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第29話「動き出していた闇」

前回ギャグでしたので、今回は真面目です。


シリアスのほうが書きやすいかもしれません。

第29話「動き出していた闇」


「ん~、高く見積もっても200万というところですね」

「そんな・・・・なんとか500万くらいにはならないんでしょうか?」


それはある日のことだった。ある女性が1mくらいの像を買って欲しいと言ってきたのだ。一応美術品でそこそこ良い物ではあったが女性の希望額には程遠い金額である。


「うちでは、これ以上は出せませんね~」

「そう・・ですか・・・・わかりました。他を当たってみます。ありがとうございました」


女性はかなり落ち込んでいた。雰囲気も普通の状態ではないことは1目で分かる。サクラもその辺が気になっているみたいで、先程からこちらをちらちら見ていた。


「すみません、1つ伺ってもよろしいですか?話したくなければ話さなくてもいいですので」

「なんでしょうか?」

「どうしてそこまで、お金が必要なのですが?かなり切羽詰った用なのでしょうけど、雰囲気が普通じゃありませんでしたので・・・」

「多少なら相談に乗るよ、だから話してもらえないかな?」

「わかりました、お話しましょう」


女性はココロ・サムエルという名前で、郊外に弟と2人で暮らしていた。ある日、弟が誘拐されて身代金を要求されたのだ。1回目の要求金額はなんとか払えたものの、2回目になり桁が上がってしまい、なんとか家にあるものを売り払って都合をつけようとしていたところだったという。警備隊やギルドにも相談をしようとしたのだが、犯人から監視されているらしく相談をする直前に警告を受けたというのだった。


「なるほど、それだと相談もできないね」

「なかなかしたたかね、要所要所を押さえて心理的に通報できないようにしているのね。とは言っても今は監視されていないみたいだから大丈夫よ」

「貴方達にも迷惑をかけるわけにはいかないので、なんとか別の方法でお金を工面します」


ココロがそうはいっても、既に売るものもないし、当てがないのは見え見えである。クヨウはとりあえず、ココロに500万を渡して、弟をなんとか帰してもらうように言った。ココロも申し訳なさそうにはしていたものの、これ以上どうにもならないので後日返金すると言い、店を出て行った。


「よかったんですか?お金を渡しても弟さんが帰ってくる保証はありませんよ?」

「ん~?そこはね、手を打つから大丈夫」


そう言ってクヨウは店の奥へ入っていった。気がつくとサクラがいなかった。数分後、武器を持った状態でサクラが店に入ってきた。それと同じくしてクヨウも戻ってきた。


「僕とサクラさんで救出まではいかなくても、なんとかしてみるから店番お願いしますね」

「クヨウさん大丈夫なんですか?それに警備隊に連絡もしないと・・・」

「警備隊には連絡しておくように頼んだから、大丈夫」

「僕もこれがあるから大丈夫だよ」


サクラは一旦家に戻ると近所の子供に手紙を渡したのだった。警備隊へ渡すように・・と。それと、クヨウもただ犯人を追うわけじゃなく、隠密用マントを作ってあるのでそれで犯人を追跡するのだそうだ。


「へ~、それがこの黒いマントですか。見た感じは普通でけど?」

「でも~、裏にちゃんと~術式が~書いてありますね~」

「無理はしないから、大丈夫ですよ。それではサクラさん行きましょう」

「クヨウさん?ココロさんの行き先知ってるんですか?」


実はクヨウはココロに渡したお金に追跡用の魔法具の印をつけておいたのだ。勿論、ココロはそんなこと知らない。印は発信機のようなもので、クヨウが作ったもの以外は大陸上存在すらしていないのだ。


「相変わらず、クヨウさんの発想はすごいですね」

「ん~、これは前の世界であったものをこっち用に作っただけですよ」

「こんなのまであるんだ。まぁいいわ、行きましょう」


クヨウとサクラが急いで、印を追っていった。ついた先で、ココロがお金を持ったまま所在なさげにしていた。クヨウとサクラは多少離れた所で監視する。クヨウが作った隠密マントは存在感を無くす魔法具であるので、見えないことはないが、認識できないようになっているという物である。


