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その言葉はメロディアの胃の腑にストンと入ってきた。確かにメロディア自身も未だにもやの晴れぬ箇所だとは思っていたからだ。レイディアントの言う通り別の目的があると考えるのは大分筋が通っているし、実際まだ裏はありそうだ。
「そこまで見られれば良かったんですけどね」
「他には何か見つけられなかったんですか?」
「ああ…そう言えば」
メロディアはヤタムから掠め取った記憶の中で、やけに頭に残っているものを思い出した。時間がなかったのでうっすらとしか掴むことはできなかったが、そこにはヤタムとシャニス…そして彼女の母親であろう人の姿がある。そしてもう一つ。その団欒で楽し気な記憶にくっ付いて離れないとある料理と味の記憶…。
わずかにしか得られなかった夢の内容に意識を集中させて輪郭をはっきりとさせていく。
…。
「…焼きうどん」
「はい?」
「ヤタムさんが大事にしている記憶の中に焼きうどんがでてきました」
「ヤキウドンとは一体何だ?」
初めて聞いた言葉なのかレイディアントは怪訝そうな表情を浮かべる。とは言え彼女が知らなくても無理はない。それこそエンカ皇国の庶民が食べる料理なのだから。
「エンカ皇国の家庭料理だったはずです。しかもかなり庶民的な」
誕生会でもエンカ料理を所望したわけだから、何かエンカ皇国とつながりがある人なのかもしれない。しかしこの記憶の妙な温かさは一体何だろうか。
その時、メロディアの中にもう一つの仮説と作戦が生まれた。裏は取れていないし、作戦と呼ぶには穴だらけだが彼の父親譲りのお節介がどんどんとアクセルと踏み込んでしまう。
「ドロマーさん。一つお願いがあります」
「え? 何でしょうか?」
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