1 女神との邂逅
光が収まると同時に視界が鮮明になってきた。
扉の向こう、そこには先ほどとはうって変わり白い空間が広がり五つの玉座が並んでいた。
【ようこそいらっしゃいました。】
どこからか声が聞こえた。聞こえたというよりは頭に直接語り掛けられているような不思議な感覚だ。
(なんなんだこれは。近くには誰もいないのに)
【わたしたちはあなたの目の前にいますよ。今のあなたには見えないと思いますが、あなたならばいずれ私たちを見ることができるはずですよ。】
(なんだ、なんで言葉が出ないはずなのに答えてくるんだ。それに見えないのにいずれ見えるとか。それに俺は死んだはずじゃ。)
頭がどうにかなりそうだ。
【混乱するのも仕方ないでしょう。順を追って説明していきます。まずあなたは生前、下劣な男により殺害されてしまいました。そしてあなたの体はあちらの世界に置かれたまま魂だけこちらの世界に引っ張られてしまいました。本来あなたの魂はそちらの世界で浄化作業が行われた後、輪廻に組み込まれ時が来ればまた新しい器に入り新しい生を授けられるはずでした。ですが、あなたは不幸な人生を嘆きながら生への期待を失い死んでしまいました。それにより魂の浄化すら行われずただ彷徨い巡りにめぐってこちらの世界との境界線にたどり着いてしまいました。境界線というのは先ほどあなたがいた暗い場所です。資格のないものはあなたが開いた扉を開けず長い時間をかけて自然浄化されまた元の世界の輪廻に吸い寄せられたでしょう。ここでいう資格とは、神格のことです。あなたは神ではありませんが神に認められし行為、生前人助けなどお詣りなどを行い元の世界の神々に認められつつありました。ですので、あの扉を開くことができたのでしょう。】
(つまり俺が行ってきた行為は無駄ではなかったということなのか…)
【そういうことです。】
(じゃあ俺はこれからどうすればいいんだ)
【あなたは私たち五神が見守っている世界に行っていただきます。行ってこうしてほしいなどはございません。私たちはただあなたに世界の広さ、あなたが元居た世界の一部、あのわずかな空間がすべてではないと知ってほしいのです。】
(俺は…大切な人が欲しい…大切な友人が欲しい…)
【それはあなたの行い次第です。素敵な人生を送れますように祈っております。その願いをかなえるためにわたくしたちから僅かながらではありますが、恩恵をお渡しいたします。】
(恩恵?その世界では神たちの存在が認められているのか?)
【はい。私たちはよく天啓などで人々にお告げを行います。またこの世界では魔法と呼ばれる超常現象が使用され優れているものは安泰の道を歩むことができます。】
(あまりファンタジー系は知らないんだががんばってみるか)
【そういって頂き喜ばしいです。では魔法に関する恩恵、そのほかにもいくつか恩恵を授けます】
(それは助かるな。ありがたい。前世でもできなかったこともあるしいろんなことに挑戦しよう)
【はい。では恩恵を授けます。後ほど確認してくださいね。挨拶が遅れましたが私はエルワール五神 一神 クレノア。地の神と申します。】
(クレノアか。五神ということは他にも四人もいるのか。)
【その通りです。紹介したいのですが、時間もないので省略したいと思います。ですが、あなたならばいずれ出会うこともあるでしょう。では、そろそろしばしのおわかれですね。】
そう言い終わると俺の体が淡く光りだした。
なるほど、移動するのか。前世でできなかったことをたくさんやるぞ
【では、またお会いいたしましょう。】
(あぁ、また会おう)
そこで俺の視界は白い光によって包まれた。