3-21
そうして迎えたローナ家現当主、シャニスの誕生会当日。
厨房にはレイディアントは元よりドロマーの姿もあった。しかもどこから手に入れたのかこの屋敷のメイドの格好までしている。何でもヒカサイマを適当に言いくるめて厨房に入る許可を貰ったらしい。ただ外で待たれるよりは給仕など頼めることも増えるのでメロディアに取っても良い機転だった。
「ところでメロディア君。私、一つ見落としていた事に気が付いたんですけど」
「何ですか?」
「ヤタムさんとシャニス様を含めたこの家の確執は夢で調べられましたけど、もう一人の執事の方の事をすっかり忘れていませんか?」
「クナツシさんの事ですか?」
「…そう言えば、あちらの御仁の事をすっかり忘れていたな」
「ええ。今日の会食をしっちゃかめっちゃかにするつもりですけど、あの人を放っておいて支障があるのではないですか?」
「忘れてたわけじゃないですよ。どの道、クナツシさんの夢には入れなかった」
「なぜ、夢に入れないんだ?」
その質問に対してメロディアはキョトンとしながら返事をした。
「あれ? 気が付いてませんでした? あの方はジュエリー・サーヴァントですよ」
「「ジュエリー・サーヴァント?」」
耳慣れない言葉に二人の疑問の声が重なった。
「はい。ヤタムさんが指輪をはめていたでしょう? あの指輪の精霊です。先祖代々の装飾品とかを持っている貴族や王族なんかの家にはたまにいますね。多分、シャニス様が罪滅ぼしか何かを思ってヤタムさん達に色々と援助をしていたんじゃないでしょうか? 高級な装飾品なんかを娘に送ったとしても不思議はありませんし」
そう言ったタイミングで壁掛け時計がなった。
まもなく本邸から子供たちがここに訪れる頃合いだ。
「それじゃあ、そろそろ仕上げに入りますか」
メロディアはそう言って包丁を持つ。するとドロマーとレイディアントが目を見張るほどの素早さと手際の良さで料理をし始めたのだった。
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