末期
「ダメだ!!!止まれ!!!!」
クライヴが叫んでいるのが聞こえる。
アラステア皇太子がブレンに手を伸ばそうとしているのが見えた。
すんでのところで、アラステア皇太子に飛びつき、阻止する。
「離せ!離してくれ!!」
「ダメです!落ち着いてください!!」
「兄様!兄様!!!!」
一刻も早くここから離れなければならないのに、暴れるアラステア皇太子を押さえつけるのに精一杯で、身動きが取れない。
ボロボロになりながらも、クライヴが駆け付けてくれた。
一緒にアラステア皇太子を押さえ込み、引きずりながらブレンから離れようとした時だった。
「あぁああぁああぁあぁあぁああぁぁああぁあぁあ!!!!!」
突然、ブレンが叫び始める。
耳をつんざくような音に、思わず手で耳を塞いだ。
2度目の衝撃波が襲ってきた。
足を踏ん張り、飛ばされないようにする。
飛ばされずに済み、ほっとしたのも束の間、先程の衝撃波とは段違いの威力の衝撃波が襲ってきた。
身体が熱くなり、全身が針で刺されるような痛みを感じる。
ーーー熱い!!!
思わず両腕で顔を覆う。
視界の端で、アラステア皇太子とクライヴが吹っ飛んだのが見えた。
後方でドンッという音がする。
二人とも、壁に打ち付けられて気絶してしまったようだ。
おそらく、ブレンは暴走の末期症状に入ったのだ。
こうなると、死ぬまで魔力を体外に放出し続ける。
戦争時、暴走した魔法使い達は、末期症状に入る前に全員殺された。
いや、殺さなければならなくなった。
それほど、ヤバいのだ。
しかも、ブレンは魔力値が80もある。
エドガーさんの言う通り、この研究所なんて簡単に潰れるだろう。
身体の中で熱い風が吹き荒れているような、不思議な感覚がする。
熱い!!痛い!!!!
それでも何故か、前に進まなければならないと思った。
考えるよりも先に、体が動く。
1歩、足が前に出るーー頭のてっぺんから足の先まで電撃が走るような痛みに襲われる
2歩、足が前に出るーー全身の毛穴が開き、汗がふきでる感じがした
3歩、足が前に出るーーふいに体が軽くなり、痛みから解放された
気がつくと私はブレンを抱きしめていた。
キリがいいので少し短めです。




