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第41話「再開と再会」

やっと道具屋再開!


今回ちょっと説明文が多いので、ゆっくり読んでください。

第41話「再開と再会」


営業再開まであと4日、道具屋「リュミエール」の面々は準備に追われていた。魔法具の準備はある程度できているので主に薬草等の必需品だけなのだが、店頭に並べるだけに数量がそれなりに必要だった。


「クヨウさん、薬草等のギルド依頼は済んだわ。あとは薬品の作成だけ?」

「ご苦労様。そうだね~ポーションが圧倒的に足りないね。なんとか大量生産はしてるんだけどね」

「まぁ四日もあるんだし、なんとかなるわよ。あとは従業員ね」


元々ミリアとレナリンスを再雇用する予定であった。しかし、レナリンスは現在アルカディアス国立総合技術学園の教師をしていた。レナリンス自身はリュミエール再開までの繋ぎのつもりだったのだが、現在教師の数が若干少なめというのもあり、辞めるに辞めれない状況になっていた。ミリアも臨時講師という立場で週に2度授業の手伝いへ行っている。


ミリアは学園の授業日以外なら働くことはできるので再雇用となった。無論、学園側も了解している。


「ん~、当分は3人でも大丈夫だと思うよ。忙しくなりすぎるようだったら募集はするけどね」

「了解。それにしてもリンスちゃんが教師か~、案外面白そうよね~」

「サクラさんもやりたいの?」

「ううん、そういう意味じゃなくてね。授業が面白そうだなってね」


レナリンスの授業風景を思い浮かべると、確かに楽しそうではあったが、眠くなりそうだな~と思うクヨウだった。


「さて、残りの薬を作らないとね」

「そういえば、ヒカリちゃんは?」

「ヒカリならそこで寝てるよ」


ヒカリは窓際で丁度日が当たって気持ちいいのか熟睡していた。やはり元になった人物同様で寝ることが好きらしい。


そして数日後、準備もなんとか終了し無事道具屋を再開することとなった。朝店の扉をあけるとすでに数人ほどの人が待機していた。


「開店~、って・・・・・・なんでこんなに人がいるの???」

「そりゃ~、勿論敵情視察ってやつですよ」

「それに、新しい物があるかどうか楽しみにしていたしな」


みんなわいわいと扉の前で待っていたそうだ。このとき、思っている以上に自分が注目されているということをクヨウは実感した。


「あ~、まぁいいか。どうぞ、いらっしゃいませ」


店舗の広さ的にそんなに大勢入ると窮屈なのだが、視察にきたメンバーは営業妨害に来たわけではないので他の客に対しての配慮をしていたので十分対応することができた。視察メンバーが帰っていくと、以前常連だった人達もちらほらやってきて、挨拶を交わしていった。そんな中、ヒカリは大人気でマスコット的な地位を確立していた。


「ヒカリちゃんは可愛いからね~、ヒカリちゃん目当ての客もきそうね」

「ん~、予想以上だね・・・・ちっちゃいヒカリちゃんのぬいぐるみでも作ろうか?常連客へのプレゼントくらいにはなるかも?」

「あ、私もそれ欲しいわ」

「本物をいつでも可愛がれるのに、ぬいぐるみなんているの?」

「それはそれ、これはこれよクヨウさん」


クヨウはあきれるが、サクラの目が何気に真剣だったので、内心で作ることを決定した。道具屋「リュミエール」の営業初日は無事に終了。本当なら次の日に備えての準備等に追われることになるのだが、営業時間後、ある人物が来ることになっていた。


それはリュミエールの再開に向けて準備中、ギルドマスターから預かった手紙を処理している時だった。



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「ん~、疲れた。意外と手紙が来てるから返事がめんどくさいな~」

「まぁまぁ、もうちょっとで終わるんでしょう?あと少し頑張ろうね」


手紙といっても、クヨウ個人宛から道具屋宛だったり種類はいろいろある。中には新商品の紹介というのもあったりする。各方面に世話になっている人からの手紙は返事をしないわけにいかないので、今現在返事を書いているのだった。


