第10話「新しい従業員 その4」
まだ新しい従業員は続きます。レナリンスを天然っぽく喋らせようと色々試していますが、なかなか難しいです。
今回レンヤは出番なし!出したら話が収拾つかなくなりそうで・・・
第10話「新しい従業員 その4」
「ここがリュミエールね。ちょっと楽しみかも」
「ん~、制服姿のあの子も楽しみね~」
道具屋リュミエールの前に2人の女性が立っていた。ことの始まりは数日前のことである。
その日、エンプレス家で3人の女性が食事をしていた。
長女:レナリアス・エンプレス
次女:レナリリス・エンプレス
3女:レナリンス・エンプレス
周りからは女帝3姉妹とも呼ばれている美人姉妹であった。
「そういえば、リンスちゃん。前にどこかに面接に行ってなかったっけ?結果はどうだったの?」
「あ~、そ~いえばお姉ちゃん達には言ってなかったねぇ~。え~と~、受かったよ~」
「え、ほんとだったの!?リア姉さんの冗談じゃなかったんだ」
「リリちゃんも酷いな~、リンスちゃんを使って冗談は言わないよ~」
「じゃあ、今度お祝いしないとね~」と姉であるレナリアスは喜んでいた。しかし、もう1人の姉であるレナリリスは不満顔であった。
「む~、リンスちゃんとも一緒に教師がしたかったな~。あ、でもどうして今更就職する気になったの?学園を卒業してからは魔法具の研究一筋だったのにさ」
レナリリスが言った学園とは、アルカディアス国立総合技術学園のことである。
「武術も魔法も道具も技術の1つである」という理念のもとに設立された学園であり、性別は元より種族を超えて生徒を募集している。おかげで大陸一の学園と呼ばれるほどに大きくなった。通称『学園』と呼ばれており、武術科・魔法科・道具科がある。
3姉妹は全員ここの卒業生であり、レナリアスは武術科、レナリリスは魔法科、レナリンスは道具科を卒業している。卒業後の進路は自由であるので、レナリアスは武術科、レナリリスは魔法科の教師になった。レナリンスだけは家で魔法具の研究をしていた。
「理由?店長さんにぃ~、興味があったからですよぉ~」
それを聞いた瞬間にレナリリスの目が一瞬で輝いた。
「もしかしてリンスちゃん初恋!?店長さんって可愛いの?かっこいいの?もう誘惑はしたの!?」
色恋沙汰が大好きなレナリリスであった。見た目のスタイルも良い上に、思わせぶりな行動をとったりする為、学園では一部からはエロ教師とも呼ばれ、口説かれた数が学園一と有名である。また、彼氏と言う名の下僕が複数人存在するとも言われているが、それは謎につつまれている。それでも教師としては男女問わず評価も人気も高かった。
「もし可愛くて興味ないなら私が食べるわよ、なんなら一緒にヤル?」
・・・・・これでも一応教師である。
「気後れしてるの?大丈夫、リンスちゃんが迫ったらイチコロ(死語)だから!最悪襲って既成事実を作っちゃえばいいのよ!私も協力するわよ!むしろ私も混ぜなさい!」
・・・・・こいつ本当に教師か?
暴走気味に迫ってくる姉をレナリンスは「リリお姉ちゃんは変わらないなぁ~」と、どこか他人事のようにのんびり眺めていた。
「はいはいはいはい、リリも暴走しない、リンスちゃんもわざわざ煽る様な言葉を使わないの。リンスちゃんの「興味がある」ってそういう意味じゃないでしょう?」
「あははは~、リリお姉ちゃんを眺めてると楽しくてぇ~、ついつい~ね~」
「う~ん、相変わらずリアお姉ちゃんもリンスちゃんもつれないなぁ~。で、結局興味っていうのはどういうことなの?」
「それはですねぇ~あの店長さんがポーションを作ったんですよぉ~」
レナリンスは道具科の卒業生である。しかも首席で卒業したくらいなので道具に関しては知識はかなりある。魔法具に関しては十八番で研究し、良い物ができたら売るということをしていた。そこへクヨウがポーションを売り出したのだ。試しに買ってみてその効果の高さにレナリンスは驚いたと同時に自分への挑戦だと勝手に解釈する。当初は特許商品ではなかったため、素材やレシピは非公開なのである。当然レナリンスは解析を開始した。
結果は惨敗。特許商品化による素材とレシピ公開によるタイムアップだった。学園を首席で卒業した事には少し誇りを持っていたが見事に霧散してしまった。それと同時にポーションを作った人に興味を抱いていた、そこへ従業員の募集がきたので応募したのだった。
