3-15
「本邸の方はこうじゃないんですか?」
「ええ。質素倹約を絵に描いたような内装でした。聞けばシャニス様はお若い時分より大層な倹約家だったそうで」
「…」
ここでもやはりチグハグだ。この二階の様子を見るにむしろかなりの散財家としか思えない。やはり色々と調べておきたいと考えたのは間違ってはいなさそうだとメロディアは確信した。
やがて二人はメイドのヤタムが控えている部屋の前にまで辿り着く。ここからはいよいよ別行動だ。
「ではドロマーさん。シャニスさんの方はお願いします」
「任せてください。誕生日に相応しいくらいの素敵で淫らな夢にしてみせます」
「少しは弁えろ」
「メロディア君も出しちゃダメですよ?」
「出すわけないだろ」
「おんや~? 私は手を出しちゃダメって言ったつもりですけど、何を出すつもりだったんですか~?」
「それだと何を出したところで同じ意味になるじゃねえか」
ツッコミがヒートアップして万が一にも目を覚まされるような事があってはならないと、メロディアは無視を決め込んだ。そうっと部屋のドアを開けて中に入ると、すうすうという寝息が聞こえてきたのでひとまずは安心だった。
足音を殺したまま、ベットに寝ているヤタムに近づく。
何でもできる有能そうな見た目に反して寝相はあまり良い方ではなかった。数度、寝返りを打った形跡があり、ブランケットがめくれて白いベビードールが月明りを反射して銀色に輝いて見えた。
メロディアは風邪をひかないようにとブランケットを掛け直してやり、彼女の額に指を置く。その途端にメロディアの身体は霧のようにかすかなモノになり、やがて吸い込まれるようにヤタムの中に消えていってしまった。
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