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協力

翌日、朝食の後に国王と謁見し、その後城内を案内してもらうことになった。

昼食後は魔法研究所を見学する。

そこでブレンに会って、話をする時間が欲しいと伝える予定だ。


国王との謁見は一瞬で終わった。

まぁ、形式的なものだし、特に話したいことがあるわけでもないので、直ぐに終わって有難い。


昼食まで少し時間ができたので、クライヴとアラステア皇太子には事情を話すことにした。


「......で、話しというのは兄上のことか?」

「ブレンのこともそうですが、まずは妖精について、お二人にはちゃんと話しておいた方がいいのかなと思いまして」


私の言葉にクライヴもアラステア皇太子も頷いた。


「話してもらえるとありがたい。無論、他言はしないから安心しろ」

「その通りだ。クライヴと俺で、転移のことは誰にも言わない方がいいだろうと以前から話していたんだ。だから、これまで誰にも話していないし、これからも誰にも話さない」


二人の言葉を聞いて安心した。

ブレンとだけ話し、二人には何も言わないという選択肢もある。

だが、私ひとりで何とかしようと思っても、おそらく失敗するだろう。

最悪、また利用される可能性もある。

二人には事情を話し、協力してもらった方がいいと判断した。


私はミラベルや昨日の場所の事だけ伏せ、それ以外の事は全て話した。


「ブレンには妖精について調べるのを諦めてもらわないといけません。とりあえず、今お二人にした話と同じ事をブレンにも伝えようと思うのですが、どうでしょう?」


二人とも、難しい顔をしている。

その顔が、そんな簡単な話ではないということを物語っているようだった。


「うーん。やっぱり難しいですかね?」

「あぁ。諦めろと言われても、ブレンダン元皇太子は納得しないのではないだろうか」


クライヴの言葉に、アラステア皇太子も頷く。


「兄上の昨日の様子だと、魔法についてかなり自信がありそうだったからな。自分ならなんとかできると考えるだろう」

「はい。俺もそう思います。自分で研究しないと諦めないでしょう」


事前に二人に相談しておいてよかった、と心から思った。

二人に相談しなかったら、何の策も無く、ブレンと話すところだった。


「そもそも、人間が生命エネルギーを消費せずに魔法を使うことは、本当に不可能なのだろうか?」

「うーん。どうでしょう。妖精さんはそう言っていましたが、実際にどうなのかはわかりません。でも、これは個人的な意見ですが、魔法が際限なく使えるようになったとして、いいことなんてありませんよね?」


アラステア皇太子の質問に対し、持論を述べる。

私の考えでは、人間が魔法を使える必要はないのだ。

私達の世界では、魔法がないのが普通だし、それで困ることもない。


もしも、妖精さんのことを研究して、魔法が使えるようになったとしても、戦争時の被害が増すだけだ。

エリノア王国が復讐してきたら打つ手もなくなる。


そもそも、妖精さんを研究対象にしようという考えがよくない。

何かを犠牲にして得られる知識なんて必要ない。

妖精さんが「研究するな」というならそれに従う以外ないのだ。


「ーーという話しをして、倫理観に訴えてもダメですかね?」

「うーん。兄上は昔から何かにハマると周りが見えなくなるタイプだったからなぁ......」

「俺が言うのもなんですが、ちょっとサイコパスですよね」

「クライヴ......。兄上の悪口は流石に看過できないぞ?」

「す、すいません!ただ、昨日の感じはやっぱり怖いというか、異常だったと言いますか...」


確かに昨日のブレンは怖かった。

アラステア皇太子も同じように感じたのか、険しい顔をしている。


「兄上の寿命は、かなり縮んでいるのだろうか......?」


そう。恐らく、ブレンには時間が無いのだ。

その焦りもあるだろうし、もしかしたら暴走の前段階として、自分の思考や感情が制御できなくなり始めているのかもしれない。


良い案が出ないまま、時は無情にも過ぎていくのであったーー

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