3-18
「まず大前提としてメイドのヤタムさんは当主であるシャニス様の不倫相手の子供です」
「あら」
「…不倫、だと?」
公明正大を地で良くレイディアントは不逞な単語を出しただけで眉を吊り上げた。しかしメロディアは構わず続ける。
「ええ。お相手の女性はどうやら庶民で公にはできない立場だったようですね。中々に窮屈な暮らしをされていたみたいです」
「恨みを募らせるには十分な理由だな」
「記憶を見るに最初は糾弾するつもりで家に訪れたようです。しかしいざやって来てみるとシャニス様がボケ始めている事に気が付いたので、それを利用しようと考えた。言葉巧みにシャニス様を操って散財させたり、それを子供たちに気が付かれないように離れから遠ざけたりと色々やっていたという具合でしょうか」
「…しかし如何せん復讐としては回りくどいのではないか? あそこまで親衛を任せられるのであれば寝首を掻く機会など何度でもあっただろう」
「どうも命が目的ではないようです。狙っているのは飽くまでもローナ家の没落…実際、二階の調度品の数々を見るにかなりの額を使いこんでいますね」
「けどそう考えると確かに辻褄が合いますね。昼間にお子達が駆け付けたのも、その散財っぷりがバレて真意を確かめたかったからではないですか?」
「案外そうかもしれません」
するとメロディアはレイディアントが一層険しい顔になって、何かを考えている事に気が付いた。
「何か気になりますか? とは言ってもここまでの話は僕の憶測でしかありませんが」
「いや…我はやはり復讐するつもりのない彼女の動機が分からぬのが気持ち悪い。一時の間だけ恨むのは簡単だが恨み続けるには相当な覚悟と労力がいる。ここまで執着しているのに命を奪うつもりがないという事は、ここの主に死んでもらっては困る別の事情でもあるのではないか?」
「…ふむ」
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