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そうして五人の子供たちが本館に戻ると、ひと悶着に終止符が打たれた。ヤタムは厨房までメロディアを見送ると新ためて礼の言葉を述べた。
「ありがとうございます。咄嗟の機転には脱帽いたしました」
「いえ。イライラしながらご飯を食べてもおいしくありませんからね。これも明日の誕生会の下拵えの一環ですよ」
「恐れ入ります」
するとようやくメロディアは一息つくことが許された。そして余っていたシャーベットをレイディアントと二人で訳ながら、今後の事について話を始める。
「予想はしていたが一筋縄ではいかぬようだな」
「ですね」
「これからはどうするつもりだ?」
「とりあえずこのきな臭さは早々に解消しておきたいですが…明るいうちには動きづらいですね。それにきっと夜になればドロマーさんが向こうの様子を伝えに来てくれると思いますし」
「なら夜まで暇を持て余してしまうな」
とレイディアントは緊張を解き、身体を伸ばして凝りをほぐし始めた。それを見たメロディアはキョトンとしながら言う。
「何言ってるんですか」
「え?」
「夜に料理の時間が作れないから、今から買い物と明日の為の仕込みを終わらせるんです。予算はたっぷりと頂けたので腕が鳴りますよ、これは」
貴族の料理を多額の予算で任せてもらえる機会などそうそうある事ではない。目まぐるしく溢れてくる献立のアイデアを思うとメロディアは高鳴る胸と興奮を抑えられなくなり、武者震いと頼もしい笑顔を見せた。
しかしそれとは裏腹にレイディアントは妙な悲鳴を上げてうずくまってしまった。
「うぐっ!」
「え? どうしたんですか?」
「頼りがいがあってカッコいい顔をあまりこちらに見せるな。甘えそうになるだろ!」
「あっはい」
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