「あ、見てクヨウさん。レンヤさんからの手紙もあったよ」

「本当?どれどれ・・・・へぇ~、Sランクになったんだ~。日付がこれだから半年位前だね」

「すご~い、Sランクの試験はなかなか厳しいから相当頑張ったんだろうね。帰ってきたらお祝いしないとね」

「あれ?1ヶ月くらい前にも手紙がきてるね。・・・・あはは、これはまた・・・・」


それはレンヤのお怒りの手紙だった。


『久しぶり。Sランクになって大分経ったしそろそろ一度戻るか~と思ってラングランへ帰ってきたんだが・・・どうして、リュミエールがないんだ!?リンスちゃんに聞いたら婚前旅行だと!良い御身分でなによりだ。今度会ったら納得の行くまで説明してもらうからな。PS.リア充ハゲろ! By青井連也』


お怒りといっても、半分以上逆恨みというか嫉妬だ・・・・しかも何気に勘違いもしている。


「リンスちゃんが変な冗談を吹きこんだんだろうなぁ。それにしても、リンスちゃんからは何も聞いてないな。サクラさんは何か聞いてる?」

「こ・・・・婚前旅行だなんて・・・あ、いや、でもまだ・・・そんな・・・」

「サクラさん?」

「え!?何?大丈夫、変なこと考えてないよ?本当だよ!?」

「あ~、うんわかった。わかったから、そんな涙目で睨まないでください」


ちっとも怖くないサクラの睨みを横目に他の手紙に目を通していく。そして最後の手紙を見たときにクヨウは止まる。


「どうしたのクヨウさん?」

「ん~、いやまぁどうしたものかな~?と思ってね」

「道具屋再開初日の閉店後に来るって随分変な人ね。名前は~・・・・・え?」


書いたであろう人物の名前を見るとサクラも止まる。まさかこんな人物から手紙をもらうとは思わなかったからだ。差出人のところには『アゲイン・ルイゼフ』と書かれていた。



--------------------------------------------------------------------------------



当初はギルドに通報でもしようかとも思ったが、アゲインからの手紙には『依頼したい事がある』と書かれていた。以前一度会ったときも紳士的に対応してくれたので、こちらから仕掛けなければ大丈夫であろうとクヨウは判断した。もし何かあった場合はどうしようもないというのもあるが、若干依頼内容に興味を惹かれたのも事実であった。


「この場合鬼が出るか蛇がでるか・・・・っていうのかな?」

「鬼や蛇じゃなくて魔王が出るっていうのは流石に笑えないわね」


リュミエール閉店後、しばらくしてあたりの雰囲気が変わる。リュミエール前の通りに人がいなくなる。ただならぬ雰囲気を漂わせてそのアゲイン・ルイゼフはやってきた。


「こんばんは、クヨウ・キサラギ殿、サクラ・イザヨイ殿。それとお久しぶりですな。御壮健で何よりだ」


前にあったときと変わらない紳士的な雰囲気をかもし出している。クヨウは用意しておいたテーブルへ案内し、話を進める。


「こんばんは、それといらっしゃいませ。本日はどのような御用件でしょうか?」

「まずは謝罪をさせていただこう。こんな時間にすまないね、私の身の上もあるが貴方たちにそれを強要することになってしまった」

「いえ、前もって連絡をいただいていたので大丈夫ですよ」


逆に連絡なしで、昼間こられたら町中が大混乱になっていただろう。どちらが迷惑になるかはちょっと考えれば誰でもわかる。


「さっそくで悪いが本題に入ろう。実は君にある物を作っていただきたいのだ」

「あるもの?武器や兵器の類はお断りしますが・・・・」

「安心したまえ、その手の物ではない。実はな瘴気を浄化できる魔法具を作ってもらいたい」

「え???」


クヨウは激しく混乱する。それもそのはず、一般的な知識でも魔王というのは瘴気を操れるということはわかっている。つまり武器にもなるのだ。それを浄化するということは武器が減ることに等しい。魔王という立場から考えればデメリットしか存在しないように思える。