しばらく待つと犯人らしき男が現れる。ミリアの想像通りココロの弟を渡すつもりはないらしく、なにやら揉めていた。結局男は金を持ちそのまま去っていった。ココロさんは流石にそのまま呆然としていたが、帰っていった。


「ココロさんに教えたいの山々なんですけどね~」

「確実に救出できるわけでもないから、言わないほうが懸命ね」


クヨウとサクラはすでに、犯人を追跡している。結構離れている上にマントで気付きにくいようにしているのでまず気付かれることはなかった。


「サクラさん、相手の実力のほどは?」

「大丈夫、あんなの何人いても敵じゃないわ。スピッドファイアを使えばクヨウさんでも楽勝よ。そういえば、クヨウさんは武器を何使うの?スピッドファイアじゃ音が大きいから、あまり使って欲しくはないんだけど」

「対策済みですよ、この手袋でいけます」


クヨウの手袋には手のひらの部分に膨らみがあった。魔力を流し発動させると衝撃が飛ぶというものである。ぶっちゃけて言ってしまえば、ワンピースに出てくる「インパクトダイアル」のような物だ。逆方向への衝撃がないのと、発動に魔力が必要、衝撃の吸収ができない等の違いはある。


「へ~、便利ね」

「漫画のネタ武器ですよ。とはいっても、当たり所が悪いと致命傷にできますけどね」


衝撃が出るだけなので、音は出ない。隠密用にはぴったりの武器であった。



しばらくして、犯人の男はそのまま森の中の小さな小屋へ入っていった。


「あんなところに、拠点が?」

「多分地下室があるのよ、逃げ道もあると思ったほうがいいわね」


特に見張りもいなかったので、警戒しつつ中へ入る。サクラの予想通り地下へ行く階段を発見し中へ入る。

クヨウは魔法具で周囲の人間の位置を把握しながら、進んでいく。いくつか通路があり、奥の方へ行くと何やら中でもめている様な声が聞こえている。残念ながら内容までは聞き取れないが、中を覗いてみると、立派な服を纏った男と犯人らしき盗賊が複数話していた。


「ん~、どうしようか?このまま突入・・・・ってサクラさん??」


サクラはクヨウのマントを掴んだまま震えていた。クヨウは驚く、何故ならサクラはSランクハンターなのだ。ユニークモンスターとも1対1で余裕で戦えるほどの実力がある。そのサクラが震えているのだ。


「クヨウさん・・・・あの、奥の・・・立派な服を着た男は無理よ。戦えば100%殺される・・・最低限SSランククラスの実力がないと、戦いにもならないと思う」

「!!!それは・・・・一旦逃げようか?」


2人が相談しているときに、立派な服の男は黒い霧に包まれて消えていった。

転移魔法をしようしたのであろう。周囲に気配は増えていないので、少なくとも周辺にはいないのが確認できた。


「どうしようか?今なら一網打尽にできるね」

「そうね・・・・あの男以外なら余裕よ。多分、奥の部屋にココロさんの弟さんがいると思うから・・・・私が突入して全員を気絶させます。クヨウさんは先に奥の部屋へ向かってください。もし、いけないようならスピッドファイアで盗賊の足止めをお願いします」

「了解」


そして2人はタイミングを合わせて中へ突入する。突然の事で驚いた盗賊は呆気なく全員捕まえられた。


「うん、余裕ね。あとは~奥のお宝を開放しますか」

「流石にサクラさんは強いね~、Sランクは伊達ではないです」


奥の部屋へ入ると、子供が数人牢屋に入れられていた。


「何人かいる・・・被害者はココロさんだけじゃないんですね」

「多分、奴隷として売り飛ばすつもりだったようね」


クヨウは魔法具を使い、レナリンスへ連絡する。レナリンスには予め通信用魔法具を渡しており、何かあったら連絡すると伝えてある。しかも、店には警備隊へきてもらうように子供を通じて連絡してあった。

