破壊
部屋にはガラスのようなものが飛び散っている。
球体の部屋が壊れたせいだ。
割れた破片が飛び散り、洋服を切り裂いている。
手足のところどころから出血しているようだ。
エドガーさんをみると、顔に大きな切り傷が出来ていた。
もしかしたら、私の顔も傷ついているのかもしれない。
そんなことよりも、ブレンとアンジュだ。
どうなっているんだ?
「あぁああああぁぁああ!!!」
咆哮が鳴り響く。
ブレンの声だ。
おそらく暴走している。
「マナ!どうしたんだ!」
「何が起きている!?兄様!?」
「クライヴ、アラステア皇太子、どうしてここに?」
突然現れた2人に動揺する。
どうやら私達を尾行していたらしい。
「来ていたのなら、もっと早く入ってきてくださいよ!遅い!!」
「何か異変があってからにしようと思って......」
「この部屋は防音なので、異変に気がつけなかったのでしょう。そんなことより、このままだと、マズイです。暴走時の被害と魔力値の大きさは比例します。会長の魔力値は80なので、このままだと研究所が吹っ飛びます!」
「研究所が吹っ飛ぶ!?どうにかならないの!?」
「会長に薬を投与出来れば、とりあえず眠らせることができますが、この竜巻の中で会長に近づくことができるかどうか......」
見ると、ブレンを中心に大きな竜巻ができている。
アンジュもその中にいるのだろう。
そうこうしている間に、どんどん竜巻の威力が増している。
我々も身動きが取れなくなってきた。
「モイラ!アンジュを連れて出て!」
「無理です!風が強すぎて中に入れません!」
姿を隠している場合では無いと判断したのか、モイラが姿を現した。
クライヴとアラステア皇太子は突然現れた妖精に驚いて後ずさり、説明を求めるような目で私を見ている。
「説明は後です!それより、ブレンをなんとかしないと!」
「風を弱めることはできないか?少しでも弱まれば、俺なら近づけるかもしれない」
クライヴの言葉に、モイラは少し考える素振りを見せた後、両手を竜巻の方に向けた。
なんとなく、風が弱まった気がする。
「逆向きの竜巻を発生させてみました。威力が相殺されて弱くなっているはずです。この感じだと、全力を出せば半分くらいの威力にはできますが、どうでしょうか?」
「半分ならいける。何分持ちそうだ?」
「そうですね......1分です。この部屋は私達が魔法を使うには条件が悪過ぎます。......ドアと窓を開けてみてもらえますか?」
モイラの質問に、エドガーさんが慌てて窓を開けに行く。
1番ドアの近くにいたアラステア皇太子も、急いでドアを全開にした。
「......これなら5分、維持できます」
モイラの言葉に、クライヴは笑顔で返答する。
「上出来だ。薬の投与なんて難しいことはできない。気絶させるがいいな?」
「はい。気絶すれば、その後、投与はいくらでもできます」
エドガーさんはそう言うと、薬の準備をし始めた。
クライヴは準備運動なのか、屈伸をしている。
「よし。行こう」
クライヴの言葉に合わせて、モイラが手に力をこめた。




