表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
start  作者: 遠藤 敦子
2/5

2

 それからというもの、他の授業でも林くんの隣になることが多かった。厳しくない男性の先生の授業の際、

「塩川さんって下の名前なんていうの?」

 と林くんが話を振ってくる。

「紗英だよ。林くんは?」

 私が返すと、林くんは

「俺は伶介。人べんに命令の令、介護の介って書いてりょうすけなんだ」

 とルーズリーフの端に書きながら漢字も説明してくれた。以前教科書に「林伶介」と書かれていたのが見えたので名前自体は知っていたけれど、「りょうすけ」なのか「れいすけ」なのか知りたくなったことがある。

「さえってどう書くの?」

 林くんが質問し、私もルーズリーフの端に書きながら漢字を教える。

「糸へんに少、英語の英。これで紗英だよ」

 私が説明すると、林くんは興味深そうに話を聞いてくれた。それ以外には地元の話や趣味の話もする。私が好きな漫画を林くんも好きなことがわかり、漫画の話で意気投合した。その流れで私と林くんはLINEを交換し、ほぼ毎日やりとりするようになる。



 テスト期間が終わり、夏休みに入る。その頃に林くんから、私たちが好きな漫画が映画化されるとのことで観に行かないかとLINEで誘われた。私は男性と2人で出かけたことなどなかったので緊張していたけれど、相手が林くんなら安心できると思い承諾する。

 当日、私はいつもと違うファッションで出かけた。授業時はパーカーにジーンズといったラフなファッションをしていたけれど、今日はオレンジのノースリーブニットに白いフレアスカートを選ぶ。スニーカーにリュックの組み合わせで通学していたけれど、3cmヒールのパンプスに小さめのハンドバッグを合わせた。林くんはどんな反応するのだろうかと楽しみだ。

「あ、塩川さん! こっちこっち!」

 林くんが声をかけてくれ、私は彼の元に向かった。林くんも授業の時はカジュアルなファッションが多かったけれど、今日はシンプルな白いTシャツに黒いスキニーという出立ちだ。私はそんな林くんのギャップに惹かれつつあった。

「今日の服可愛いじゃん」

 林くんにそう言ってもらえるなんて思っていなかったので、私は単純に嬉しかったのだ。いつもの塩川さんとは違うじゃん、と思ってほしかった気持ちがあるから。そんなこんなで私たちは映画館に向かう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