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幻想

ーークローゼットから出るとそこは、一面が虹色の靄で覆われた幻想的な場所だった


「誰だ!」

「人間だ!」

「どうやってきた!」

「何しに来た!」


外に出た瞬間、複数の妖精達に囲まれる。

一緒に謝ると言ったが、そもそもこんな場所に来てよかったのだろうか?

身の危険を感じながら、妖精さんの方を見る。


「待ってなの。大丈夫なの。マナは悪い人じゃないの」

「アンジュ、何が大丈夫、なの?」


女性の声が辺りに響き渡った。

妖精達は子供のような少し高めの声だが、今の声は大人びた優しい声だ。


優しい声なのに、怒っているのがわかるのが恐ろしい。

アンジュを見ると、見るからに怯えていた。


「アンジュ。どういうことか説明しなさい」

「あの。あの、なの。......マナ、説明してなの〜」


どうやら、私がいつも話していた妖精さんはアンジュという名前らしい。

アンジュは私の後ろに隠れてしまった。

確かに一緒に謝る、とは言ったが、まさかこのタイミングで全ての説明を任せられるとは思わなかった。


そっと、女性の方を見る。

この人が神様なのだろうか?

女性は諦めたようにため息をついて、私の方を向いた。


「マナさん、かしら?」

「あの、あなたが神様、なんですか?」

「神様、ねぇ。妖精達は私をそう呼ぶけど、そんな大した者ではないのよ。まぁ、私のことは気楽にミラベルと呼んでちょうだい。悪いけど、何があったか説明してくれる?」


アンジュを見ると、お願い、というようなポーズをして私を見ていた。

仕方ないので、説明をする。


異世界から転移してきたこと。

その後、何度かアンジュに命を救われたこと。

初めてアンジュと話した時のこと。

アンジュにお願いし、クライヴとブレンを救う手助けを依頼したこと。

結局失敗し、ブレンに利用されたこと。

そのブレンに再開し、妖精の魔法の話をされたことーー


「ちょ、ちょっと待って!今、妖精の魔法、と言ったかしら?」

「はい。ブレンはそう言ってました」

「なるほど......。色々言いたいことはあるけれど、まずは、アンジュ!」


突然名前を呼ばれて、アンジュが飛び跳ねた。

目に涙をためて、上目遣いでミラベルのことを見ている。


「アンジュ、どうしてすぐに相談しなかったの?」

「それは......なの......」

「アンジュは、私を異世界に返せばバレないと思ったって言っていました」

「マナ〜!なんで言うの、なの〜」


ちょっとした仕返しだ。

べっと舌を出して、アンジュのことを見る。

アンジュは小さい手を振り回して、ポコポコと私の腕を叩いているが、全く痛くない。


「アンジュ!いつも、報・連・相が大切って言っているでしょう!?だいたい、マナは異世界に返せば良いとして、転移している所を何度も見ているクライヴとアラステアという人間のことはどうするつもりだったの」

「それは......その〜......うわぁぁぁん、なの〜」


アンジュは地面に突っ伏して泣き始めてしまった。

なんとも頼りない。

あまりにも可哀想なので、一応フォローをしてあげることにした。


「クライヴもアラステア皇太子も、信用できる人です。言えば、秘密は墓場まで持って言ってくれます。それに、アンジュに言われて妖精や転移の条件については一切話していません。二人は勝手に妖精のイタズラと思っているようですが、異世界から来た私の力だと思っている部分もあると思います。それよりも、問題はブレンです」


私の説明に、アンジュがうんうんと頷く。

調子のいいやつだ。


「そうねぇ。まぁ、昔は人間とよく交流していて、これくらいの事を知っている人はよく居たのよ。だから、バレたらお終いってわけではないし、二人のことはもういいわ。問題はブレンダンって人の方よ」

「ブレンには転移の条件を伝えていません。クライヴの部屋へ転移する時に手伝ってもらったので、その時の行動で気がついた可能性はありますが......そんな曖昧な感じではありませんでした」

「困ったわねぇ。きっとまた、勘違いしているんだわ」


ミラベルによると、昔は人と妖精は共存していたらしい。

困っている人がいれば、妖精が魔法で助けてあげることもあった。

そのお礼に、妖精は人から食物などを分けてもらったりしていたらしい。


しばらくして、人は妖精が使っている魔法を自分も使えたら便利だと思うようになった。

試行錯誤し、一部の才能のある人々が魔法の使用に成功するも、生命エネルギーを消費するという新たな問題が発生する。

魔法は人が使うようにはできていなかったのだ。


魔法をいくら使っても死ぬ事がない妖精を見て、煎じて飲めば解決すると考える人や、捕まえて解剖する人も現れた。

そうして、妖精は人々の前から姿を消したのだ。


「悲しいですね」

「そうね。そもそも、私達と人間では造りが違うのよ。どんなに頑張っても、人間が私達のように自由に魔法を使えるようにはならないわ」

「ブレンは、妖精の力を使えば、人間も魔法を自由に使えるようになると思っているのでしょうか?」

「わからない。でも、話を聞く限り、その可能性が高いわね。問題は、どうして妖精が魔法を自由に使えることを知ったか、よ」


話によると、転移は魔法とは違うらしい。

ブレンの前では転移しかしていないので、私の行動から魔法について知ったとは考えにくい。


「どうするか、考える必要があるわねーー」


ミラベルは右手をこめかみにあて、何かを考えるように目をつぶった

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