痴愛(そんな言葉、ないんだけどね)
夜の風が永遠のように
幾つもの古墳を吹き荒ぶころ
いままで傷つけて来たからだを
ゆっくり休めて
それらが作られた時代を
問うてみるのもいいかもしれない
音もなく
声もなく
ただちいさな寝息を聴かせて
寝ている君の静けさが
昼間のけたたましい明るさを想い出すと
あいまいだけど
やっぱり心から好ましいんだ
三年も前にゆめなかでみた
淡い光があまりにも
清い純粋さを私の記憶に残っているから
その水色にすき透ったあの湖みたいな
その微笑みを忘れられない
ままなんだ悲しくはないよ
牙を剥くのは
ただ憎らしいからじゃなく
牙を剥くのは
ただ闘いたいから
三千世界に闘い挑む
紅蓮に燃える阿修羅のように
この寂しさがバレるほどなら
悪を飼っても闇に堕ちるわ
あした吹く風は
あしたの風であるように
あたしに吹く風は
あたしの風だよ
そんなわかりきったことを
忘れてしまうほどの
手も足も出ない正しさに打ちのめされたよ
そう云えば
むかし知ってた懐かしい風を想い出すと
ふと生きるためには震えているしか無いのか
って
問いたくなるんだ
ねぇ、神さま
人生って、
そんなもんなんですかねぇ
ハハ、
花は散り
花はまた散るその美より
情けなく
君だけが好き
そのゆめの
ような揺蕩うためらいと
花は散り
花はまた散りその揺れる
想いをもって痴愛と想う
あゝ、ゆめよ
このゆめなかに棲む鬼よ、
このほんとうを痴愛と断ぜよ