表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達  作者: 音喜多子平
堕ちた魔法拳闘士
97/163

4-6 キャラ設定のおまけ付き

「さてと無駄話もこのくらいでいいか」

「僕を殺すつもりですか?」

「流石に命までは取らないよ…我慢できたらな。スコアには早いとこあーししかいないって事をわからせてやらないと。それにお前も強いんだろ? ドロマーに会った上で無事に過ごしてるんだからよ」


 言うが早いか、次の瞬間にミリーは恐るべき速さを見せてメロディアとの距離を詰めた。そして魔王から与えられた魔力を惜しみ無く乗せた正拳突きを打ち込む。それはお手本のようにメロディアの鳩尾に決まった。


 殺す気はないとミリーは言っていたが、いざ拳を握ってしまったら制御はできなかった。


 メロディアの大方の予想通り、もはや別の人格になっていると言って差し支えないほどに彼女は残虐性と他者を蹂躙する優越感とを植え付けられていた。


 …。


 だからこそミリーはその全力の一撃を急所に食らっても尚、涼しい顔をして立っているメロディアが信じられなかった。


「え?」

「うん。やっぱりすごい威力ですね。僕以外に本気で当てちゃダメですよ」


 そしてメロディアは今の一瞬でミリーの正拳突きの動きを盗み取り、まるで再現VTRのように攻撃を仕返した。


 だがそこは歴戦の魔闘士の面目を保った。咄嗟に魔力を腹に込めると同時に後方へと飛び退いて可能な限りダメージを軽減した。それには流石のメロディアも驚きを隠せなかった。


 もっとも驚きの度合いで言えばミリーの方が遥かに大きかったのだが。


「あ、あーしの全力だぞ? 何をしやがった」

「何もしていないです。ただ我慢してるだけですよ、ちょっと痛かったですけど」

「が、我慢!?」

「そのぐらい強いんですよ、自分で言うのもアレですけど。ちなみにネタばらししますと、僕は勇者スコアの子供であると同時にあなたを堕とした魔王ソルディダの子供でもあります」

「はあ!!??」


 そんな大声を出した後、わなわなと震え出した。そして徐々に顔が俯いていき押し黙ってしまう。


「まあ、ショックでしょうね。ドロマーさんも同じような反応でしたし」


 メロディアはミリーの心情を推し量ってそんな言葉をかけた。しかし返ってきたのは恍惚と狂喜を笑顔で塗りつぶしたような表情と不気味な笑い声だった。一瞬、本気で狂ってしまったのではないかと思うほどだ。


「スーと魔王様の子供か…それは予想外だよ。けど、そう考えりゃそれだけ強いのも納得だ」


 そういうと徐々にミリーの魔力や闘気が高まっていくのを感じた。さっきのがマックスではなかったのか?


「弱い奴を蹂躙するのも楽しいけどな、同時に強い奴と闘うのも大好きだ。二人の息子ってんなら相手に取って不足はねえ」

「いや、僕は闘う気は、」

「うるせえ! ここまで盛り上げておいて収まりがつくかぁ!!」


 そう言ってミリーは再び攻撃を繰り出して来た。何とかいなしながら、メロディアは呟く。


「スピードも威力も上がってる…?」

「あははははっ!!」


 感情の昂りを力に変換している。メロディアはそんな予想を立てた。まだどうにかなるレベルではあるが青天井式に力が上がっていくとなると手がつけられなくなる。


 こうなった以上、物理的にダメージを与えて強制的に制止させるしかない。そう思ってメロディアは攻撃を与えた。それはミリーの体に難なく当たったが、怯む様子はなかった。実際には痛みがあるはずなのに、気持ちが高ぶり、アドレナリンが大量に抽出されてリミッターが外れている。


 この手の輩を止めるには、もう殺す以外の道はない。だがメロディアは天地がひっくり返ってもその方法は選べない。


 それはミリーも感づいたようだった。


「無駄だ! 殺さねえ限り、あーしは止まんねぇぞ!?」

「くっ」


 メロディアはダメ元でもう一撃を食らわせた。すると倒壊した家の瓦礫にミリーの体が吹っ飛んでしまった。見た目には相当なダメージが入ったはず、けど彼女はすぐに起き上がって立ち向かってくるだろう。


 …。


 けれどもメロディアの読みは外れた。


 待てど暮らせどミリーが向かってくることはない。


 まさか当たり所が悪かった? それとも今までのは演技で逃亡でも謀ったのか?


