第18話「旅行事情その3」
マッジーナ選手権の種目も大体まとまりました。
ふと気がつくと1話毎の文章が徐々に長くなっているような?最初が短かったというのもあるですけどね。
フドウの名前が?のままでした。
第18話「旅行事情その3」
5日目
昨晩はかなり豪勢な夕食になった。フェンリル討伐のお金がかなりの額になっていたので少しくらいの散在は問題ではなかった。そのほかにも食道楽や買い物などかなり楽しんでいた。そして今日、討伐隊からの早馬がきて、安全宣言がだされたおかげで、クヨウ達は気兼ねなく出発した。
そのころミントのギルドでは、早馬できた兵士から細かい情報がもたらされていた。たまたま居合わせた2人のハンターもその情報を聞いていた。その2人とは数少ないSランクハンターであり、人間と竜人のペアである。人間の名前はサクラ・イザヨイ。竜人の名前はフドウ・カグツチという。
オオヤマ国とは大陸の東南の険しい山岳地帯にあり、人間と竜人が作り上げた少数国家である。場所が場所だけに戦争時には鎖国状態になり独自の文化が発展したりもしている。また武術に力を入れており、『刀』という独自の武器を使い1人1人がかなりの腕前でもある。基本的に中立国であるので、どこかに干渉することはない。現在でもある程度の交流があるとはいえ行き来には不便な場所でもあるので若干閉鎖的な国でもある。この国の若者はある年齢になると、旅をして無事帰ってくると始めて一人前として認められるという風習がある為、修行として旅をすることも多々ある。この2人も修行のために旅をしていた。ハンター家業は「ついで」ではあったが、実力が認められSランクハンターになった。
ちなみにSランクハンターは大陸中を探しても、数十人しかいない。一時期人間種には不可能であるとされていたこともあったが現在5名の人間のSランクハンターがいる。その中の1人がサクラである。ほかのSランクハンターは竜人やエルフなどである。SランクハンターとAランクハンターには大きな壁が存在する。Sランク以上は完全な実力主義であり、どれだけ依頼をこなそうとも実力がなければなれるものではなかった。ユニークモンスターもSランクハンターならば1人で討伐が可能であり、ハンター達の憧れでもある。
サクラとフドウは兵士の情報聞いていると引っかかりを感じていた。原因はフェンリルの死因だった。ナイフが額を貫通し、脳に刺さったのが原因と討伐隊はみていた。実際それは正しい、しかし、問題が1つある。一体誰がそれを実行できるのか、と。
動物にとって額は急所の1つである。だからこそ、そこにナイフを突き立てるのは生半可なことではない。相手の真正面から攻撃しなければならない。故に奇襲ではまず不可能である。
しかも、相手はユニークモンスター「フェンリル」である。元が犬であるために、身体能力が高い上に知能があるため、できるとは思えない。サクラやフドウなどのSランク以上のハンターなら可能であっただろう。しかし、現場にはA~Dランクハンターしかいない。そのAランクハンターがSランク並みに強い可能性もあったが、あまり現実的ではない。
そうなるとナイフに何か特別な能力があったかもしれない。しかし、フェンリルが死んだ後に砕けているところを考えるとあまりいいナイフではない。そんなものに、そこまで特別な能力をつけるとも思えない。
考えれば考えるほどに、サクラとフドウは泥沼にはまっていった。
「あとは、討伐した本人達に聞いてみるほうがはやいな」
「そうだね~、幸い彼らが出発したのは今日の朝みたいだし。目的地も同じだから追いつけるっしょう」
そこまで気にする問題でもなかったが、「答え」が近くにいて移動方向も同じなら聞いてみようと2人は考えていた。
そのころクヨウは新しい魔法具にチャレンジしていた。レナリンスとミリアには能力のことを話したので、特に隠す必要もなくなったからだ。もう無いとは思うが、このままフェンリルのようなモンスターにこられたら次は勝てるとは思えなかったからである。
