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二人は急いで依頼書の内容を確認し始めた。依頼を受けることはほとんど確定事項だが肝心なのはその報酬だ。部屋の弁償代を賄えるくらいの額があれば手放しで飛びつけるのだが…。
ところが、そのような心配をよそにメロディアは小さくガッツポーズをした。自分の見積もった費用とトントンくらいの報酬が得られそうだと分かったからだ。しかし同時に気になる文面も見つけた。
「合計で6人分の料理の報酬としては破格であるな。我の破損した部屋の弁償代としても事足りるだろう」
「ええ。けど屋敷内で見聞した一切の事を口外することを禁ずるという文章が穏やかじゃないですね。護衛や金庫番ならいざ知らず、料理人程度に」
「家柄を考慮すればこれが案外普通なのではないだろうか? ローナ家はここ数十年で成り上がったような輩とは訳が違う」
「…うーむ。とりあえずはそう考えておきますか」
話を結ぶとメロディアは廊下で待機しているクナツシの元に向かい、依頼を承諾する旨を伝えた。
◆
それからは正しく電光石火の速さで事が進んだ。契約書のサインも早々に二人は車に乗せられて、あれよあれよという間にローナ家の屋敷に連れていかれた。
妙だったのは三階建ての巨大な本邸の屋敷ではなく、庭園を越し奥まった別邸へ通された事だろうか。とは言え、客として招待された訳ではないので別段問題ではない。それに離れと言えどもローナ家の名に恥じない荘厳な造りの屋敷だったので尚更だ。
到着したのもそこそこに二人は部屋や厨房に通される前に離れの小さな庭へと通される。
庭師の管理が行き届いた閑静な庭には東屋があり、そこで老齢の男性が一人のメイドを従えて紅茶を飲んでいた。
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