「へぇ~、面白そうね。ねぇリリちゃん、今度見に行こうか」
「あ、いいねそれ。リンスちゃんを凹ました人には興味あるし」
そして、今に至る。ちなみに今日来ることはレナリンスには内緒である。
そして2人は意気揚々と中へ入っていった。
「いらっしゃいませぇ~・・・お姉ちゃん?」
「はぁ~い、その制服可愛いわねぇ」
「リンスちゃんが御執心なカレはどこ?」
今はレナリンスが1人で店番をしていた。クヨウは奥で魔法具を作っていた。
「あらそうなの?じゃあ呼んだらお邪魔かしら?」
「え~とぉ、大丈夫ぅだと思うよぉ~ちょっと待ってねぇ~」
レナリンスは奥に入っていき、クヨウを呼んできた。クヨウは姉妹を見ると少し驚いたようだったが、すぐに落ち着く。
「いらっしゃいませ~、僕に何か御用でしょうか?」
「御用っていうほどじゃないのよ、っとその前に自己紹介がまだだったわね。私はレナリアスで、こっちが妹のレナリリス、今日は妹がお世話になってるからその挨拶にね」
レナリアスはウィンクしながら答える、その横ではレナリリスがクヨウを値踏みするように眺めていた。
「ご丁寧にどうも。僕はクヨウ・キサラギといいます。こちらこそお世話になっていますからね、お構いなく。ところでそちらのレナリリスさんは何故僕を睨むのでしょうか?」
若干怯えるクヨウであった、レナリリスの目が徐々に獲物を見つけたような目に変わっていったからである。
「ふ~ん、ちょっと眠そうな目が減点かな~、いやでもあれはあれで・・・・」
「あ~リリちゃんのことは放っておいていいわよ、貴方のことを気に入ったみたいだからね」
ブツブツと呟くレナリリスをとりあえず放っておいて話を進めることにしたレナリアスであった。
「貴方のことはリンスちゃんから聞いてるわ、あのポーション創ったそうじゃない。あれを再現できなくてリンスちゃんが凹んでいたのよ」
「ん~?リンスちゃんが再現??」
「あれ?リンスちゃん、まだ話してなかったの?」
「だってぇ~、なんとなぁ~く機会がなくて~」
妙に尻込みをするレナリンスに呆れてレナリアスは話を進める。ついでに学園の道具科を首席で卒業したことなど等を話していった。その後、復帰したレナリリスがクヨウとレナリンスを散々からかいたおしていた。
2人が帰った後には、力尽きたクヨウと申し訳なさそうにしているレナリンスがいるのであった。
「ん~なかなかパワフルな人たちだったなぁ、正直疲れた・・・」
「あはは~、店長ごめんねぇ~」
「リンスちゃんが悪いわけでもないから気にしなくてもいいよ。そんなことよりリンスちゃんが学園の道具科の卒業者だったのは驚いたよ」
「でもぉ~、店長には及ばないですよぉ~。たま~に見せてもらう魔法具だって私が思いつかないものばっかりだしぃ~」
「ははは」
クヨウが創る魔法具の元は電化製品や漫画のネタなのはクヨウだけの秘密だったりする。しかも、能力で魔法具を創ってから術式に落とし込むやりかたなので、カンニングに近かったりする。クヨウは苦笑いしかできなかった。
「店長~、今度共同研究で魔法具創りませんかぁ~?店長とだったらぁ~楽しそうなんだけどなぁ~」
「それもいいかもねぇ、まぁ何かあればやってみようか?」
それを聞いたレナリンスは喜んでいた。それと同時に、『店長』と『師匠』、呼ぶならどっちかな~?と微妙にズレことに悩んだりしていた。
「リンスちゃんも満更でもなさそうだったわねぇ~」
「クヨウちゃんはあまりその辺のことには鋭くなさそうだったから、何かで焚き付けたりするのも面白いかもねぇ~、考えたらわくわくしてきた~!」
「リリちゃんは少し落ち着こうね、いくらリンスちゃんが満更でもなさそうとは言っても、まだその気はなさそうよ」
「まだってことはリアお姉ちゃんも有り得るとは思ってるんでしょう?ならいいじゃない」
「ふう、まったく。ほどほどにしなさいよ?」
帰る途中のレナリリスの頭の中では悪戯や危ない妄想が渦巻いていた。被害者になるであろう2人は、知る由もないことだったが、流石に悪寒を感じるのであった。
話の終わらせ方がなかなかスムーズにいかないもんです。
回想シーンが思いのほか長くなってしまいました。もうちょっと考えて作らないとなぁ~と反省中。
次で新しい従業員は終わります。では次回をお楽しみに~