すぐに、警備隊へ場所を連絡し、来てもらう。一応全員縄で縛った上に、電気ショックで気絶させているので逃げることはできないが用心をするに越したことはない。


しばらくまって、やってきたのは警備隊ではなく、先程の転移魔法で消えた男だった。灰色の紙で目が鋭く、余裕のある笑みを浮べている。が、どこか冷たく見えるそんな印象だった。


「ふむ、予想通りということか。君ら2人には感謝しておこう」

「あ、あなたは何者なの?そこらの雑兵じゃないわよね?」

「ああ、そう警戒しなくてもいい。私は素直に君らに感謝しているのだよ。こいつらには上納金を要求したのだが・・・まさか、誘拐等という手を使うとは思わなくてね。先程君らが見ていた時の口論がそれだよ」


男には全部お見通しだったらしい。しかし、妙な話だとクヨウは思った。こいつらは見た目からして盗賊だ。やることは犯罪以外ないだろう。そんなやつらに上納金を要求しても、犯罪以外で金を稼ぐとは到底思わなかった。


「そうそう、私が何者か・・だったね。私の名はアゲイン・ルイゼフという。一般に『魔王』と言われている者だよ」

「「!!!!」」


サクラはある意味納得する、勝てないのは当然だと。魔王は1人でも1国の軍事力に相当する実力の持ち主だと言われておりSランクのサクラには勝てるはずもない。ランクで言えばランク最高のSSS以上だ。


「安心したまえ、ここでは君らには感謝していると言ったであろう?今君らに危害を加える気はない」

「じゃあ、いくつか質問したいんだけど、答えてもらえます?」

「内容次第だな。もっとも大抵の事は答えよう。時間制限があるみたいだから、それまでだがな」


クヨウが呼んだ警備隊が来るまでは数分の時間がある。それまでということだろう。


「一つ目・何故彼らに、上納金を要求したの?魔王って通常はこっちの大陸にはこないんでしょう?お金を欲しがるとは思えないんだけど」

「簡単なことだよ、彼らは実のところ盗賊ではない。商人崩れと言った方がいいかな?まぁあまり変わらないが。彼らは僕が作った組織の傘下に入りたいと言ってきたんだ。そこで上納金を要求したんだよ。それが済めば彼らは僕の作った組織の末端になったわけだ」


アゲインは恐ろしいことをサラッと告白した。それは『魔王が組織を作った』ということである。しかも、口ぶりからしてかなり大きい組織を。はっきり言ってしまえば国際的な問題になる。下手すれば戦争にもなることであった。


「随分簡単に言うわね」

「別に私からしてみれば隠すことでもないんだがね」

「二つ目・貴方の目的は?」

「ふ~む、短的に言ってしまえば、そうだな暇つぶしだよ。娯楽といってもいいかもしれん。魔王というのは存外暇なものでね。その一環だよ」


3つ目の質問をしようとしたとき、警備隊が近づいて来るのがわかった。魔王も同じく気がついたらしくため息をしていた。


「そろそろ時間切れだ。楽しい時間というものはこうも短いのか・・・・まあよい、存外楽しめたので良しとしよう。所で私からも1つ答えてもらおう。難しいことはない、君らの名前を聞かせて欲しい」

「クヨウ・キサラギ」

「サクラ・イザヨイよ」

「ふむ、しかと覚えておく。ところで君ら、私の仲間にならないかね?幹部の地位を約束できるがどうかね?」

「お断りさせていただきましょう。今の仕事は気に入ってますので」

「私も、あなたのところへ行く気はないわ」

「そこは予想通りか、残念だが仕方があるまい。では私はこれで失礼する。また会おう」


アゲインはそのまま転移魔法で消えていった。残された2人は椅子に座り込んだ。2人にはかなりのプレッシャーが掛かっていたのである。しかも、相手に命を握られている状況だ。流石のサクラもひどく疲れていた。


そのまま、まっていると警備兵が来て、犯人たちを連行していき、誘拐されたと思われる子供たちは保護された。


こうして、誘拐事件は終わったが、幕はまだ上がったばかりであった。


初魔王登場~~。


見た目はぶっちゃけると貴族っぽい男性です。魔王なので種族はあまり関係ありませんが、見た目は人間と同じです。


では~、次回をお楽しみに~。



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