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転生したら才能があった件 ~アイクだって努力する~  作者: けん@転生したら才能があった件書籍コミック発売中


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第7話 パーティ

「迷宮試験? なんだそれは?」


 その言葉を初めて聞いたのは、朝の日課であるエーディンとの模擬戦の後だった。


「この学校に来て、なんで迷宮試験を知らないのよ。リスター国立学校の最初の試験といえばそれでしょ」


 呆れたように腰に手を当てるエーディン。

 ……いや、もしかしたら三十連敗してもまだ挑み続けていることに呆れているのかもしれない。


 ちなみにガルはとっくに諦め、今はイーストと互いに鍛錬を重ねている。


 だが、俺にも希望は見えてきた。

 束縛眼の影響が、ほんの少しずつだが薄れてきているのだ。

 もしかすると慣れというものがあるのかもしれない。


 一昨日、そのことを本人に訊いたところ、


「普通の人間なら二、三回で心が折れるから、試したことがないわ」


 と、あっけらかんと言われた。

 ……まぁ、分からなくもないけど。


「で? パーティはどうするの?」


「どうするって聞かれても、今知ったばかりだし……ちなみに、パーティってのは迷宮試験限定のものなのか? それとも今後も継続して組む感じ?」


「迷宮試験用の仮パーティよ。連携や迷宮を体験するのが目的よ」


 なるほどね。なら、そこまで深く考えなくてもよさそうだ。


「じゃあパーティを作って、誰か誘ってみることにするよ」


「え? あ、アイクって……もうメンバーのあてがあるの!?」


「うーん……前に何人かが誘ってくれたから、そいつらと組むのもありかなって」


「……そ、そう。ふーん、人気者ね」


 心なしか、エーディンが動揺しているように見えた。




 昼食の時間。食堂の三階で、ガルとイーストの二人とテーブルを囲む。


「アイクは誰と組むのじゃ!?」


「俺は、誘ってくれた人と組もうかなって。ガルは?」


「儂か? 儂はアイクと組むぞ?」


「俺と? まぁ、いいけど。ただし、リーダーは譲らないからな」


「ふん、仮のパーティじゃし、まぁよいわい」


 よし、一人確保だ。

 すると、隣でイーストがスプーンを置きながら言った。


「じゃあ、俺も混ぜくれよ」


「うん、じゃあよろしくな」


 二つ返事で了承する。


「これで三人。あと二人じゃな。最初に声をかけるのは誰じゃ?」


 と、ガル。


「Aクラスの女子が誘ってくれたんだ。その子に話してみるよ。実力もあるだろうし……って、あの子だ」


 ちょうど同じ階で昼をとっていた彼女の姿を見つけ、俺は席を立った。


「この前、パーティに誘ってくれた子だよね? パーティ作ったんだけど、一緒にどう?」


 突然声をかけられたからか、彼女は目をぱちくりさせて固まった。


「え……? 本当に私でいいの!?」


「もちろん。Aクラスなんだから、それなりに強いと思って声をかけたんだ」


「じゃあ――」


 と、返事をしかけた瞬間、なぜか彼女の動きが止まった。


「え? どうした? 気が進まないのか?」


 問いかけても反応がない。

 急に心変わりでもしたのかと思った、その時――


「どうやら、この子はアイク君と組む気がないようね」


 背後から声がした。ユーリだ。

 その後ろには、エーディンの姿もあった。


 ユーリの言葉に遅れること数秒。

 彼女ははっとしたように動き出し――


「え、あ、ありがとう。でも……今回は遠慮しておくね。誘ってくれて嬉しかった」


 そう言って逃げるように立ち去っていってしまった。


「うーん……仕方ないか。じゃあ次に声をかけてもらった子にするか」


 俺がそう言うと、ユーリの後ろにいたエーディンが前に出る。


「あ、アイク……あなた、どれだけ女の子に声を掛けられたのよ?」


「ん? 別に女子だけじゃないぞ。順番に回っているだけだ」


「そ、そう……ちなみにあと何人くらいに声を掛けられたの?」


「うーん……一年生ではあと十人くらいかな? 上級生からも何人か誘われたけど、さすがに上級生と組むのは違うだろ?」


「そ、そんなに!? 魔力が足りないじゃない……」


 最後の言葉は小声で、よく聞き取れなかった。

 うつむくエーディンの横で、ユーリがにこりと微笑む。


「ねぇ? 私も一緒にパーティ入れてもらっていい?」


「えっ!? ユーリが? でもエーディンと組むんじゃ――」


「そう。だからエーディン様も一緒に」


 エーディンも!?


「いや、遠慮しておくよ。迷宮内での判断を誰かに委ねたくはない」


 先生や上級生が一緒であれば、多少の無茶をしても安全だろう。

 けれど、最終的な決断は自分で下したい。


 もっとも、俺以上に迷宮に潜り慣れているなら話は別だ。

 マルスやクラリスのように、己の力量を把握し、自分たちの限界を正確に見極められる者が相手なら、俺は喜んでリーダーの座を譲るだろう。


 ただ、俺よりも潜り慣れている者は同学年でいるとは思えない。

 エーディンが俺より強いことは認める。

 だが、迷宮では、強さも必要だが、経験も必要なのだ。


 だからこそ、俺は首を横に振ったのだが。


「別に、アイクが判断を下してもいいわよ?」


「え?」


「私はリーダーにこだわってるわけじゃないの。ただ、迷宮に潜って最初の号令だけは、序列一位の私がすることになるから。そこだけは譲れないけど」


「俺は最終判断を下せればそれでいい。だったら構わないが、本当にいいのか? 序列一位がリーダーじゃなくても」


「変なストレスを抱えるくらいであれば、別にリーダーの座くらい譲るわよ」


 変なストレス?

 よく分からないが、エーディンとユーリが一緒であるならば、万全のパーティかもしれない。


「うむ! ではパーティ名じゃな。【ガルと愉快な仲間たち】で申請しておくわい!」


「却下だ」


「な、なぜじゃ! わかりやすくて親しみやすいではないか!」


「親しみやすいとかそういう問題じゃない。ダサいだろ」


 すかさずイーストも同意する。


「それに、愉快ってのがすでに怪しいだろ……誰が愉快なんだ?」


 さらにエーディンまでも冷笑する。


「愉快なのはあなたの頭だけで十分よ」


 俺たちだけでなく、会話を聞いていた他の者たちも吹き出す。


「き、貴様らッ――!? 言わせておけば!」


 顔を真っ赤にしたガルを無視するようにユーリが提案する。


「ねぇ? 放課後集まって決めない? せっかくSクラスで門限が遅いのだから、街でゆっくり決めよう?」


「そうだな。じゃあ、放課後、集まるか」


「おい! 貴様ら! 儂の話を聞けぇぇぇ!」


 誰もガルを気に留めず、笑いながら次の予定を話し合う。

 ――こうして俺たちは放課後、夜のリーガンへと繰り出すのだった。

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