表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/41

第四章 日映大学の映研カレー蕎麦 3



     3



〇キャスト&スタッフ

リュウセイ      室井虎丸

ハッコウ       相川あきら


コガ、バルスキー   彩翔

クールギン      千田健三

ゲルドリング     簗木共栄



音楽         トリオ・ザ・トリノ


撮影・CG作成     河都野笛

美術・衣装      高木彩花

メイク        星ヒカル

照明         岸間サキ


素材提供       NHK


製作         ナノメリア

協力         日映大学 映像研レコンキスタ


プロデューサー・脚本 安芽里亜

監督・編集      酉野菜乃


32分の上映が終わる。

拍手なんてなかった。

初日の一回目の上映。

80人ほどいるのはこれから本格的に忙しくなる、受験希望者の相手をすることになるので、明日日曜は朝から混むし、では初回で観ておこうと映像研とその関係者、競合するサークルの学生諸君が大半であった。

次に他の映研部員による短篇の詰め合わせ約20分が始まるが、あまりにもカラーが違うので、5分ほどの休憩を挟むことにした。

10人くらいが出てきた。

それはナノメリアの四人とイロドリ先輩とノブ先輩の計6人とあとの四人は関係者ではない人々、か。

「良い感触だよ」

彩が云い、続ける。

「判るよ。映画が終わった後に、観客の好悪が肌でボワーッて感じる。きみらも感じなかった。特に探り合いを感じた。何のかって?拍手すべきなんだろうかってさ」

「どっちでもいいですー。内輪だけじゃなくて、こんな大きな教室の、大きな画面で流しただけで、もうゴールなんだと、それだけで嬉しいんです」

これは消耗が激しい菜乃。

なんやかんやで編集をぎりぎりまでねばったのだ。

「これ、面白いよ。400円じゃあ、安いよ。いまでもこういうの本を作っておけばよかったよ」

パンフレットを読んでいる野笛。

「エッ!かなり最初期にノブにはパンフ作ろうって言ったけどな」

彩は芽里亜に印刷費半分をカンパしている、こういうミニコミ誌作りが好きなのだ。

「最初なので記念にですよ、もうこんな面倒やりません」

芽里亜がそう云っている時にあきらが来る。

「もう50部がいっぺんにはけた!」

あきらと虎丸で、受付兼パンフレット販売でパイプ椅子に座っていたのだ。

「あと10分は我がサークルの上映会残っているけど」

彩はそう云うがちょうど出入り口にいた5人の前を人々がぞろぞろと退場していく。

数名があきらに手を振ったり・スマホで撮影をしている。

「彩さん、残り20分のうちの部の作品って何?」

「岸間たちのコントと千田のスタントマン講座とあと誰かが撮ったPVみたいなヤツだ」

「それでだ。みんな『二人の失楽園』みたいなやつを期待して座っていたら、そんなの見せられて、退場したんだよ。気づいた人は帰りがけにパンフレット買ってくれてさ」

野笛が話している最中に五人は受付へと急いだ。

虎丸が一人相手をしていたので、芽里亜と菜乃が直ぐにサポートに入る。

あきらと彩と野笛が会場に入ると、座席には岸間たち部員が10名、画面には岸間がズッコケているところが大写しだ。

「つまり、『二人の失楽園』のデキが良過ぎたから、後の作品の視るに堪えなさが目立ち、みんな退席したんだ!」

「困ったなぁ、格の違いを見せつけられたってことじゃない!」

彩と野笛の会話。

午前の部・第二回めは140人収容できる教室に100人が来た。

「二人の失楽園」が終了したら、全員帰った。

三回目は140の席が埋まった。

そしてパンフレットはその三回目でソールドアウト。

それでも欲しい人は連絡先のアドレスを聴いて、同じ大学の人には第二版刷れたら、映像研レコンキスタの部室まで取りに来てもらい、部外者にはpixivの物販であるBOOTHで売り始めたら連絡する、と云っておいた。

