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第35話「兵器と平和」

若干迷走気味になってます。


無事収束できる・・・といいなぁ。

第35話「兵器と平和」


オットーゼの町の宿で、クヨウを訪ねてきたのはミラージュ国の魔道科学研究所の使者だった。


「ん~、それでご用件はなんでしょうか?」


現在、クヨウの部屋で交渉をするつもりはなかったので、食堂にきている。ここならば変なことにはならないであろうとの判断だ。


「単刀直入に申し上げますと、私たちに協力して欲しいのです。できれば所員になっていただけるとありがたいのですが、キサラギ殿はそのような申し出は全てお断りしているとお聞きしましたので、そこは考えておりません」


しかし、内容を考えるとどっちも同じようなものだろう。協力なら多少の融通をきかせられる、その程度の違いだ。


「協力とはどんな内容なのですか?」


どんな内容だろうと拒否するつもりだが、何を考えているのかを把握するためにあえて少しのってみせた。


「あまり・・・・このような場所では言いたくはないですが・・・・」

「つまり、危ないこと・・・ということですね」

「端的に言えばそうなってしまいますね。しかし、これは最終的に世界の平和のためなのです」

「そういわれても、実際危ない行為なのでしょう?今の僕は行商をしています。そういうのにはあまり関わりたくはないですね」


半分旅行のような物なのだが、一応営業をしているので嘘ではない。ちなみに、サクラは話を聞いているだけで、口出しをするつもりはないので黙っている。


「わかりました、話せるところまで・・・ですが、お話しましょう」


向こうも、流石にこれ以上は交渉が進まないと判断したらしく、譲歩してくる。


「我々が研究しているのはある武器・・・いえ、兵器といったほうがいいでしょう、その研究です。対人ではなく、対ユニークモンスターといったほうがいいでしょう」

「ということは、最終目標は魔王ですか・・・」

「そうなります。具体的な内容は言えないので、ここまでですが、どうかご協力をお願いできませんでしょうか?こちらが、契約内容になります」


クヨウも一応契約用の用紙に目を通す、流石にサクラも気になるのか一緒にみている。全て確認した上でクヨウが口を開く。


「ん~、折角のお誘いで申し訳ありませんがお断りさせていただきます」

「そんな・・・・一応理由を聞いてもよろしいでしょうか?」

「早い話、兵器を作るための協力ですよね?僕は兵器を作るつもりはありませんので。それが理由です」

「しかし、世界の平和、安定のためですよ?それに対ユニークモンスター用です。魔王を倒すための協力を何故拒むのですか?」

「対ユニークモンスター用ですか・・・尚更作るわけにはいかないですね。貴方たちとはどうも認識は違うようです」

「それはどういう意味ですか?」


流石にここにきて、この人物も言葉に怒気が混ざる。クヨウが平和の為の協力を何故拒むのかが全く理解できないからだ。しかも、対ユニークモンスター用の兵器しか作らない、平和の為だと言っているのに・・・・


「貴方は対ユニークモンスター用だとおっしゃいましたが、その兵器は人にとっては無害なのですか?」

「どういうことです?」

「兵器・・・・まぁ武器全般そうですが、結局向けた先の対象を傷つけるんですよ。対ユニークモンスター用兵器なんてもの、人にとって無害なはずがない。例えば魔王をその兵器を使用して倒したとしましょう。じゃあ、その兵器は全て廃棄されるのか?答えは否です。まずありえませんね、何故なら魔王を倒せるほどの優秀な兵器だからです。人が一旦身につけた力を放棄することはないでしょう。例え人にとって無害な兵器であったとしてもいくらでも転用は可能でしょうから、どうにでもなります。平和のために兵器を作るですか、その理念は否定するつもりはありませんが、人を傷つける可能性を『見てない』人達と作るつもりはありませんね」


いくらこの世界がクヨウにとってはファンタジー満載であろうとも結局は現実である。前の世界での可能性、経験はこの世界でも十分通用する。実際に目の前の交渉に来ている男も反論できずにいた。それと、クヨウには1つ疑問に思うところがあったのだ。この町へ来る前に商人を襲っていた白い集団。あれはもしかしたら兵器なのではないか?と。少なくとも目も鼻も口もない生き物が存在するとは思えない。あれは生き物ではなければなんなのか?そう考えていたところにこの話である。魔道科学研究所が具体的に何を作っているのかは知らないが、あの白い集団も研究所が作った兵器である可能性がある以上それに加担するつもりはなかった。


