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第48話「浄化と完了」

今回で本編終了です。

第48話「浄化と完了」


クヨウが受けた依頼の期日の夜、リュミエールにアゲインはやってきた。約1ヶ月ぶりにみたアゲインは以前よりも神々しいオーラのようなものを纏っている。恐らく、以前よりも遥かにブルーシードが体に馴染んでいる影響であろう。本人もその事を気にしているせいか、かなり強力な部類の封印を自身の体にかけているようだった。


「お久しぶりですね。前よりも神様っぽくなってきたようですが、ブルーシードの影響ですか?」

「うむ、だがあまりそれは言わないで欲しいな。正直これには参っているのだ。」


前と変わらない様子に見えたが、声から察するに大分疲れているようだ。


「ブルーシードと瘴気が反発でもしているんですか?アゲインさんが疲れているということは余程の影響なのでしょうけど・・・。」

「いや、そうではない。私としてはそちらのほうが幾分か楽だがな。君もわかるだろうが、ブルーシードの影響でこのオーラみたいな物が体につくようになった。そのせいでな、一部の人間達から聖人、或いは神の使い等と崇められる様になってしまったのだ。私がいくら違うといってもこのオーラがある以上否定しきれんのだ。そんな人間共の相手をしていて大分参っているのだよ。」


魔王と呼ばれ恐れられている者が聖人、或いは神の使い等とは皮肉もいいところだ。しかも、ある意味そういう存在になってしまった以上完全に否定するのは不可能である。しかも、証拠と言わんばかりに神々しいオーラを纏っている。肯定する材料ばかり揃ってしまい、アゲインもかなり苦労しているようだった。


「いっそのこと、嫌悪してくれたほうが、気楽なのだがな。」

「あはは、まぁお疲れ様です。」


流石にクヨウも引きつった笑いしかでなかった。


「ふむ、愚痴になってしまったな。今のは忘れてくれ。さて、依頼は完遂する事ができそうかね?」

「ええ、こちらも結構苦労はしましたが、なんとかできそうですよ。」

「ほう、それは頼もしい。一応他にも依頼をかけているところを周ったが、今のところ全滅でな。今出来そうか?」

「はい、これを使えば大丈夫でしょう。」


クヨウがそう言って取り出したのは管理人から貰った浄化の杖だった。こちらもこちらで神々しいオーラを放っており、アゲインも流石に驚いて声が出なかった。


「これで瘴気がなくなれば依頼完了というわけか。では、やって欲しい。」

「では、いきますよ。」


クヨウが浄化の杖をかざすと、目が眩むような光が周りを照らし始める。あまりの光の強さに目を閉じても明るさが分かるくらいだ。


「ん!?グッ、あああ・・・・あああああ・・・。」


徐々にアゲインの体から煙が上がってきている。今正に瘴気を浄化しているのだろう。クヨウ自身は光が眩しくてアゲインの様子を見ることはできないが、それでもアゲインからの魔王のプレッシャーの様なものが徐々になくなっていくのを感じており、浄化が進んでいることが予想できる。

そして1分ほどで光が収まり浄化が完了する。それと同時に杖が粉々に砕けた。元々1度だけということで管理人から貰ったものなので、クヨウも特に驚きはしなかった。浄化が済んだアゲインは姿形に変化はないが、魔王としての力はなくなっていた。