「未だ午前中、これが三日間のイベントならば超特急オンデマンド印刷を印刷所にやってもらうんだけどなー」と菜乃がムチャを云う。

午後の部、通算四回目では立ち見ができた。

この頃にはもうあきらと虎丸は上映が終わる度に女の子たちから共に写真を撮ってくれるよう頼まれる列ができていた。

「彩くん、なんか面白いもの創る女の子二人がいる、ゲイになった実相寺昭雄みたいなシャシンと言っていたけど、川も出るしむしろ佐々木昭一郎を私は想起したよ」

イロドリ先輩に話しかけたのはテレビジョン学科の教授で、レコンキスタの顧問先生の一人、竹内先生だ。

彩が、是非観に来てください。試写観たんで折り紙つけます!と熱弁させてもらった一人だ。

この大学の教授先生たちは元、映画屋・TV屋が多く、新しい表現、野心的な作品に目が無い。

教授陣たちの間でも午後には話題になった。

そして五回目の上映会で、彩と部長の簗木(やなぎ)、野笛と岸間、という部内四強が決定した。

「これからは『二人の失楽園』」だけを流す!」

さすればあと四回流せる。

明日もこの時点で、他部員の20分は一切流さないことに決まった。

「ちょっと待って下さい!時間と予算と根性かけたから、私はこの作品に自信がある。でもこのイベントって、来年の受験生用の上映会なんでしょう?だったら、こんなことも色々やっている上映会ってことのアピールを無くすことないじゃないですか!」

芽里亜、猛烈にマジで反論。

「いや、安さん。岸間たちが言っているんだ。これ以上、差を見せつけられるのは悔しいんだとよ」

これは簗木部長。

岸間や千田は「気にしないで」とか「学祭ではいいもの創るよ」と作り笑顔。

「イロドリー!」

呼ばれた彩はダッシュで逃げる。

「綾川さん」

野笛が呼ぶ相手はアニメ研究会スクラムの会長・綾川京、身長185の巨漢、留年して23歳、理由はアニメを作っていたから。

綾川はひょいと右手を上げるだけの挨拶を目も合わせないで、野笛にした。

「きみ、きみら二人か!ナノメリア!良かったよ~!凄く良かったよ~!激しく良かったよ~!入りでおれたちの新作、女子高生格闘バトルもの『女闘美11』を入りで抜かれたよ~!悔しい~!」

「あ、さっき、芽里亜と二人で観てきましたけど、すっごい作画レベル高くて、おっどろきました!」

綾川に対してまずは菜乃。

「ああ~、えっと~、菜乃くんだっけ?そうね、作画のことを言うってことは物語、つまりホンがイマイチってことね」

「いえ、30分で限りある中に、姉の復讐と出生の秘密と人類の霊的進化というそれぞれ違うヒロインをぶち込むのはむしろ英断だって、菜乃と言っていました」

次は芽里亜の番。

「きみが脚本書いた芽里亜くんだね。そうなんだよね、アニメは声優至上主義もあってか、しゃべり過ぎるんだよね。きみの書いた脚本は台詞が最低限しかない。このアニメバカのおれが数年ぶりに実写が羨ましくなったよ!こんな若い女性に、負けた上に、同情されるなんてな!って!イロドリはどこに行った!」

―だから、彩さん、逃げたのか。強烈なひとだな。

これは虎丸の感想なんだが、同時に「おれたちには挨拶ナシかよ」とも思っていた。

そこにアニ研の部員らしい女の子たちが、OBの高名なアニメーターの人が来た、と云って、綾川を連れて去った。

「ね、アレが綾川さん、濃いでしょう。それと気づいた?」

「?」と菜乃と芽里亜。

「綾川さん、10代の女性としか話さないのよ。論敵の彩さんとかは話すけど。私、10代の頃にはすっごく綾川さん話しかけてくれて、映像の勉強になったんだけど、二十歳の誕生日を迎えた瞬間、一切話しかけてこなくなったよ」

―虎丸と又違うタイプのロリコン!?

これを思ったのは勿論、芽里亜。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