「残念ですが、お引取りください。貴方ももう少し視野を広くすべきだ、平和の為に武器を作ることの矛盾に疑問を抱かないのだから」

「わかりました、今回は諦めましょう」


男はそう言って、頭を下げるとそのまま宿を出て行った。サクラは少し疑問に思う。例えが少し具体的過ぎないかと。


「クヨウさん、随分具体的に言ってたけど思い当たる事があるの?」


クヨウも少し驚くが、隠すことでもないので訳を話す。


「僕のいた世界でね、世界戦争が起こってそれを終わらせるために強力な兵器が使われたんだ。それは半径数Km圏内は生物の存在を許さないような兵器。そして、戦争が終わって勝った国は何をしたと思う?結局更に強力な兵器を作ったんだ。威力を数倍に高めた物をね。そして、世界の国々も負けじと研究が進められた。一応社会の為に転用できる技術ではあったんだけど、そんな物が世界中に存在するようになったんだ。『抑止力』といえば聞こえがいいかもしれないけど、結局は国家間の睨み合いだね。そして、そのうちこう囁かれる様になった。『次に世界戦争が勃発したら、地上に人が住める場所はなくなる』ってね。その兵器は人も環境も破壊した上に毒まで撒き散らすような物だから、世界のバランスも崩すんだ。この世界までそんな状況にしたくはないでしょう?」

「そうね・・・それにしてもクヨウさんのいた世界は安全な場所かと思ってたけど・・・結構物騒なのね」

「安全性は国によって違うよ、内戦がひどい国もあれば子供1人でお使いにいける国もあるし」

「世界が変わって人種が変わっても、人の性まではかわらないのね」


できれば、あとは何事もなければいいなぁ~と思うクヨウだった。


そんな中、クヨウのポケットの中で少し動いている物があった・・・・




次の日・・・・



この日、クヨウは営業に出ていた。一応行商人なので、赤字にするわけにはいかなかったのだが・・・・


「なかなか売れ行きが悪いなぁ・・・やっぱこれの値段が違ったのが痛いなぁ・・・」

「時期によっても変わるからね~」


ここに来る前に買った物の値段が時期の関係で変動しており、赤字覚悟で売るしかなかったのであった。


「魔法具で辻褄を合わせたら駄目なの?」

「それはあくまで最悪の手段にしたいねぇ~、普通の道具は普通の道具の売り上げだけで黒字にしたいし」


通常の商品の売り上げを魔法具の売り上げでカバーはできるのだが、それをやってしまうと行商に出ている意味がないのである。クヨウとしてはそこは譲れない一線でもある。


「ん~、参ったな~・・・・」


結局3日ほど粘ってはみたものの、赤字で終わった。


「難しいな、値段の変動までは気がつかなかったなぁ~。次の町でなんとかしてみよう」

「仕入れは大丈夫?討伐依頼ついでに薬草とか取ってくることもできるけど」

「そういえば、そろそろ薬草が足りなかったね、忘れてた。明日いってみようか」

「一応依頼は見てきたから、候補は絞ってあるよ」

「できるだけお手柔らかにね」

「クヨウさんなら大丈夫だって~」


何度か討伐依頼を2人でこなしたのだが、全てAランクの依頼だった。Sランクの依頼は元々少ないので仕方がないのだが、クヨウとしてはBとかCランクの依頼にして欲しかったりする。しかし、そのおかげでクヨウはそろそろAランクになってしまうのだが・・・・



次の日・・・・



「これもAランクの依頼?」

「でっかいのがいる時点で間違いなくSね。これは追加報酬が期待できそうね~」

「いや・・・僕としては難易度を下げて欲しいかな~・・・」


クヨウとサクラは薬草関係を収穫するため、討伐依頼を受けた。討伐して安全性を確保してからゆっくり収穫するつもりだったのだが・・・


討伐対象は確かにAランクの依頼になるモンスターだ。そこは間違いではない。問題は討伐対象と一緒にいるモンスターがどうみてもSランク対象になるモンスターなのである。


ロストティコアという名前で、巨大なライオンに3対の翼が生えたような外見をしており、瘴気の影響もなく知能をもっており、魔法を使う厄介なモンスターである。ちなみに、本来の討伐対象のモンスターはミミガルンというワーム型のモンスターである。物理障壁を張って突進してくるが、側面からの攻撃に弱い。なので、慣れれば簡単に倒せるモンスターだ。ただし、今回は3匹討伐することになっている。


「ロストティコアにミミガルン3匹ね。なかなか厄介な組み合わせだけど、どうしましょうか?」

「空にロストティコアで、地上はミミガルンだね・・・双方を引き離すしかないよねこれ」

「じゃあ、クヨウさんはミミガルン3匹を攻撃して。引き離したらちゃっちゃと倒してね。私はロストティコアをなんとかするから」

「3匹同時か・・・・というかサクラさんは大丈夫?あいつも相当強そうだけど・・・」

「久々のSだから張り切っちゃうわ。大丈夫、全力でやればまだなんとかなる相手よ」


細かい打ち合わせをしてから、クヨウがミミガルンに攻撃する。ミミガルンは単純に攻撃したクヨウを見つけて突進していった。ロストティコアも一緒に行きそうになったが、サクラが攻撃し引き止める。