 様々な考えを頭に過らせてミリーが吹っ飛んだ辺りを探し始める。勢いよく飛んでいった先は普段、洗濯場として使っていた部屋だ。二日前にドロマーが訪れてから手付かずになっているので、洗っていない洗濯物も多い。瓦礫を片付ければまだ着れるものも多いだろう。


そして今となっては見るも無惨なその洗濯場でミリーは横たわっていた。


 しかも、何故だか酔っぱらって。


「はれ? にゃんで? しからが、はいりゃにゃい…」


 呂律も回っていない口でそう言うと、あの【覚醒】での変身が段々と解かれ元のミリーの姿に戻っていく。そしてとうとう酔いつぶれたように動かなくなってしまった。だらしなく弛んだ口元からは一筋の涎が垂れている。


「…どう、なってんだ?」


 メロディアはミリーの緩急激しすぎる変化とこの状況とにあれこれと考えを巡らせたが、結局答えはでなかった。ここで思案するよりも、自宅兼食堂にいるかつての仲間に聞いた方が確実だろう。


 ミリーをお姫様だっこで抱えたメロディアは瓦礫を避けながら外に出る。するとそのタイミングで声をかけられた。


「メロディア君、無事ですか?」

「え?」


 声のした方を見ると三人分の人影があった。


 ドロマー、レイディアント、そして…誰?


 二人に挟まれて、というか二人に隠れるようにして女の子が一人立っていた。蜜柑色の頭巾に顔の半分は覆っているかのような大きな丸眼鏡。二人と見比べると大分幼い印象を受けるが、メロディアよりかは若干年上だろう。


 などと見知らぬ少女の特徴を挙げればキリがない。


 その中で一際異彩を放つ特徴がある。


 頭巾の少女の下半身は「尾花蛇」という魔界に生息する蛇のソレだったのだ。


【音無しのミリー】


身 長:175cm

体 重:61kg

眼の色:エメラルド → 覚醒時には紫色になる

髪 型:茶トラ猫のような狐色に薄い縞模様 → 覚醒時には黒く染まる。

    いずれも外はねで肩にかからない長さ。

服 装:タンクトップに拳法着、下はズボンに冒険者用のブーツを愛用

    → 覚醒すると真っ黒のチャイナドレス姿

武 器:素手

特 技:パーティで一番、逆立ちが上手い

趣 味:料理、決して人には見せられないポエムを書くこと

役 割:中衛職、及び食事係

異 称:音無しのミリー(クワイエット・ミリー)

出 身:クラッシコ王国


【元】猫の特徴を持つ獣人の戦士で武闘家。勇者スコアとは幼馴染。猫のような軽やかな身のこなしと柔軟さを掛け合わせたような独特の拳法を、さらに魔法で補強しながら扱う。スコアとは同じ冒険者協会の会員だった。スコアが国王軍へ入隊後、精霊の加護を受け魔王討伐の任についた事で彼自信が同行を願い出た。野性的な勘による野外戦や、強靭な体力に料理の腕前、そして何より竹を割ったような明るい性格にてパーティの精神的支えとなり貢献してきた。


【堕】スコアと魔界ではぐれた後、単独で魔王の居城を攻略し続けた。魔王の幹部の一人を討伐する際、その幹部の命乞いをする様を見て自分の中の邪悪な感情を自覚する。それはつまり圧倒的強者として弱者を蹂躙するというのは喜びであり、力こそが人間界でも魔界でも通用する存在意義の真理だという結論を導き出す。その際に自分の激情を具現化して身体と服装を無意識的に変化させる術を身に付けた。覚醒のきっかけを与えてくれた魔王を心酔するようになると、自らが辿り着いた真理に気が付いてほしいと他のメンバーと共にスコアに魔王軍に下るように説得を試みた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