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第22話「旅行事情その7」

今回は若干長くなりました。


しかも終わらない・・・

「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」


走る!走る!走る!決して後ろを見るな!振り返るな!アレはまずい!そう自分に言い聞かせて女性は走る。後ろから奇声をあげ迫ってくる塊からなんとしててでも逃げ切らなければならない。自分を助けて散っていった仲間のためにも・・・

しばらく走り、ようやくアレを振り切りひと段落する。夜だから周囲は闇、今日は新月みたいでかなり暗い。ところどころ家の明かりで道が見えるが、それでも暗い。


「そうだ、警備隊の本部へいこう」


警備隊なら何とかしてくれる。そう思い先へ進む。そして警備隊の本部に入ろうとしたときに、ふと窓から中を覗くとそこに広がっていたのは・・・・






警備隊の変わり果てた無残な姿であった・・・・


「キャーーーー!!!」


そして逃げようと振り返るとそこにはかつての仲間が・・・いや仲間だったモノがいた。

そう・・・・







全身気持ち悪いぐらいの筋肉を纏ったクヨウ達がいた!






「いやぁぁぁぁーーーー!!!!」







ミリアが目を覚ますと、そこはベットの上であった。


「夢・・・か・・・・あ~~~よかった~~~~」


本気で泣きそうになり、横のベッドをみるとレナリンスも「筋肉が~・・・」とうなされていた。




第22話「旅行事情その7」


7日目


朝食時、クヨウ達の体調は絶不調だった。ミリアは若干トラウマ気味かもしれない。4人全員悪夢をみるほど凄まじい昨日のできごとをすっぱり記憶から消去し、今日を生きようと心に決めるクヨウ達であった。


朝食後、部屋に戻りまた何処の会場に行くか相談する。流石にもう、無計画で会場に入るという恐ろしい行為はできるはずもなかった。


「あ~そういえばぁ~、私これが見てみたいですぅ~」

「ん?どれだ?」

「このターゲットクラッシュってやつ?」


ターゲットクラッシュとは1対1の決闘から複数人のサバイバル、物理から魔法まで対応しているスポーツである。1対1の場合は2人を3mほど離す。2人の前に枠を作りその中が攻撃可能範囲とする。枠の外への攻撃は減点になる。(枠の形状は円形や方形がある)あとは色々な方向からディスク状の的を飛ばし、多く壊せたほうが勝ちになる。攻撃方法は魔法と物理攻撃のどちらでもよく相手への直接攻撃はなし。ただし、相手が的に飛ばした攻撃への妨害はあり。


「へ~、でもさこれって魔法が断然有利じゃない?」

「それが~、そうでもないんですよ~」


素人考えだと魔法が有利に思える。弾数の問題や発射が楽だからだ。しかし、上級者だと考え方が変わる。1戦で的の数は決まっている。弾数はそれに合わせれば良いし、的が出てくるタイミングもバラバラで連続発射されるわけでもない。それに極めると物理攻撃の方が速度がでるのだ。魔法はある程度速度が固定される上に、誘導弾は弾速が遅くなる。空中に待機する魔法は相手に打ち落とされるだけなので意味がない。弾速重視の魔法にすると結局物理と大して変わらず、無詠唱じゃないとお話にならないのだ。


「学園の時に聞いたことがあるんですけど、数十年前のターゲットクラッシュは指弾で優勝した人もいるとか・・・」

「そいつは間違いなく人じゃないな」


そんな化け物もどきはともかく毎年高度な射撃戦になるが、手段はかなりバラつくスポーツである。なかなか面白そうであるということで観戦することに決定し、宿を出る。


会場はすでに混雑しており、立ち見でしか見れなかった。舞台中央に選手の立つ場所があり、周りは池になっている。的を射出するための魔法具が各所に設置されており、射出場所は公平を期すためパターンはあるが、直前に決められる。観客席は全てシールドされており、余程のことがなければ観客席に危険はない。