「さてと・・・ここまでは完璧ね。さ~てデートの準備はよろしくて?」


ロストティコアもサクラが危険だと認識する。そしてSランクハンターの戦いが始まる。



一方クヨウはというと・・・・


「よっと・・・・おっと・・・うわっと~~~」



魔法具で瞬発力とジャンプ力を高めているので、ミミガルンの突進をかわせてはいるのだが、何分相手は3匹もいるので結構苦戦(?)していた。


「ん~まぁ、セオリー通りにやりますかね」


3匹の動きを把握しつつ、側面に銃撃を加えていく。ミミガルンがいくら3匹とはいえ、連携ができていないので回避に重点をおいておけばそうそうやられることはない。まして、それなりの大きさがあるので的は大きい。適当に撃ってもあたるくらいだ。


「それにしても、タフだね・・・少し疲れたな」


既に10発以上撃ち込んでいるのだが、あまり影響が見られない。スピッドファイアの攻撃は威力はあるのだが、あたりが小さいためあまり大きいダメージにならないのだ。

クヨウは薬莢を変える、変えたのはミスリルの薬莢だ。この薬莢は数秒溜めの時間を必要とするが、6発まで連射可能であたりも大きくかなりの威力になる。


「これで、なんとか、なるかな」


クヨウはミミガルンの攻撃をかわしつつ一発ずつ丁寧に打ち込んでいく。10分ほどでミミガルンを3匹仕留めることに成功する。


「ふう~、なんとかなったなぁ。さてサクラさんの援護にいかないとな~」


ダメージは受けていないものの、魔法具を使ったことによる反動でかなり疲労感があるがロストティコアと1対1で戦っているサクラを放っておくわけにもいかないので、急いで援護に向かう。

クヨウはサクラの援護へ向かい、現場を見て唖然とする。一言で言えば『レベルが違う』そんな思いをクヨウは抱いた。


「ハッ!・・・・ハァァァ!」

「ガァァァァ!!!」


ロストティコアは体に似合わない素早いステップと爪による攻撃、魔法も交えてひたすらサクラを狙い続ける。しかし、当たらない。サクラはそれ以上のスピードをもって回避し、攻撃する。サクラも無傷ではないが、かすり傷が体のいたるところにあるくらいだ。それに比べロストティコアは満身創痍で、翼も2枚切り落とされている。圧倒的であった。このときクヨウは初めてサクラの本当の凄さを知った。


「これって、援護いるのかな?」


援護攻撃するのが無粋に思えるように軽やかに戦うサクラを見ていると、まるで舞っているように見えてくる。クヨウが下手に攻撃するとサクラのリズムを崩しかねないような感じもしたが、何もしないという選択肢はありえない。薬莢を変えてクヨウは援護射撃を始めた。クヨウはロストティコアの動きを封じるために拘束用ではなく、あえて妨害用の薬莢を使った。魔法障壁はおかしなもので、攻撃関係は全て防ぐ。当然拘束も防ぐのだが、ゆるく体に負荷をかけるものは防がないのである。クヨウが使った妨害用の薬莢は、即効性はないものの、相手が気付かないような微妙な負荷をかける物である。ゆうなれば透明な紐を体に巻きつけるようなものだ。当然1発2発ではほとんど効果はない。しかし、10発20発と重ねるごとに少しずつ効果を発揮していく。気がついたときには強固な拘束具になっているという物である。


ロストティコアも最初はクヨウの出す音に警戒し注意をしていたが、風の紐など見えるはずもなく、まして何も効果がないと思えば牽制か、脅しと勘違いし無視するようになった。そして動きが鈍くなって初めて気がつくが既に術中にはまっている上に動きが鈍くなると、当然サクラの攻撃の回数も増していき尚更どうにもできない状態になっていく。そして、最後はサクラに首を落とされて絶命した。


「う~ん、本気で動いたのも久々ね。クヨウさん、援護ありがとう」

「いえいえ、あまりいらないような気もしたけどね」

「援護が無かったらもっと苦戦してたわ。クヨウさんは無傷みたいね、もう十分Aランクじゃない?」

「全部魔法具のおかげだよ、明日は筋肉痛が酷そうだ・・・」


次の日、クヨウは歩くのに非常に苦労したそうな。


後半はほとんどおまけです。

Sランクハンターは強いんだよ、ってことがわかればいいなぁと思ってます。


では次回をお楽しみに~

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