「ん~、やっぱり難しいね。流石にそう簡単にはいかないか・・・」
「あれほどの~、魔法具は~まだ無理ですかぁ~」
クヨウとレナリンスは首を傾げつつ、新しい能力を考えていた。目標は「てっとり早く能力をつけれて、フェンリルクラスにも効果があるもの」というなんともお粗末な内容だった。
「あはは~、そう簡単にはいかないですよね」
「ん~、やっぱり前から考えていたものを作ってみようかな。それが現実的だ」
「あれ~?何かアイデアがあったんですかぁ~?」
クヨウが以前から考えていたもの、それはスピッドファイアの威力を上げるための物だ。今のスピッドファイアだと戦えてもマジックモンスタークラス、とてもユニークモンスターと戦えるだけの火力は無い。それは先のフェンリルが証明している。もっとも、もう戦うことは無いとは思うが、今回も偶然の遭遇だったことだし、1度ある事は2度あるかもしれない。ということで戦わないにしても抵抗手段くらいは用意しておく必要性はあった。
「クヨウさ~ん、それが終わったら私にも何か作ってもらえませんか?正直フェンリルの時は何もできないに等しかったし・・・・」
「ミリアさんには補助魔法で助かったけどね~、あれがなかったらレンヤも危なかったし」
「私も~同じようなものですよ~」
ミリアは流石に主戦力になれるとは思わないが、せめてまともに援護くらいはしたいとフェンリルとの戦いから純粋に思っていた。
「そうだね~、それじゃあ何か考えておいてよ。僕も考えておくけどね」
「じゃあ~私にも~作って欲しいです~」
ミリアがいいなら私も~とレナリンスが強請り始める。結局レナリンスにも作ることになり、嬉々として武器と能力を考えていた。そのとき、後方から急接近する反応があった。
「レンヤとまって!何か後ろからくる!」
「なに!?」
敵意はなかったが、流石にありえないスピードで迫ってくるので警戒は必要であった。クヨウが眼鏡で確認すると、竜人が1人、背中に人間を背負って走ってきたのである。
「あ~、なんだろう?あれ」
「「「は?」」」
危機感のないクヨウの発言に悩む3人。とりあえず危険がなさそうなので、警戒を解く。
そして4人と馬車の目の前で竜人は急停止した。
「こんにちは!ちょっとお尋ねしたいことがあるんですがいいですか!?」
「サクラ・・・・声がでかい」
竜人に背負われた人間というなんともいえない状態に呆然とする4人であった。クヨウはとりあえず話をすることにした。
「ん~、ご用件はなんでしょうか?一応聞いておきますけど盗賊の類ではないですよね?」
「ひどいな~、こんな可愛い盗賊なんているわけ~・・・それはそれでありかも!?」
「何を阿呆なことを言っているサクラ?すまんな、悪気はないんだが」
一人で場を引っ掻き回すサクラと呼ばれる女性に額を押さえる竜人、クヨウ達は思う「こいつら一体なんなんだろう?」と。
「あ~、おほん!気を取り直しまして・・・ああ自己紹介がまだでしたね。私はサクラ・イザヨイです。こっちが竜人のフドウ・カグツチですよ~」
「あ、ご丁寧にどうも。僕はクヨウ・キサラギ。こっちがレンヤ・アオイ。後ろの2人が・・・」
「ミリア・カーディナルです。よろしく」
「レナリンス・エンプレスです~、よろしくぅ~」
自己紹介を順次済ませ、本題に入る。クヨウにとってはあまり聞かれたくないことであった。
「よろしく~。では単刀直入に聞きますけど~、貴方たちがフェンリルを倒した一行ですか?」
急にサクラが真面目になり場の雰囲気が変わる。思わずレンヤが構えを取るが、その瞬間相手との実力差を実感する。
「そう警戒しなくてもいい。我々は別に危害を加えるために来たのではない」
「では何をしにきたんですか?」
クヨウが訝しげに聞く、クヨウも2人との実力差は実感している。今のこの場で敵対すると100%勝てないであろう事を理解していた。
「単純に聞きたいだけですね。一体どうやってフェンリルを倒したのか?・・・と」