「ふう、なかなかに辛い体験だった。」

「大丈夫ですか?一応浄化は完了したみたいですけど、体調のほうはどうですか?」

「いや、特に問題ない。体の奥底にあった塊がとれたような感覚だ。こんなに体が軽く感じられるのは久しぶりのことだ。」


アゲインは体の各所を動かしつつ様子を見るが特に問題はないようだった。疲労はあったが、今までよりも体調がよくなっている様子だ。


「しかし、よくあのような物を用意できたな。世に出せば世界遺産級の扱いを受けてもおかしくはないものだ。既に粉々に砕けているのが残念だがな。」

「まぁ、色々ありまして・・・・1度使えば確実に壊れることは知っていましたので、問題はないですよ。」

「そうか・・・いや、何もいうまい。依頼ご苦労だった。報酬は数日後、組織の方から送るようにする。何か問題はあるかね?」

「いえ、大丈夫ですよ。」


多少報酬の確認を済ませ、アゲインは店から出て行った。アゲインが外へ出て行ったのを見計らってサクラがヒカリを抱いたまま店の置くから出てきた。


「どう?クヨウさん。無事終わった?」

「うん、終わったよ。」


サクラも結構心配していたようで、クヨウの安全を確認してほっとする。


「それにしても案外何も無く終わったのね。」

「ははは、まぁ僕にかかる負担はそんなに重くはないよ。アゲインさんのほうは結構きつそうだったけどね。」


長年体に同化させてきた瘴気を浄化したというのは、体の作りをその場で強制的に変えたようなものだ。アゲインは苦しむ程度で済ませてはいたが、並みの人間だと死んでもおかしくない激痛が襲っていただろう。それを感じさせなかったアゲインは流石魔王といったところか。


「まぁ、店全体に遮断用の護符を貼ってあるしね。下手に漏れると大騒ぎだ。」

「それもそうね。これでようやく落ち着いたんだもの、しばらくはゆっくりしたいわ。」


店を再開させてから、依頼があり、お祭りがあり等意外と忙しくしていた。クヨウ1人が忙しくしていそうなイメージもあるが、サクラやミリアはクヨウのフォローに周っているため、それなりに忙しくはしている。しかし、それもこの依頼達成で終わりであった。


「あとの気がかりは、式くらいだしなぁ。まぁ数ヶ月先になるだろうし、ゆっくりやっていくかな。」

「そうね~、式・・・・式か~・・・ふふ、ふふふふ。」


若干不気味な笑い声をあげサクラは何かを想像したようで、女性としてはどうなのか?というくらいニヤけだした。クヨウもサクラの妄想癖は大体把握したらしく、若干あきれ気味に突っ込む。


「サクラ?妄想はほどほどにね。」

「え?!クヨウさんとの結婚生活とか、甘い夜とか全然想像してないよ!」

「・・・・うん、わかったから落ち着いて落ち着いて。」

「お母様、お顔が真っ赤です。」


サクラは気がついていないが同棲と結婚生活は差ほど変わりは無いだろう。子供代わりにヒカリがいるから尚の事。クヨウは気がついているが、サクラを撃沈するつもりもないので黙っている。


「ええと・・・そうだ!クヨウさん、魔法具関係はどうするの?能力なくなっちゃったんでしょう?」

「(結構強引に話をずらしたね、別にいいけど。)魔法具ね、まぁ今までとあまり変わりはないんだよね、実のところ。」

「え?変わらないの?」

「そりゃ、術式なしで作るのは不可能だけど・・・・なんというか、コツがわかった、といえばいいかな?作りたいと思う能力に対してどういう術式がいいかって大体分かるようになったんだよ。結構遊びも兼ねて色々作ったからそれの経験則だと思うんだけどね。だから、多少研究する必要があるけど、他の人よりは楽に作れるよ。まぁ、アイデアもあるしね。」


これは作った魔法具を見て術式に直すという作業を繰り返し行っていたクヨウだからできる経験則である。他の人とは完全に考え方が違うのだ。そして、今まで電化製品と創作物関係の道具を作ってきたクヨウにとって魔法具のアイデア等腐るほどある。勿論、今まで通りあまり武器に転用できない物を作っていく予定だ。

なので、サクラが想像しているほど苦労はしないだろう。


「まぁ、これからはのんびりやっていくことにするよ。」


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1年後。


「お疲れ様、サクラ。案外疲れたね。」

「ほんとね、何か飲む?」


今現在クヨウとサクラがいるのはオオヤマ国である。険しい山に囲まれ、独自の文化を創った国である。山の麓から本土への移動用魔方陣が開発されたことにより交易が盛んになった。人間族と竜人族が主に暮らしており、サクラの生まれ故郷である。何故そんなところにいるのかというと、クヨウとサクラの結婚式のためである。

