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「メロディア、これからどうする?」
「そうですね。まずは食材の確認と献立ですかね。エンカ料理は下ごしらえが肝心なので出来ることなら今日中に色々と決めておきたいところですが…」
などと言って冷蔵庫の中身を確認しているとガヤガヤと外が騒がしくなっていることに二人は気が付いた。そうっと窓から様子を伺ってみると身なりが整っており、如何にも貴族の生まれと言わんばかりの五人の男女が声を荒げており、メイドのヤタムがそれを必死に宥めている様が垣間見えた。
「…あれは」
その五人の中にはヒカサイマの姿があった。という事はあの五人がシャニスの子供たちだろう。つまりは明日に料理を振る舞うことになる来賓だ。その少し後ろにはドロマーの姿も見える。ヒカサイマのお気に入りか何かになって転がり込んだのだろう。彼女だけは目敏くメロディア達に気が付き、一瞬だけアイコンタクトと手の合図を送ってきた。
どうやらヤタムは子供たちを離れに入れぬように指示を受けているようなのだが、五人がそれを頑として受け入れずシャニスに合わせるようにと揉めているらしかった。
「親子仲が良くないのでしょうか?」
「いや。それならば誕生会などわざわざ開催しないだろう」
「確かにそうですね…」
やっぱり何だがチグハグだ。薄い布を掛けられていて中身が見えそうで見えないもどかしさの中にいる。
しかし、今はそれよりも玄関の騒ぎをどうにかする方が先決だ。この家の事情は分からないが、何かが起こって料理の件がなくなり報酬が出ないとなると面倒が増える。聞き耳を立てて話を聞くに、子供たちは「何故、父親と会う事ができないのか」という点で言い争っているらしい。
ヤタムがどんな指示を受けているのかは知らないが、会いたくないとシャニスが言っているならばこの場は引き下がってもらうしかない。メロディアは咄嗟の思い付きだが素早く実行することにした。
「レイディアントさん。急いで作りたいものがあるので、ちょっと手伝ってください」
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