「ん~、思ったよりもかな~り広いね」

「想像以上だったな。でもさ、これくらいないとできないってのもあるな」


午前中は予選が何試合も行われ、4人1組の1人勝ち抜けで行われる。各選手、それぞれ違う武器を持ち、色んな方法で的を落としていく。中には刀で斬撃を飛ばすものや、ブーメランみたいに武器を飛ばし、手元に戻す選手もいた。結局無駄が多すぎて負けてはいたが。


「クヨウさんもこれなら良い線いけるんじゃないですか?」

「あ~、スピッドファイアね。速度と威力は問題ないけど、僕の命中率がね~」


クヨウは魔法具で命中精度を補正しているが、それだって100%になるわけでもない。大会に出ている選手は的になら100%当てて当たり前のような連中だ。勝てるわけもなかった。


「そこはほら、練習で」

「ん~、僕はあまり競技とか苦手だから無理かな~?」

「男ならそこで『頑張る』の一言もいえなきゃね~」

「え?」

「はろ~、みなさんお元気~?」


ふと横をみると、そこにはサクラ・イザヨイがいた。サクラもこの競技は結構好きらしく楽しみにしていたのだ。それと刀で斬撃を飛ばす選手が知り合いらしく、様子を見に来たということらしかった。


「あ~、さっき負けたよな、その人」

「あ、やっぱり?どうせ勝てないだろうな~とは思ってたんだけどね。まぁここまでこれただけでも凄いとは思うけど」


競技をみつつ雑談をする5人。そこへ、サクラ宛にバンガードからの連絡が入る。この中心都市「リーブラ」の近くにユニークモンスターが複数目撃されたとの情報が入ったのだ。大会でパニックを起こされると大混乱になりかねないので、ギルドから優秀なハンターで即時討伐して欲しいとの依頼がきていた。バンガードも大会の出資者の1人なので、無用な混乱を避けたいらしくサクラに協力要請をいれたのだった。


「厄介ねこれは」

「どうしました?」


サクラはクヨウ達を会場から連れ出し、事情を話す。クヨウ達も同じ思いであるので協力を決めてギルドへ急ぐ。移動中にサクラはクヨウ達の戦力を簡単に把握することにした。


「じゃあ、正面から戦えるのはレンヤ君だけね」

「俺もミリアちゃんの補助がないときついけどな」

「ううん、それでも十分。他の人だって援護があれば結構違うものよ」


いくら1対1で戦えるSランクハンターとはいえ、簡単に倒せるわけでもない。しかも、場所が特定できていないのでどうしても人手は必要になってくるのだ。クヨウの探知系魔法具ほどの高性能アイテムはそうあるものでもない。


「人数にも依るんだけど、最悪みんなバラバラで他のハンターの補助へ行ってもらうことにもなるかもね」


レンヤ以外はDとEランクである。補助や援護しか期待できないのは当然であった。ギルドへ到着すると、すでに複数のハンターが待機しており、その中にはフドウもいた。


「サクラか、遅かったな」

「場所が場所だけにね、時間かかっちゃたのよ」

「フドウさん、こんにちは」

「クヨウ殿か、昨日ぶりだな。あと30分後に集まったメンバーで簡単な打ち合わせを行うらしい。それとクヨウ殿、バンガード殿からこれを預かっている。受け取って欲しい」


フドウから受け取ったものはバンガードがお礼として作ると言っていたミスリル製の薬莢であった。まだ術式が彫ってはないので属性変換はできないが、魔力を込めて発射するだけなら能力付加だけでできる。この状況で必要になるだろうと、バンガードが早目に渡して置くように伝えていたのだった。もっとも、まだ2個しか完成していない。


「フドウさんありがとうございます。これで少しは役に立てそうですね」


相手次第では以前の薬莢でもいけるが、保険ができたのは大きかった。時間が少し空いてたので、用心のために以前作った魔力爆弾を3人に渡しておく。


「それにしても、今回は急な話ですね」

「確かにな。あり得ない訳でもないんだが、不自然なのは確かだ」

「魔王でも攻めてきたんじゃないの~?」

「大陸中央まできたのなら、ユニークモンスターを大勢連れてくるだろう。複数しか目撃情報がない、ということは数匹いるだけで大勢ではないということだ」


ユニークモンスターは瘴気の濃い場所に出現する、逆に言えば瘴気が濃くなければ出現しないのだ。ガチンコ連合国周辺で瘴気が濃い場所などなく、あるとすれば突然出現する瘴気噴出しかない。しかし、それはかなり稀な出来事であり、それにより必ずユニークモンスターが発生するわけでもないのだ。

