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促されるままに座った子供たちはメロディアに言われるがままにシャーベットを口にした。すると、その途端に不満や憤りに曇っていた顔が晴れ晴れとしたものになっていく。
「う、旨い」
「ええ。本当にいいお味のシャーベット」
「果物の甘酸っぱさがそのまま活かされていて、それがシャーベットの冷たさと相まって実に爽やかな味わいですな」
「かなりの仕事のできる料理人ですよ、これを作ったのは」
「ありがとうございます」
先ほどの激高ぶりが嘘のように五人の子供たちは落ち着きを取り戻した。その様子にヤタムは驚きを隠せない様子だ。
こうして落ち着きを取り戻した彼らを見ると、子供たちはなるほど貴族の名に相応しい品格があるように思える。しかし並んだからこそヒカサイマの若さがやけに際立っている。彼を除いた息子らは子供と言っても三、四十代の風格だ。当主のシャニスが70歳であることを考えれば彼らの年齢はむしろ常識的な範疇だ。やはりヒカサイマだけが兄弟姉妹の中で極端に若い。
(まあ、考察は後でいいか。まずはこの場を収めてしまわないと…)
そしてメロディアは乞うように言った。
「実は明日の料理の感動を味わって頂きたくシャニス様にお子様方を離れにお通しになりませぬようお願いいたしました。食に通じているローナ家の皆さまは例え料理を見ずとも食材や香りでどんなものが出てくるのか簡単にお分かりになるでしょう?」
「ま、まあ。ローナ家の名に恥じぬくらいのものは一通りな」
などと全員が目線を逸らしながらも見栄を張るように言う。メロディアはほくそ笑みそうなのを堪えて言葉を続ける。
「ですので食通の皆様には、なるだけどんな料理を出すかを悟られたくないのです。一介の料理人風情の我がままですが、どうかお許しください」
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