「混乱するのはある意味当然か。キサラギ殿、何故こんな依頼をするか説明するので、しばらく聞いていただきたい」


流石にクヨウが混乱するのは予想の範囲内だったようで、アゲインは落ち着いている。ちなみにクヨウの隣で話を聞いていた。そして後ろで控えていたサクラは混乱以前に驚きすぎて思考が止まりかけていた。

アゲインは元々瘴気を浄化させる研究を組織にさせていた。これ自体は元々暇つぶしでしかなかったのだが、ブルーシードを手に入れてしまったため必要性が高まったのだ。それは何故か?そもそもブルーシードとはただの魔力の塊でもなければ神々の秘宝でもない。いうなれば『世界の種』なのだ。適正がなければ手に入れることはできず、手に入れた者は例外なく半ば強制的に世界の管理人の1人として新しい世界を作らなければならない。

そして、その世界はブルーシードが適正者を元に構築する。

魔王というのは元々この世界の人であり、瘴気を取り込んで力を持った存在である。普通なら瘴気に飲み込まれモンスター化するのだが魔王は種族に関係なく瘴気を飲み込み自分の力とした存在だ。故に力の根源が瘴気となっている。

今のままアゲインが世界の管理人になると新しい世界は瘴気に溢れた世界になってしまうのだ。仮に瘴気に溢れた世界というと単にユニークモンスターや魔王クラスがその辺いるという世界ではない。

瘴気は世界の循環作用の中で出てきた『ゴミ』や『毒』の塊なのである。故に瘴気の溢れた世界というのは生まれた瞬間から猛毒を宿すウィルスになる。今ある世界は木の葉のような物で、ブルーシードは枝分かれのような物だ。つまり全ての世界は根本では繋がっている。その葉が猛毒を宿すウィルスになればいずれ木全体を食らい尽くすだろう。アゲインが新しい世界の管理人になるのは確定している。なので、解決するにはアゲインの中にある瘴気を浄化するしかないのだった。


「そして、僕に浄化できる魔法具の依頼をしにきた。というわけですね?」

「そういうことだ。もちろん、他の分野にも協力を要請している。期限は1ヶ月ほど。報酬は前払いで相応の額を払おう」

「期限が短いですね、瘴気の研究をしないといけないならかなり厳しいですね」

「ブルーシードを手に入れてしまった以上、早々先延ばしにできる状況でもないのだ。これがこちらの限界だ」


1ヶ月は流石に短いが、アゲインも管理人になるのをなんとか引き伸ばし稼いだ時間だった。元々瘴気の研究自体はしていたので、その研究を論文の形でクヨウに渡すことになった。


「何かあれば私の組織へ連絡して欲しい。直ぐに対応できるよう伝えてある」

「最初から断ることは考慮していないという感じですね。まぁ、ある意味世界の危機ですから、最大限協力はしますけど」

「うむ、交渉成立。ということでよろしいかな?」

「ええ、大丈夫です」


なんとか交渉はひと段落。クヨウもそうだが、サクラも魔王のプレッシャーと衝撃的過ぎる話の内容に大分参っていた。とはいえ、以前から幾つかの疑問がある。今ここで聞かなければ聞く事ができなくなる。まだ気を緩める訳にはいかなかった。


