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仕事が再開したので一日一回投稿に戻ります。引き続きお付き合いください。
レイディアントは何かを思い出したのか、どんどんと息が上がっていく。
「魔界からの脱出が叶ったとて、もはや精根尽き果てて意識などすでに無くしたままに我は翼を動かしていた。それでもやがて力を失いあの山に辿り着いた……知っているか? あの辺りは賊の隠れ家があることを」
「ええ。有名な話です」
「…ならば皆まで言わずとも分かるな。精根尽き果てて動くこともままならぬ女が賊の蔓延る山林にいたらばどうなるか」
「…」
「我は辱められた。連日連夜に渡ってな。泣こうが喚こうが媚びへつらおうが、奴らは我の体を犯すことを止めはしなかった」
メロディアは目を堅くつぶり、深い深呼吸をした。するとレイディアントは再び暗く笑った。
「フ、フフ…我はこんな人間たちのために慈悲を持ち、慈愛を信じて戦っていたのかと……それから数日たったある日に心の折れる音を聞いた。いや違うな。今にして思えばあれば産声だ。我は悟ったのだ。この世界には生かしておく必要のない命もあるのだと」
「…」
「そう気が付いた時、指一つ動かすことのできなかった体に不思議と活力が溢れたよ。意識を取り戻してみれば我は血溜まりと死体の山の上に立っていた。あの時ばかりは今までのどんな信仰よりも救われた気分になったし、実際に我は救われた」
メロディアはレイディアントの顔をまじまじと見た。そこには守護天使などという二つ名からは造像もできない程に邪悪な笑みを浮かべる女がいるばかりだ。
「なるほど、見事に『闇堕ち』していますね」
「堕ちただと!? ふざけた事を抜かすな、ガキがっ! 我は救われたのだ!」
「…それで? さっき言っていた為すべき事とは一体何ですか?」
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