唯一知ってる星座
「ね?」
「なに?」
僕の言葉に彼女が答えた。
「あのさ・・・夜空見たらさ・・・星あるじゃん?」
「うん、あるね」
「それをさ、線で結んで星座ってできるじゃん?」
「うん、そうだね」
彼女はたんたんと答える。
「それでさ、こんなに星がたくさんあってその分星座あるじゃん?」
「あるね」
「けどさ、僕さ・・・あまりわからないんだよね」
「・・・なにが?」
「星座」
そう答えると彼女は僕の方をみて
「そうなの?」
真剣に聞いてくる。
「うん、たぶん一番有名な星座」
そう答えると
「・・・オリオン座?」
「うん」
彼女の答えに頷く
そして
「どうしてわかったの?」
今度は僕の方から彼女に問いかけた。
「私も知らないから・・・オリオン座しか・・・」
「そうか・・・でもどうしてオリオン座?」
「うーん・・・きっと歌とかさ、あと形。わかりやすいでしょ?」
彼女が首をかしげて聞いてきた。
「たしかに・・・わかりやすい形だよね・・・僕もそうだから・・・」
「うん・・・・そうだね」
彼女が答えたことに
「そうだね?」
彼女に言葉に疑問を感じて聞き返した。
「うん、オリオン座もそうだけど君もだよね?わかりやすい」
そういうと僕の顔を見つめて微笑んだ。
僕は
「・・・・うん・・・・」
そう返事をすることしかできなかった。
恥ずかしい?
それともうれしい?
なんとも言えない気持ちを抱えて空を見上げた。
そしてその様子をみて
「でもオリオン座なくなるんだって・・・さみしいね?」
その言葉になんの意味があるのか・・・
僕は勘ぐることしかできない。
けど
「そうだね・・・さみしいね」
相槌をうちながら彼女を見た。
彼女も空をみていた。
お互いに見上げた空。
そこにはオリオン座が光る。
夜空にオリオン座・・・・
見ているものは同じだろうけど
きっと違う。
唯一知っているものさえも僕ら二人
別人だから・・・
違うんだと思う。
それでも居たいと思うから
隣にずっといたいと思うから
人は寄り添うのだろう・・・
「寒いね」
「うん」
彼女の言葉に返事を返して
肩を抱きよせた。
すこしでも同じであるようにと。