そして、魔王とは大陸南部の『闇の島』と呼ばれる瘴気に覆われた島にいるとされている。出生は不明であり、瘴気に犯された魔物に対し、絶対的な命令権をもつ。魔王自体は人間に対しあまり干渉してこない、もっとも理由は定かではない。なので稀に攻めてくる魔王もいて、年単位での戦争状態へ陥ることがある。しかし、ここ200年以上攻めてきた魔王はいない。


「自然発生した瘴気噴出が原因っぽいですね~」

「不自然なのだが、それが一番自然ではあるな」


結局、いくつかの瘴気噴出が同時に起こりユニークモンスターが生まれたという予想で落ち着いた。


「う~ん~、緊張しますね~・・・・なんだか、眠たく~・・・なってきましたね~」

「リンスちゃん、それ絶対緊張していないだろう」

「私たちはどの道援護くらいしかできないからね、緊張しても仕方がないわよ」


しばらくしてから、ギルドと警備隊の偉そうな人がやってきた。今回のメンバーはSSランクが1人、Sランクが4人、Aランクが11人、B~Eランクが15人であった。なのでチームとしては、SSランクは1人。Sランク1人にB~Eのメンバーが3、4人つき、Aランクが5人と6人に分かれる。合計7チームになる。


警備隊の予想では4体とみてはいるが、取りこぼしの無いように7チームになった。すでに警備隊の斥候が出ており、詳しい位置を探っている最中である。目撃情報があるのは「キングゴブリン」「クイーンアント」の2種類のみ。どちらも手下を多く連れていることが多く、時間をかけると厄介な相手である。


チーム分けができたところでそれぞれ警備隊に案内され建物を出て行った。

クヨウはサクラのチームに配属された、他のメンバーとは違うチームである。




クヨウの配属されたチームは以下のメンバーである。


チームリーダー:S-サクラ・イザヨイ 

メンバー:D-クヨウ・キサラギ

    :B-カズィ・ククルック

    :C-リリン・オルマス

    :B-アイン・コートス


「とりあえず、自己紹介くらいしておきましょう。私はSランクのサクラ・イザヨイよ」

「僕はDランクのクヨウ・キサラギです」

「僕はBランクの・・・カズィ・ククルックです・・・」

「Cランクのリリン・オルマスよ。よろしくね」

「Bランク・・・アイン・コートス・・です」


全員自分の武器や得意なことを紹介し、それぞれ役割を確定させる。とはいっても、相手や状況次第で臨機応変に対応しなくてはならないが、それはサクラが指示することになる。


「とりあえず、全員私の意見には従ってもらうわよ。死にたくなければね」


すこ~し、殺気を滲ませ本気である事をわからせる。一応全員ちゃんとしたハンターなのでその辺りは弁えてはいるが、たまに変なのがいたりもするので半脅しをやっておく。全員うなずいたところで、警備隊の斥候が戻ってきた。


「報告します、ここより街道沿いに5kmほど行ったところの森にクイーンアントを発見しました。すでに巣作りを開始している模様です」

「ちっ!速いわね、となるとすでに兵隊はいるか・・・わかったありがとう。他のチームへ応援を要請してもらる?単純に人手が足りなくなるかもしれないから」

「わかりました!御武運を!」


状況は若干悪くなっている。クイーンアント相手なら1対5で挑めればそれほど苦労しないのだが、クイーンアントの嫌なところは兵隊を生み出すところにある。無論限度はあるが、1匹1匹は通常モンスター並みでもかなりの数を生む。発見からすでに2時間ほど経っており、すでに40か50くらいは生まれているだろう。労働力の確保が必要だからだ。

