真実
ーー私の目の前には、死んだはずのブレンが立っている
「あ〜、こうなるのか〜。なるほどなるほど」
「ブ、ブレン?」
「転移の条件、ちゃんと聞いておけばよかったかなぁ〜。どうやってここに来たの?」
見た事のない表情でこちらを見るブレンに寒気がした。
ーー怖い
心からそう思った。
ニヤリと笑い、顔を少し傾けながら、ブレンは話し続ける。
「まぁ、これも確定事項ってことか。イレイン!」
イレインと呼ばれた女性が窓際からやってくる。
ブレン同様にフード付きのローブを着ており、細身だが鍛えられた肉体の持ち主だということが、その出で立ちからわかる。
「そこの袋を彼に渡して、窓から逃がしてあげて。丸腰だと厳しいだろうから、剣もあげて。彼には少なくとも7年は生き延びてもらわないといけないからね」
イレインは指示に従い、クライヴに何か袋を渡した。
その後、自分の腰に着いていた剣をベルトごと外し、クライヴに持たせる。
「あぁ、ついでにこれもあげよう。外すのを忘れていたから丁度いい。売ればいい金になるよ」
そう言うと、ブレンはローブの下に着けていたブローチを外し、クライヴの制服のポケットへ入れた。
私のポケットにあるものと同じ、緑色の宝石があしらわれたブローチだ。
睡眠薬の影響か、まだ混乱しているクライヴの腕を取り、イレインは窓際へと引っ張っていく。
嫌な予感がして、クライブの腕を必死で掴む。
しかし、私の力では全く適わなかった。
イレインは私ごとクライヴを窓際まで引きずっていくと、クライヴを窓から外へと放り投げた。
クライヴが落ちないように必死に掴むが、私の力ではどうにもできない。
掴んだ部分の制服が破れ、私の手の中に残った。
「クライヴ!!!」
「2階だから、彼の実力なら死なないよ。それに、クライヴがちゃんと逃げられることは、お姉さんが一番知っているでしょ?7年後に会ってるんだから」
そう言いながら、ブレンとイレインも窓から外へと出ようとしている。
追いかけたいが、私の運動神経では、2階から落ちれば骨折だ。
ガチャリ
突然、部屋の中に音が鳴り響く
「兄様?」
振り返ると、そこには赤い髪の少年が立っていた。
眠いのか、しきりに目を擦っている。
「おっと、これはさすがにマズイかな。イレイン、早く」
イレインはブレンを小脇に抱えると、そのまま窓から飛び降りた。




