1‐7
「父は魔王討伐の為に結成したパーティ以外では共に旅をしていないはずです。失礼ですが何か勘違いをされていませんか?」
「いえ。本当に一緒に旅をしていましたよ。スコアとの冒険の日々は今でも忘れられません」
「…あ。ひょっとして魔界から帰還した後のお話ですか?」
もしそうだとすれば納得だ。メロディアが御伽噺で聞かされていたのはあくまでも魔王と戦う前までの冒険譚。それが終わってから今日までにおよそ二十年の月日が流れているし、メロディアが生まれてからの歳月を差し引いても、与り知らぬ六年の歳月もあった。その間に共に旅をした者がいたとしても不思議はないとメロディアは思った。しかし、それはいとも容易く否定されてしまう。
「それも違います。私は魔王様を倒すべく、勇者スコアと旅をしていました」
「で、ですから。それはあり得ませんよ。父…勇者スコアと旅をしたのは伝説の【八英女】だけ。それ以外にはいないはずです。僕は父からそう聞かされていますし、歴史本にもそう記されています」
少々ムキになってメロディアが言うと旅人はくすりと上品に笑った。
「その通りです。ですから私がその【八英女】の一人なのですよ」
「な……!」
メロディアは今度こそ言葉を失った。
そして旅人は驚きのあまり立ち上がってしまったメロディアにもう一度座るように言った。
「お座りくださいませ。キチンとお話いたします」
「本当に、【八英女】なんですか?」
「はい。申し遅れました、私はドロマーと申します」
「!」
その名を聞いた時、驚いたのか興奮したのかメロディアには分からなかった。少なくとも心臓がはねて早く脈打ったことだけが事実だ。
彼女が今、口にしたドロマーという名は確かに父と共に魔王と戦った【八英女】のうちの一人だ。
読んで頂きありがとうございます。
感想、レビュー、評価、ブックマークなどしてもらえると嬉しいです!