急ぎ馬に乗り、出発する。そして30分程して森につくとすでに巣がある程度できあがっていた。クイーンアントは土を使って山のような巣を作る。まだこれでも小さいほうだが、すでに高さが4mほどあった。


「ちょっと時間がかけすぎたわ」

「サクラさん、僕はすでに射程圏内ですけど撃っていいです?」

「うん、お願い。カズィさんとリリンさんもお願いします」


カズィとリリンが詠唱にはいると同時に、クヨウはスピッドファイアを取り出し連射する。ユニークモンスターならともかく、通常の雑魚モンスター相手なら遅れは取らない。

他の4人は見たことも無い武器と攻撃、ついでに音に驚いていた。


「へぇ、良い武器ね。これなら雑魚の掃討は任せれそうね」


数匹死んだところで、クヨウ達を敵とみなし、兵隊達が向かってくる。そこをカズィとリリンの魔法で一掃する。そしてその攻撃の取りこぼしをクヨウが狙撃する。


ここは3人でもいけそうだと判断し、サクラはアインを連れて少々迂回しながら森へ入る。

そして3人は見えている範囲は駆逐したところで、森へ移動する。


「クヨウさん、Dランクって言ってたけど、結構実力あるじゃない。隠してたの?」

「いえいえ、僕の本業は道具屋ですから。ハンターはおまけ程度の事しかしてませんからDなんですよ」

「あら、そうなの?それにしても良い武器ね、何処で買ったの?私も欲しいなそれ」

「これは師匠に作ってもらった物ですから、僕ではどうにも」

「僕も・・・欲しいな~」


やはり高評価なスピッドファイアである。とりあえず、今はその話を置いておき、サクラの援護へ向かう。所々で出てくる兵隊を倒しながら、かなり広い場所へでた。そこではサクラとクイーンアントが戦っており、アインは周りの兵隊を始末していた。


サクラの武器は白刀「此花咲夜」というオオヤマ国でも上位に入る刀である。刀は大まかに分けると3種類あり、『常刀』『白刀』『黒刀』がある。『常刀』は普通のバランス型であり、『白刀』は軽くて柔らかく、『黒刀』は重くて硬い。『白刀』は斬撃の鋭さを求めたものであり、柔らかいのは脆くしないためである。


サクラの一撃は速過ぎてクヨウには見えない。残像として流れるような白い軌跡が見えるくらいだった。しかし、その白い軌跡は綺麗だった。3人は一瞬その輝きにも似た白さに見とれる。サクラはオオヤマ国で一般的な『心刀流』の免許皆伝の実力を持っている。特に斬撃の鋭さは歴代でも上位にはいるといわれているくらいだ。



そのサクラはというと・・・・


「しっつこいわね~!!!」


悪態をついていた、流石にサクラが強くてもクイーンアントもただではやられなかったからだ。しかし、時期終わりが来る。苦戦しててもサクラはほぼ無傷、クイーンアントは致命傷をさけることしかできなかった。そして・・・


「もらった!心刀流『断』!!」


クイーンアントの一瞬の判断ミスをつき一刀両断にする。そして真っ二つにした後その場から飛び退く。そこへクヨウ達が遠距離攻撃を一斉掃射しクイーンアントを蜂の巣にした。


「うん、みんなご苦労様~」

「流石はサクラさんといったところですか・・・ユニークモンスターと1対1で無傷なんですね」

「何言ってるの!ここ見てよ~擦り傷できちゃったのよ~!乙女の肌に傷がついたんだから無傷じゃないわよ!」


本人は気にしているが、周りは気にするはずも無い。普通ならそんなものじゃ済まない。とはいえ、クイーンアントを倒し一旦情報を貰いに町へ戻ることにした。まだユニークモンスターがいるかもしれないからだ。

そしてこの騒動がこれで終わるはずもなかった。


つづきます・・・・


心刀流はオオヤマ国では一番主流な剣術です。

ちなみにフドウも同じ設定です。


では~次回をお楽しみに~

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