回顧
今日から三章です。
クローゼットの扉を開けるとそこにはーーー
予想通り、赤い髪の青年がいた。
◆◆第三章◆◆
予想外のことが1つあった。
赤い髪の青年の前に、深い青色の髪の青年が座っている。
「クライヴ!!!!」
そう、アラステア皇太子の前に、クライヴが座っていたのだ。
「お前は……またクローゼットか!」
アラステア皇太子は頭を抱えて唸っている。
よく見ると、ソファのサイドテーブルには破れた制服と便箋の切れ端が置いてあった。
「私のこと、思い出しましたか?」
「思い出しましたか?じゃないだろう!何故、尋問の時に言わなかった!?」
「その時にはまだ、知らなかったので」
訳が分からない、という顔をしている。
それはそうだろう。
私にとっても時系列がバラバラで、少し混乱しかけている。
座れ、と手で指示されたので、それに従う。
クライヴの横に座り、アラステア皇太子の目を見た。
あの子がこんなに大きくなるのか、となんだか感慨深かった。
「私が見てきたことを話します。アラステア皇太子の記憶も、教えて貰えますか?」
「もちろんだ」
3人でテーブルを囲い、それぞれ経験したことを語り始めた。
ーーーー
話した結果、私が騎士団員として紛れ込んでいたのは今から1年前のことだということがわかった。
今はクライヴの家が奇襲にあった次の日らしい。
あの後、クライヴは城に連行され、一晩ゆっくりと休んだ後にアラステア皇太子と話すことになったそうだ。
「クライヴがここにいることは、信頼できる側近複数名しか知らない。周りにバレると問答無用で処刑だからな」
「処刑されると思ったら、裏口から入城させられて、一晩休めと言われたから、何事かと思いました」
1年前、アラステア皇太子は私のことを全く覚えていなかったらしい。
しかし、私がクローゼットから消えたあと、同じように昔クローゼットから消えた人がいたことを思い出し、そこから徐々に記憶がよみがえってきたとの事だった。
ブレンの死後、アラステア皇太子は兄は生きている、としきりに言っていたらしい。
「兄は生きているから探して欲しい」と懇願する幼いアラステア皇太子の姿を見て、周りの人達は、兄を失った悲しさからおかしくなってしまったのだ、と考えた。
周りから何度も兄は死んだと諭されるうちに、あの日の出来事は、悲しさ故に作り出した妄想だと思うようになったそうだ。
しかし、手元にはあの時の制服と便箋の切れ端がある。
訳が分からないまま、兄の死に関係があるものとして、大切に保管していたらしい。
「お前、市場で俺に会ったことがあるって言ったよな?記憶にないなと思っていたら、視察で行った辺境の地でお前を見かけてな。そんなハズがないと思いながら近くの森を探索したら、本当にクライヴの家があったから、ちょっと怖かったぞ」
苦々しい顔をしながらアラステア皇太子が言う。
クライヴは少し笑いながら、相槌を売っている。
「俺が初めて会った時なんか、突然現れて、浮気した彼氏に閉じ込められた!ですよ。怖いどころじゃありません」
「一番怖い思いをしているのは私なんですけど……」
少し緊張がほぐれてきた所で、そろそろ本題に入らねばならないだろう。
「さて、どうやってブレンを探しましょう?」
三人寄れば文殊の知恵。
何かいい案が出ることを期待しながら、話し合いを続けたーー




