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クローゼットに閉じ込められたら異世界に転移してました  作者: まはろ
【第一章】クライヴとの出会い
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クローゼットの外は異世界!?

頭がクラクラするーーー


気を失っていたのだろうか。

外からは何も聞こえてこず、辺りは静寂に包まれていた。

耳を澄ませてみても、彼氏とあの女の声は聞こえてこない。


とりあえず外に出なければ。

ゆっくりと体を動かし、扉に手をかけた。


眩しいーーー

そう思った瞬間


「誰だ!!」


端正な顔つきの青年が、剣の切先を私の方へ向けながら、厳しい顔つきで立っていた。


「間者か?いつからそこにいた」

「え、え?」

「答えなければ、女だろうと、容赦せず切るぞ」


男が間合いを詰めてくる。

このままだと本当に切られるかもしれない。

何か言わなければ、と考えを巡らせるものの、この状況に思考が追いつかず、言葉が何も出てこなかった。


「誰の差し金だ。できれば女は切りたくない。正直に言え。」

「いや、あの、その……」


男の剣が私に届くほどの距離まで近づいてきた。

男が剣を振りかぶる。


「浮気した彼氏に閉じ込められただけなんです!!!」

「……は?」

「自宅のクローゼットに押し込まれて!気がついたらここにいただけなんです!!自分でもわけがわからなくて!」


結局、ありのままの事実を言うことしか出来なかった。

男は怪訝な顔をしながらこちらを見ている。

だが、それが事実なのだから仕方がない。


「せめて、もう少しマシな嘘をついたらどうだ?」


男が再度、剣を振りかぶろうとする。

私は慌てて両手を上げ、攻撃する意図は無いことを示した。


「本当なんです!私もちょっと混乱してて……。と、とりあえず、その剣をしまって貰えませんか?」


男は私のことを頭の先から爪先までゆっくりと観察した後に、剣をしまった。

ただし、剣の柄に手は添えたまま、いつでも攻撃できる姿勢を保っている。


「あ、あーっと。ほら、見てください!私パジャマのままじゃないですか!こんな格好で外に出る人なんていませんし!」


嘘をついても仕方がないので、今日の出来事を詳細に伝える。

同棲している彼氏とお酒を飲んでいたこと。

途中で知らない女がやってきたこと。

クローゼットに押し込まれたこと。


男は信じられない、という顔で聞いていたが、全てを話し終えた頃には殺意が消えていた。


「嘘をついているようには見えないが……にわかには信じがたいな。妖精のイタズラ……か?」

「妖精?」

「知らないのか?」


男によると、クローゼットや鏡、森の木々の間などは別の世界と繋がっていて、ふとした瞬間に吸い込まれてしまうことがあり、それを妖精のイタズラ、と呼ぶらしい。

その他にも、ティーポットの下や、山盛りのお菓子の中に妖精が隠れていて、お茶やお菓子をほんの少し拝借する、なんていう話もあるらしい。

子供の絵本なんかでよく題材になっているらしく、誰も信じてはいないが、何か不思議なことがあった時にはちょっと茶化すように「妖精のイタズラかな」と口にするのだそうだ。


「よく見るとその服……見たことがない生地とデザインだな。本当に違う世界から来たのか?」


何か違う世界から来たことを証明できるものはないか?と考える。

ふと、洋服のタグに書かれた文字を見せることを思いついた。


「これ。私の国の文字なんですけど、読めますか?」

「ふむ……見たことがない文字だな」

「これ、私が違うところから来た証拠になったりします??」


おずおずと聞いてみると、男は怪訝そうな顔をしながらも剣から手を離した。


「お前を完全に信用したわけではない。だが、殺すほどの脅威ではないと判断した。とりあえず、こっちへ来い」


そう言うと、男は扉の方へ向かって歩いていった。

よく見るとここは寝室で、扉の向こうはリビングのようだ。

何だか既視感を覚え、辺りを見回すと、キッチン、テーブル、扉などの位置が自分の家と全く同じであることに気がついた。


「同じだ……」

「同じって、何がだ?」

「間取りや家具の配置が、私の住んでいた家と全く同じなんです。」


男は何かを考えるような素振りを見せたあと、リビング中央にあるテーブルへと向かい、椅子に座った。

私にも椅子に座るように促してきたので、それに従う。


「先程、丁度このテーブルの位置を移動させたんだ。移動させた直後に寝室から音が聞こえ、向かったらお前がいた」


男はトントンと、指でテーブルを叩きながら話し続けた。


「この机を動かしたことで、家具の配置が全く同じになり、この家とお前の家が繋がった……なんてこと有り得るのか?」


最後の方はほとんど独り言のようだった。

そんな偶然あるのだろうか?

有り得ない話ではあるが、私がこの家に転移してしまったことは事実なのだ。

今はこの男の言葉通りに考えるのが妥当だろう。


「今日はもう遅い。とりあえず泊まっていけ。詳しいことはまた明日話そう」


そう言うと男は寝室へと消えていった。

これからどうなってしまうのか……今は考えても仕方がない。


読んでくださりありがとうございます。

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