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39.遠くても、近くても



 『好きだよ』


 イヤホン越しに届いた第一声は、あのとき勇気を出して贈った”想い”そのものだった。

 飛行機の轟音とともに、音は途切れた。

 けれど――私たちの想いは、途切れることなく繋がっている。

 彼がくれたピンクのマフラーが、いまも私を温め続けてくれるから。


 ――私と繭花さんは、あれからなんでも話せる仲になった。


 敦生先輩から離れろと警告されたり、イヤホンを捨てられたり、マフラーを破かれたり――たくさんのことがあったけど、それはもう過去のこと。


 お互いが、最初からちゃんと話し合えていたら。

 きっと、少し違う未来があったのかもしれない。


 彼女が”お姉さんのイヤホン”というフィルターを通してくれたとき、私は初めて、自信を持たなきゃいけないって思えた。

 繋がり合うことの大切さに、ようやく気づけたんだ。


「なんの曲、聞いてるの?」


 イヤホンを耳にしていた私に、繭花さんが尋ねる。

 私は頬を赤らめて、くすっと笑った。


「えへへ、内緒」

「えー、聞かせてよ」

「だめっ。聞いていいのは、私だけ」


 スマホに入っているのは、曲じゃなくて敦生先輩の声。


 体は遠くにいても、声はすぐそばで聞こえる。

 そんなふうに、何気ない時間を共有できるのが嬉しい。


 これからの日々は、恋を少しずつ育てていく。


 フィルター越しに届く声が、私たちの未来を優しく照らしてくれる。


 遠くても、近くても――。

 私の声はいちばん近くで伝え続ける。

 これからも、ずっと。


【完】


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