秘密
妖精の魔法を知っていた理由を教えてくれるというブレンの話に乗ることにした私は、深夜の魔法研究所の中を歩いていた。
ブレンと2人で歩く夜の研究所は、昼間とは違って不気味に感じる。
「この部屋だよ」
ブレンに促されて入った部屋は、最新の設備が整っているような場所だった。
部屋の中に、さらに透明な球状の部屋が設置してある。
かなり不思議な構造の部屋だ。
よく見ると、球状の部屋の中央に太い円柱が設置してあり、その円柱には布が被せてある。
球状の部屋を観察するように、外周に椅子がいくつか置いてあり、そこにはエドガーさんが座っていた。
エドガーさんの手には、魔力検査をした時に使用したものと似たような水晶がある。
「会長、早かったですね!マナさん、お待ちしておりました」
「こんばんは。不思議な部屋ですね」
「研究所の最新設備なんです。あぁ、クライヴさんにも見せたかったなぁ!!」
エドガーさんは興奮しながら水晶に手をかざして何か動かしたりしている。
私たちの世界のパソコンのような感じなのかもしれない。
「さぁ、お姉さん。中に入ってよ!大丈夫。入ってもお姉さんが怪我をするようなことはないから」
ブレンが笑顔で部屋の中に入っていく。
入っていいか、かなり迷う。
私は入っても大丈夫だろうが、妖精さん達は入らない方がいい気がした。
聞こえるかどうか分からないが、かなり小声でモイラに話しかけてみる。
「モイラ、聞こえる?」
「聞こえています。そのまま話し続けてください」
「万が一のために、モイラとアンジュは中に入らないで」
「承知しました」
これで大丈夫だろう。
ブレンに続いて私も部屋に入ってみる。
中は少し寒かったが、それ以外はなんの変哲もない場所だった。
真ん中にある円柱が気になる。
これが、妖精の魔法と関係あるのだろうか?
「会長!凄いです!!マナさん、魔力値ゼロですよ!?」
「へぇ!そんな事ありえるんだ!これは是非、研究に協力してもらいたいね!うわぁ、楽しいことばっかりじゃないか!お姉さん、僕、こんなに興奮しているのは、城から逃亡した時以来だよ?」
二人のやり取りに驚愕する。
エドガーさんを見ると、水晶にピンク色の光が2つと、それぞれに80、0という数値が表示されている。
この部屋全体が魔力検査の道具になっているのか!
念の為、モイラに入らないよう伝えておいてよかった。
「さて、これが僕達の秘密だよ!」
ブレンがそう言いながら中央の円柱に手をかけ、カバーを外す。
中は円柱状の水槽のようになっていて、水で満たされている。
よく見ると、中に妖精が浮いていた。




