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start  作者: 遠藤 敦子
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4

 実家を出て駅に向かっていると、中学生時代に私をいじめていた女子とばったり遭遇した。容姿が良くて人気者だった彼女だけれど、19歳の今はプリン頭の金髪で20kgほど太っており当時の面影はまるでない。そんな彼女は高校中退して10代で妊娠出産をしたそうで、2歳くらいの子どもを連れていた。

「あれ、塩川紗英じゃない? あんた男いたの?」

 彼女は半笑いで言う。私は言い返そうとするも、当時のことがフラッシュバックしてしまい何も言えなくなった。

「彼氏さんは知らないと思うけど、この子中学でいじめられてたの」

 彼女が笑いながら言うと、伶介は口を開いた。

「だから何ですか? それが僕に何の関係があるんです? そもそもお子さんの前でするような話じゃないですし、これ以上紗英を傷つけるようなことを言うなら許しませんから」

 私の前では絶対に怒らない伶介が、彼女を相手に怒りを滲ませる。彼女は顔を怒りで赤くしてその場から立ち去った。

「紗英、行こう。こんなやつまともに相手するだけ無駄だわ」

 伶介はそう言って私の手を引く。守ってくれた。そう思うと心強かったのだ。

「引くかもしれないけど……」

 私はそう前置きした上で中学生時代にいじめられていたことやフリースクールに通っていたこと、高卒認定試験を経て大学進学したことなどを伶介に話す。それでも伶介は

「そんなことで引くなんて絶対にあり得ない。どんな過去があっても紗英は紗英だから」

 と言ってくれた。私はずっと伶介と一緒にいたいという気持ちが強くなる。



 伶介とは大学4年間ずっと一緒にいて、お互い社会人になってからも交際を続けていた。社会人2年目になった頃、「塩川紗英様」と書かれた手紙が郵便受けに入っているのを見つける。フリースクールに行っていた頃にお世話になった、高尾先生から結婚式の招待状が届いていたのだ。高尾先生は結婚して諏訪(すわ)茉子という名前になったという。私は出席の方に丸をし、返信用封筒に入れてポストに投函した。

 結婚式当日、私は水色の振袖にアイボリー色の帯を合わせて出席する。なぜドレスではなく振袖にしたかと言うと、フリースクールに通っていた頃からよくしてくださった先生の結婚を盛大にお祝いしたかったからだ。諏訪先生は純白のウェディングドレス姿で高砂にいた。34歳とは思えないほど若々しく、知り合ったばかりの26歳だった頃のままに見える。私の振袖姿を見て諏訪先生本人はもちろん、お母様も旦那様も喜んでくれた。諏訪先生の結婚式に感化されたのもあるけれど、私も伶介との将来について思い描くようになる。

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