「死因は調べてないんですか?」
「討伐隊の方が調べましたよ。死因は額から脳へナイフが貫通したことによる刺殺ですね」
「では何故そんなことを改めて聞く必要があるんですか?」
クヨウは2人の聞きたいことは既に分かっていたが、遠まわしに勘違いしているように聞く。時間を稼いで何とか誤魔化そうと思ってはいるが、2人には感づかれていた。
「死因はどうでもいいのですよ、私が聞きたいのは「どうやって倒したのか?」ということです。言い方を変えると「どうやってフェンリルの額にナイフを刺したのか?」ということですよ」
「・・・ノーコメント・・・ですね」
「ふむ、やはり何か特別なことをしたのだな」
フドウがそういうと2人は力を抜く、それは別に細かい内容を知ろうとは思っていなかったからだ。ハンターとして活動していれば隠し玉の1つや2つは持っているもの。実力者ならそれは当然である。しかもそれはあまり他人には知られたくないものだ。だから細かい内容を聞くつもりはなかった。ただ「隠し玉がある」ということがわかったなら上出来である。
「できれば内容を知りたいが、知られたくないことを聞き出すほど野暮ではないよ。我々はただ情報通りだと少々納得がいかなかっただけだからな。脅すような真似をしてすまなかったな」
「その通り!でも~・・・本当にダメかな!?できれば知りたいな~とも思ってるだけど~・・・ギャッン!」
サクラが目を輝かせて聞き出そうとして、フドウが鉄拳にて止める。すでに「聞くつもりは無い」と言っているのでフドウはサクラの暴走を止める。
「サクラ、このまま聞き出そうとするのは野暮だぞ」
「え~、だって知りたいじゃ~ん?・・・OKOKわかった、もう聞きに行かないから・・・だからその拳を解いて~~~!」
焦るサクラにうんざりするフドウ。さっきとはまるで雰囲気が変わり着いていけてない4人は苦笑いしかできなかった。
2人のコントが終わり、特に急ぐ用事もなかったが、流石にあの遣り取りの後に仲良く旅をする雰囲気にもなれなかったので2人は先に進んでいった。
「まるで嵐のような人達でしたね・・」
「良く分からない人達でしたねぇ~。クヨウさんとぉ~レンヤさん~大丈夫ですか~?」
突然座り込む2人にレナリンスとミリアは驚く、2人は汗だくであった。
「ねぇレンヤ?あの2人と戦って勝てる?」
「無理だろう、つーか戦いにもなんねぇよ」
「だよね~、世の中あんな化け物もいるんだね~」
2人の会話にミリアとレナリンスは驚く、そこまで実力差がある相手だとは思わなかったからだ。クヨウとレンヤは、サクラとフドウの殺気を浴びていた。しかしミリアとレナリンスには殺気が向けられていなかったため、多少の圧迫感しかなかったのである。
レンヤは自戒する。それは自分が心のどこかで自惚れていた為である。竜人の2~3倍の身体能力をもったとしても技術がなければ意味が無いと実感したからだ。また自分には圧倒的に経験が足りない事も悟る。
「そのうち、旅に出てみようかな?」
レンヤの呟きは3人には聞こえていなかった。
その頃、先を行く2人は・・・
「やるとしたら、キサラギって人かな」
「そうだろうな。アオイのほうおそらくパワータイプだからな、流石にナイフは使わないだろう」
「後ろの2人はちょっと残念だけど力不足だね。同じ女性とはして頑張って欲しいんだけどなぁ~」
「しかし、クヨウ・キサラギとレンヤ・アオイ・・・か。名前からして同郷か?」
「どうだろう?名前はそんな感じなんだけど、雰囲気が違うね。それにキサラギのほうはともかく、アオイをあんな未熟な状態で旅出すとは思えないよ」
「そうだな・・・。まぁいい、縁があればいずれまた会う事もあるだろう」
2人はそのまま、ガチンコ連合国中心都市「リーブラ」を目指す。そして、思いのほか早く2人はクヨウ達と再会することになる。
異世界系では日本っぽい国はかかせませんよね?
そろそろマッジーナ選手権をやっている都市に到着の予定でございます。
では次回をお楽しみに~