「アゲインさん、いくつか質問があるんですけどよろしいでしょうか?」

「内容にもよるが、契約内容に不備でもあったかな?」

「いえ、契約とは関係しないことです」

「ふむ、まぁよいか。先ほど言ったとおり内容次第で答えよう」


サクラの疑問は先の戦争のことであった。


「世界樹の近くに要塞を築くようなことを?本格的に攻めるつもりもなかったみたいですし、世界樹の探索にしても意味がありません」

「ああ、あれか。あれはまぁ、後片付けといったところかな。君らは商業連合は知っているかな?」

「ええ、若干きな臭い噂の絶えないグループですよね?」

「うむ、恐らくそれであっているだろう」


実は商業連合はアゲインが作った組織と手を結ぼうとしていたのだった。実際、一度は協力関係になり商業連合のほうでも瘴気の研究等を行ったのだが、商業連合の上層部の目的は瘴気の研究を行い、ユニークモンスターを生み、操ろうとしていたのだ。

アゲインはそれに気付き商業連合の研究施設を全て潰したのだが、既に生み出されたモンスターを処分することはしなかった。ほとんど同属に等しいモンスターを処分するのは嫌だったらしく、かといって放置すると多大な被害がでる。それに、人工的に生み出されたためか、アゲインにもあまり隷属的ではなかったらしく、闇の島へ連れて行くわけにもいかない。そこで、各国を挑発するように世界樹の近くに要塞を築き、そこにモンスターを集結させたのだ。そして連合軍にモンスターを討伐させ、自分はたまに出て行く程度で戦いもせず世界樹を探索(散歩)していたのだった。


「へ~、あの戦争にそんな裏があったのか~」

「訳も分からない戦争だとも思ったけど、そんな理由があったのね」

「ちなみに、商業連合は上層部を潰したからそのうち瓦解するだろう。ああ、殺していないから安心していい。少々廃人になってもらったがな」

「どのみち十分物騒だと思いますけどね」


クヨウはそこでふと気付く、連合軍はそれをわかってて最初からアゲインが出たら撤退などどという形をとっていたのではないかと。となると、アゲインの真意を知っている人物が各国の上層部にはいたということになる。つまり、『アゲインと通じている人物がいる』という結論になるのは当然であった。


「さて、どうだろうな?」


アゲインが口を若干歪めながらクヨウに言った。多分、クヨウの辿り着いた結論に気がついたのであろうが、結局なんの証拠もない推論に過ぎない。ゆえに、若干そうだと臭わせながら放置するつもりだろう。クヨウもそれに気付きそこで考えを止めた。


「案外意地悪ですね」

「まぁ、今は依頼の方に全力を尽くしてもらいたい。そうそう、これを渡しておかねばな」


そういってアゲインが出したのは、黒い煙が漂っているガラス玉だった。


「これはちょっと特殊なガラス玉でな。中に瘴気が入っている。これを外側をそのままに浄化するか、取り出す事ができれば、依頼成功というわけだ」

「なるほど、分かりました」

「さて、そろそろ私はお暇させてもらおう。随分話し込んでしまったしな」

「では、1ヵ月後に?」

「ああ、期待しているぞ」


そのままアゲインは自分の影の中へ潜っていった。アゲインがいなくなり、クヨウとサクラは一気に気が抜けて椅子と床に座り込んだ。


「相変わらず、すごいプレッシャーね。戦うつもりは欠片もなかったのでしょうけど、目の前にいるだけで疲れるわ」

「あ~、疲れた。でも、これからもっと疲れるなぁ~。まさか魔王から『魔王退治』を依頼されるとは思わなかったよ」


実際に世界の破滅が迫っているのだ。アゲインも言っていたが、自分以外にも同じ依頼はしていても、他のところが成功するかわからないので、実際自分でどうにかするしかない。

道具屋再開直後、難問に悩むことになったクヨウだった。


一応世界滅亡の危機なのですが、かなり危機感が感じられない内容になってしまいました。


最初は成り行きで魔王とガチバトル・・・・とも考えたんですが、クヨウはあくまで道具屋店主であり、勇者ではないです。で、道具屋として魔王を倒すという考えで進めていき、こういう形にしました。

あとは、どうやって魔王倒すか!?という感じでしょうか。


あとは今後のお楽しみということで、次回をお楽しみに~

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