3-2
それから時間は翌日へと飛ぶ。
日の出と共に起き出したメロディアとレイディアントはそわそわと落ち着かない様子で午前を過ごしていた。
計画が上手くいのか。時間が経てば経つほど、考えれば考えるほど穴だらけで楽観的な予想の上に成り立っている作戦に思えてならない。しかしその心配は終わりを迎える。二人は自分たちの部屋に向かってくる、ドロマーとは違う気配に気が付いたからだ。
コンコンッと部屋の中にノックの音が響いた。どことなく叩き方が上品な気がした。
メロディアはレイディアントにアイコンタクトを送った。事前の打ち合わせで二人は師弟関係になる事は決まっている。それを再度確認してからメロディアはドアを開けた。
「どちら様ですか?」
部屋の外にはとても気品のある一人の老紳士が立っていた。挨拶などしなくても二人にはローナ家から使わされてきた使用人であることはすぐに分かった。
老紳士は見た目に違わぬ礼儀正しさで一礼すると、素性を明かした。
「私めはローナ家の使いでクナツシと申します。まずはお約束もなく尋ねました事をご容赦ください。こちらのお部屋に大変腕の立つ女性の料理人がいると聞き及び、依頼を持って参りました次第でございます。レイディアント様はご在室でしょうか?」
「はい。先生はおります」
「ではこちらの依頼書をお読みください。私は僭越ながら部屋の前に待機しております」
「え? 中でお待ち頂いても…」
「いえ。女性のお部屋に上がる訳には参りませぬ故、廊下にてお待ちいたしております」
クナツシはそう言って丁寧に戸を閉めた。メロディアは一連の対応を見て、彼とローナ家が信頼に足る人たちだと確信した。正直ヒカサイマの一件があったので一族総出でヤバかったらどうしようかと考えていた。
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