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真実を告げられたレイディアントはこれ以上ないと言うほどに目を見開いた。そしてその驚愕の感情は徐々にわなわなとした怒りへと変わっていくのが分かった。
「では…やはりスコアまでもが魔に堕ちていたという事か」
「ちょっと違いますね。詳しくは知りませんが、メロディア君の話を聞く限り、どちらかと言えば魔王様がスコアに歩み寄ったような形です」
「同じこと。風の噂に聞けば魔王は見目麗しき女の魔族だろうじゃないか。情に絆され、戦うべき相手を見失い悪戯に悪を蔓延らせているだけだ! 最早スコアに義を語る資格などない。貴様ら共々我が裁きを下す」
と、レイディアントは自分が持てる最大限の殺気を放った。
流石のドロマーも形勢的にマズいと判断してメロディアに目を向けた。その時、ドロマーは何故彼が無言を貫いているのかを理解した。
メロディアもまた心のうちに怒りの炎を燃やしていたのだ。そしてその熱を必死に抑えた声でレイディアントに問うた。
「一つ聞かせてください」
「…?」
「守護天使レイディアントはその信仰心と槍の名手は元より、【八英女】随一の慈悲深さで後世まで名を残した。特にどんな罪人であろうとも殺人だけは許さなかったとも伝え聞いています。そんなあなたが何故、山中で盗賊たちを襲い、今も僕の両親を殺すなどと容易く言えるんですか?」
「…慈悲か」
レイディアントは慈悲深さという言葉をまるでゴミとしてしか見ていないかのような嘲笑で答えた。
「貴様の言う通り、かつての我はどんな罪人にも更生する資格と可能性があると信じていた。スコアに従ったのもあの人の心の内の自分と同じような正義感に惹かれていたからだ。我もスコアのようにかくあるべきだと」
「魔界でその考えを改める何かがあったとでも?」
「いや…逆だ。魔界にて孤軍奮闘していた頃は仲間たちを助けるべく、より正義感を滾らせていた。さもなければとうに魔族たちの甘言にそそのかされ、我も魔王に従っていかも知れない」
「では、一体なぜ?」
レイディアントは前髪の隙間からメロディアを睨みつけて、毒々しい怨嗟の念をねっとりと吐き出した。
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