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実行

「お手紙とマフィン、渡してきたよ」


ブレンが帰ってきた。

次は私の番だ。

約2時間後、私は半分になった便箋を持ってクローゼットに入る。


「妖精さん、お願い」

「はいなの〜」


ほんの少し浮遊感があった。

おそらく、転移し終わったのだろう。


物音を立てないように慎重に動く。

これでクライヴが寝ていなかったり、音を立てて起こしてしまったら一巻の終わりだ。

耳を澄ましていると、微かに寝息が聞こえる気がした。


そぉーっと扉を開き、隙間から中を伺う。

ぐっすりと眠るクライヴの横顔が見えた。


上手くいったのだろう。

いつものクライヴなら気配で起きそうなものだが、起きる様子は全くない。


壁に立て掛けてある剣を手にし、急いでクローゼットへと戻る。

また浮遊感があり、もとの部屋に戻った感覚があったので外に出る。

待機していたブレンに剣を渡し、私の役目は終了した。


「じゃぁ、剣を捨ててくるね。お姉さん、ありがとう」


そう言うと、ブレンは部屋から出て行った。

静かな部屋で、ブレンの帰りを待つ。

緊張感からか、まだ心臓がバクバクといっていた。


ーーーー


遅い。

1時間は経っただろう。

しかし、ブレンは帰ってこなかった。


池は結構遠いところにあるのだろうか?

それとも、何か問題が発生したのだろうか?

不安になり、部屋の中をぐるぐると歩き回った。


おかしい。

いつも、この時間は城の中全体が静かで、物音一つしないのだが、先程から外が慌ただしい。

使用人達が走り回っている音が聞こえる。

扉に近づき、外の声を聞いてみることにした。


「騎士団長を拘束しろ!ブレンダン皇太子が殺害された!犯人は騎士団長だ!!」


心臓が止まったかと思った。

冷や汗が止まらない。


何故。

何故、ブレンが死んだことになっている?

何故、クライヴが犯人になっている?


過去は変えられなかったのか?

むしろ、私のせいでブレンが死んだのか?


咄嗟に私は部屋から出ていた。

私は騎士団員の制服を着ている。

この慌ただしさと夜の暗さなら、見知らぬ顔が混じっていても、誰も気が付かないだろう。


私は走ってクライヴの部屋へと向かっていった。


ーーーー


クライヴの部屋の前には剣を抜いた警備隊が沢山いた。

扉は開いていて、眠そうに頭を抱えたクライヴが狼狽えているのが見えた。


今、私がここに居てもクライヴを助けることはできない。

私は走って、近くにある更衣室へと向かった。

私が初めて王城へ転移した時の更衣室だ。


部屋に入り、クローゼットに飛び込む。

便箋はポケットの中だ。

クライヴの部屋へ行く条件は整っている。


「クライヴの部屋へ!緊急事態なの!お願い!」


浮遊感があり、転移したのが分かったので、急いで外に出る。


「誰だ!」

「いつからそこに居た!!」


周りが驚愕し、注意が逸れた瞬間に、クライヴの腕を取りクローゼットへと引き込む。


「妖精さん!どこか!どこでもいいから、どこか違う所へ!!」


また浮遊感があり、転移したのがわかった。

睡眠薬の影響か、クライヴは朦朧としている。

腕を引っ張り、一緒に外へ出る。


クローゼットを出た先には、黒いフード付きのローブを着たブレンがいたーー

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