発にしているのである。なので、特定のお店だけを行商に紹介するのはNGだが、「その店でしか買えない物がある」という情報は行商にとってもメリットがあり、その際他の店を紹介しても仕方がないだけであるので贔屓にはならない。
「なるほど・・・それではお願いしますね」
「わかりました。ではその新商品の使い方や注意事項をこの用紙に書いておいてください。用紙は明日取りに来ますので、その時にできればサンプルとしていくつかいただきたいのですがよろしいですか?」
「ん~、わかりました。ではお願いしますね、カレーさん」
「いえカリイです。ではまた明日に」
新商品の紹介用の用紙をおいてカレー・・・ではなくカリイは次のお店に向かうのであった。
「行商に紹介かぁ、それは思いつかなかったな。まぁ棚から牡丹餅ということで良しとしよう」
そうしてクヨウは店に戻り、明日の開店準備をするのであった。そして重大なことに気がつくのはレンヤが夕飯を作ったあとだった。
後書きで本編では説明できなかったことを説明しようかと思います。
まず、「冒険者」と「ハンター」の違いについてです。
「冒険者」は各地を旅したり、ダンジョンの攻略をする人たち。
「ハンター」はギルドの依頼をこなしていく人たちのことです。
ただし、「冒険者」もハンターとしてギルドに登録してありますので、『ハンター』という大きいくくりの中で、「冒険者」と「ハンター」に分けているだけです。
次にギルドについてです。
ギルドには2種類あり、ハンター用と商人用があり、基本的に協力関係にはありますが、別の組織です。
ちなみに本編で「ギルド」というとハンター用であり、「商人ギルド」といえば商人用だと思ってください。ハンター用のギルドは一般的な部分が多いのでそういう呼称にしました。商人ギルドは商人しか関係しないのに対し、ハンターギルドは一般人も関係してきますので。
それでは~次回をお楽しみに。