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クローゼットに閉じ込められたら異世界に転移してました  作者: まはろ
【第一章】クライヴとの出会い
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これからのこと

「あたたかいお茶でも飲むか?これからについて話す必要もあるだろう」


クライヴが用意してくれたお茶は、不思議なハーブの香りがした。


「庭で作ったハーブですか?」

「あぁ。このハーブは香りが独特で、虫除けにもなるんだ」


お茶を飲みながら、そういえば彼氏にお茶を入れてもらったことはないな、などと考える。

愛されていなかった。

薄々気づいていたが、結婚に焦り過ぎて、見て見ぬふりをしていたのだ。


「温かい……。美味しいです」

「それはよかった」


沈黙が流れる。

明日からについて、話さなければならないのはわかっているが、怖くて口に出せなかった。


「大丈夫か?」

「……正直に言うと、怖いです。これから、この見知らぬ世界で生きていかなければならないんですから。私は、この世界の常識も、何も知らない」


クライヴは、少し考えるような仕草をしたあと、紙とペンを持ってきた。


「思考がまとまらない時は、書き出しして整理すると、案外答えがみつかったりするものだ。まず、これからどうしたいか言ってみろ」


考えながら、ゆっくりと、どうしたいか伝えていく。

できれば、しばらくここに泊めてほしいこと。

いずれはこの世界で1人で自立して生活する必要があると思っていること。

そのためには仕事につかなければならないこと。

しかし、この世界で役立つスキルがあるのかどうかもわならないこと等、一度話し始めたら、どんどん言葉が口をついて出た。


考えていることを話し終えると、クライヴは悩みを書き出した紙を見ながら口を開いた。


「まずはこの世界の常識を知るべきだな。人々の生活、価値観、文字などを少しずつ教えよう。仕事についてはその後考えればいいだろう」

「迷惑をかけてばかりで、申し訳ないです……」

「見放して、この辺りで野垂れ死にされたら、その方が困るからな」

「ありがとうございます。自立したら、必ずこのご恩はお返しします」

「そうしてくれ」


クライヴは紙とペンをしまうと、食器を片付け始める。

私も手伝いながら、家事の分担について提案してみることにした。


「家事は一通りできます。野菜の世話も、教えてもらえれば出来ると思います」

「そうだな……」


クライヴはしばらく考えを巡らせていたが、ゆっくりと口を開いた


「夕飯……」

「え?」

「夕飯は美味しかった」


遠慮がちに言う姿を見て、思わず笑ってしまった。


「では、食事は私担当にしましょう。後はクライヴがやっている姿を見ながら、できそうなことを探していきます」

「そうしてもらえると助かる」


気持ちは分かる。

私も元の世界で、自分の作ったご飯を毎日食べていたが、飽きるのだ。

素人が作るご飯なんて、レパートリーも限られるし、味付けも似たようなものになってしまう。

たまには他人が作ったご飯が食べたい、と外食しても、何かが満たされなかったりする。

誰かが自分のことを思って作ってくれるご飯からしか得られない幸福があるのだ。


「外食とかはしないんですか?」

「ここに住んでからは一度もしたことがない」

「ここにはどれくらい住んでいるんですか?」

「……7年になるな」


7年間、一度も外食せず、毎食自分が作ったご飯だけを食べてきたのか。

そういえば、一服盛られたことがある、と言っていたが、何があったのだろうか。


「あの。私が作ったご飯を食べて、嫌なことを思い出したりはしませんか?」

「思い出したとしても、お前には関係ないことだ。気にする事はない」


これで話は終わり、とでもいうようにキッチンを後にする。

これ以上聞かれたく無いのだろう。


正直に言うと、めちゃくちゃ気になる。

普通に生活をしていたら、一服盛られることなんてないはずだ。

初めてここに来た時「間者か」と言っていたのも気になる。

いつか話してくれたりしないかな、なんて思いながら、私もキッチンを後にした。

読んでくださりありがとうございます。

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