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竜騎士・ドロマー。
西の小国、ムジカリリカ出身の竜騎士。小国ながら歴史は古く、ムジカ大陸で最初に建国された国とも言われている。人口も国の面積に見合ったように少ないが、ムジカリリカ人を侮る者はこの大陸には存在しない。
ムジカリリカ人は龍族の末裔だ。
人の姿とドラゴンの姿の両方を取ることができる。しかもお国柄と言うべきか、はたまた龍の血のせいとも言うべきか、非常に義に厚く公明正大な者が多い。龍の戦闘力と義の心を兼ね揃え、有する深い歴史と相まって輩出した英雄の数を数えていては日が暮れてしまう。
ドロマーはそのムジカリリカの中で女だてらに歴代以上の名声を得た人物として語られている。単純な戦闘力では神の加護を賜った勇者スコアを以てしても互角かそれを凌ぐという者もあるくらいだ。
伝説級の【八英女】の中で最も憧憬を持たれる存在かも知れない。かくいうメロディアも【八英女】の内、一番誰に憧れているかと問われれば散々に悩んだ挙句、ドロマーに票を投じるくらいに彼女の英雄譚に聞き惚れていたのだ。
そんな御伽噺の中でしか語られない英雄本人が目の前にいるという事実を容易に受け入れることはできない。
しかも、話を鵜呑みにできないのは別の理由もあるのだから。
メロディアは必死に感情の高ぶりを抑えて、どうにかこうにか「けれど」と前置きの言葉を出して話を続けた。
「けれど待ってください。竜騎士ドロマーは…いえ、ドロマーだけでなく【八英女】は全員戦死しているはずです。魔王との戦いの中で」
「なるほど。道々に色々と風聞は聞き集めましたが、やはりそう語り伝えられているのですね…」
ドロマーは大きく息を吸い込んだ。そしてため息を一つ吐くと例の紅い眼でメロディアの事を見据えた。
「本当の事をお話します。聞いてくれますか?」
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