アゲインの依頼を終えてから、数ヶ月後、クヨウはサクラの両親へ挨拶のためにオオヤマ国へ向かったのである。そして一悶着あったものの、なんとか結婚を認めてもらえたのだが、条件として結婚式はオオヤマ国でやるということを約束させられたのである。これは唯単に親としての強い要望だったのであろう。クヨウも特にこだわりがあったわけでもないし、親の気持ちというのもある程度理解していたため、これを了承。それで今回結婚式のためにオオヤマ国へきているのであった。ちなみにサクラの両親が一番結婚式の準備を進めていたのは余談である。


「それにしても、結婚式でそこらじゅうの人が来るとは思わなかったなぁ~。いつもこうなの?」

「うん、オオヤマ国はどうしても閉鎖的な部分があるじゃない?逆に言えば町1つが全部身内の様なものなのよ。昔から結婚式は町中で大騒ぎしてた覚えがあるわね。」


そしてその大騒ぎの渦中にいた主役は疲れ果てるのも無理の無いことだった。


「サクラは凄い人気だったんだね~、特に女性からの歓声が凄かったけど。」

「あははは、修行中によく後輩を指導してたりもしてたからその関係でね。素直でいい子達だし、悪気はないと思うよ?」


実は式の最中等にクヨウは殺気の篭った視線(女性が多い)を大量に浴びていたのだ。全部嫉妬なのだが、7割が女性だったのはサクラの人徳の表れなのだろうか?サクラが気がつき宥めていたので時間が経つにつれ減ってはいったが、クヨウの神経をすり減らした要因の1つには違いがないだろう。


「まぁ、でもおば様方のプレッシャーが一番きつかったかな。」

「あ~、それはあるわね・・・・その・・・いつになったら、ここ・・・子供ができるかとか・・・。」

「サクラは本当に人気だね~。」


サクラの両親への挨拶が終わったと同時に近場の大人(ほぼ既婚者)の女性から「子供はいつ連れてくるのか!?」と質問攻めにされていた。サクラはそういった質問に弱いので全部クヨウが答えていたが、流石に具体的にいつとは決まっているわけではないので無難に「これから・・・ですかねぇ~。」と大分言葉を濁すに留まっていた。ある意味ヒカリが2人の子供のようなものなのだが、そこはまた別なのだろう。

クヨウはサクラから貰った飲み物を飲み干し一息つく。今日は初夜である。さっきからこの状況とは関係ない話をするあたりクヨウもかなり緊張している。


「さて・・・と。ねぇ、サクラ?これから頑張っていこうね。」

「え?・・・うん。改めて、不束者ですがよろしくお願いします。」



これから更に数年後、クヨウとサクラは2人の子供を授かり、順調にこの世界に根を下ろしていくのであった。


一応移住完了という意味の完了です。レンヤはまだ根無し草っぽいですけどね。


魔王との決戦!という割にはあっさり終了しました。出てきた瘴気がモンスター化とかも考えたこともありましたが、そこまでいくと道具屋のすることじゃねぇなと思って却下ですね。


そしていきなり結婚式終了へ・・・・まぁ一種のエンディングみたいなイメージですので深く考えないでいただければ幸いです。


あとはいくつか番外編を書いたら終了予定になってます。

ここまで読んでくださいました読者の皆さんありがとうございました。

なんとか全部書き上げられそうです。評価とかお気に入り登録数とか増えればかなりやる気がでました。それがなかったら挫折していたかもしれませんね。


一応習作ということもあり、書き方を色々変えてみた部分もありますが楽しんでいただけたり、暇つぶし程度にでもなれてたら幸いです。

ありがとうございました。

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